「JR山手線の家賃相場が安い駅ランキング」(SUUMOジャーナル)によると、家賃が安い駅は北側に多く、4月から東京で一人暮らしをする新社会人や学生にとってはいいかもしれない。そして南側にある駅での狙い目は高輪ゲートウェイ駅周辺のようだ。

コロナ禍で人流が減り、鉄道はビジネスモデルの変革を迫られた。3月18日からは鉄道各社が運賃を値上げするが、山手線の原宿駅と高輪ゲートウェイ駅について鉄道ビジネス研究会がコロナ禍の現状を紹介する。

※本記事は、鉄道ビジネス研究会:著『ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

最も乗降客数が減ったのは原宿駅

ひと口に山手線の駅といっても、駅ごとに性格が大きく違ってくる。ターミナルからビジネス街の中心となる駅、住民の利用が多い駅とさまざまだ。

▲原宿駅 写真:Ryuji / PIXTA

そうしたなかで最も乗降客数を減らした駅は原宿駅だ。2018年度の1日あたりの乗降客数は15万682人。それが2020年度は8万2160人にまで減少した。減少率にして45.5%となり、おおよそ半分にまで減ったことになる。

もともと原宿駅は、首都圏内の駅ではそれほど乗降客数が多い駅ではない。山手線駅のなかでは21番目、JR東日本の駅では78番目となる。規模が小さいために、ある傾向が強まると数字に反映されやすい。若者が多く利用する駅として知られるが、彼ら若者が外出を控えたことが、まず乗降客数減の理由だろう。

当駅は2018年度において定期による乗車人員が2万3672人いた(乗降客数では2倍の4万7344人)。一方の定期外の乗車人員は5万1669人。つまりは、会社や学校に通う人ではなく、乗車券を買って通う人が2倍以上多い駅である。

ちなみに、山手線駅でもビジネス街としての性格が強い大崎駅では、定期外客が5万9062人、定期客が11万4074人いる。定期を使って大崎駅に通う人が、乗車券で通う人の約2倍に及ぶということだ。この大崎駅と原宿駅との比較で、原宿駅の特徴がおおよそわかってもらえるのではないだろうか。

原宿駅について、さらに付け加えると、2020年の定期客の乗車人員は1万7021人、定期外客は2万4058人。2018年の定期客が2万3672人、定期外客が5万1669人なので、定期外客が53.4%減り、定期客が28.1%減っている。

つまり、定期で来る人ではなく、定期外=普通乗車券で来る人が減っている。この傾向は大崎駅でも見てとれる。その構図があるため、定期外客の割合が多い駅は、結果的に減少率が高くなる傾向になる。また、それと併せて、定期客の比率が高くなる。

定期を使っている人は、その駅周辺に自分が所属する会社や学校などがある。それに比べて定期外(普通乗車券)の人は営業先の訪問だったり、遊ぶためであったりするわけだが、一般論でいえば定期外のほうが“不要不急”の度合いは高いだろう。

2018年度の山手線駅で、最も定期外比率が高い駅が原宿駅であった。じつに68.6%に及ぶ。2020年度の定期外比率は58.6%まで下がったが、それでも依然として高い。

2020年度はJR東日本の乗車人員上位100駅のなかで、定期外が50%を超える駅は8つしかなく、いかに原宿駅が定期外での利用者が多いかわかる。

山手線で定期外50%を超える駅はほかに上野駅、秋葉原駅のみ。それぞれ39.4%、38.1%と山手線全体より減少率が高くなった。

コロナ禍で伸び悩む高輪ゲートウェイ駅

2020年3月に華々しくデビューした山手線の新駅、高輪ゲートウェイ駅。山手線では1971年に開業した西日暮里駅以来となる、半世紀ぶりの新駅である。

単なるひとつの新駅ではなく、JR東日本としては重要な戦略をもたせた肝入りの新駅だ。さまざまな技術を導入しており、斬新な駅舎デザインもあって旧来の駅のイメージとは一線を画す最先端の駅である。

▲高輪ゲートウェイ駅 写真:genki / PIXTA

しかし、利用者数は伸び悩んでいる。山手線のなかでは群を抜いて利用者が少なく……というよりも、東京都内の駅のなかで見ても少なく、2021年度は越中島駅(4404人)、上中里駅(6157人)に次いで7867人で3番目の少なさだ。この乗車人員は秋田駅や前橋駅と同規模である。

余談ながら、駅名の公募に6万4000件超の応募があるほどに注目された駅としては、さみしい状況だ。

当駅周辺は開発が進められており、当駅にとっての“本番”はまだ先なのだが(実際にJR東日本も、2024年度を本開業としている)、2020年度は1日2万3000人の乗車人員を見込んでいたことを考えると、悠長には構えていられない。

その最大の理由は、いわずもがなコロナ禍なのだが、当駅は直接的に影響を受けている。本番はまだ先としながら、2020年3月に開業したのは、東京五輪開催に合わせたためだ。また駅前の広場を利用して五輪のパブリックビューイングなどを設置する会場としても予定されたが、それもとりやめとなり、存在感を示す機会を失った。

駅周辺の施設はまだ開業しておらず、今のところ品川駅と田町駅の中間あたりに会社がある人の通勤が多少便利になった……くらいしかメリットがない。

2021年にかけて乗車人員は15%ほど増えているが、それでも開業1年目に見込んだ乗車人員の3分の1ほどだ。