19年のリーグ優勝はビジターゲームで決定。その権利は……

オープン戦での中継映像撮影の様子 © Lions

球団による中継映像の制作は、テレビ局にもメリットがあります。制作費が安くなることでトータルのコストを削減できるのが、もっとも大きいものでしょう。

ひとつの試合を2局で中継する時、以前はそれぞれの局でカメラも中継車も、もちろん人も出していましたが、そうした手間も解消されます。

ニュース用映像の「流れ」が変わったことも、テレビ局にとっては恩恵があったはずです。現在ライオンズでは、実際に放送された中継映像「まるごと」だけでなく、放送されなかったけれども「使えそうな映像」を数十分にまとめたものをセットにして、購入を希望する各テレビ局に納めています。

その全部の映像の中から「1日あたり何分までなら自由に使っていいですよ」というプランで契約を結んでいるのです。

たとえば、山川穂高選手が逆転ホームランを打った日に、全局のスポーツニュースで同じ映像が流れるのは、そういうわけです。

テレビ局にとっては、制作スタッフを送り込むことなく、割安でいつでも使える映像が入手できるのですから、とても便利です。

球団にとっては新たな収入源になり、やはり露出を増やす材料になっています。

当時、いや現在でもそうかもしれませんが、パ・リーグのどのチームもビジターの動員がなければ、スタンド1周360度を埋め尽くすことはできません。対戦相手のファンにも満足してもらうのは大切なことです。

であれば、すべてのパ・リーグのファンにとって魅力あるリーグにしていかなくてはいけない。球団それぞれの競争とは別に、リーグ全体でまとまることで生まれるビジネスをやっていこう。そういう思いから、パの6球団出資によるパシフィックリーグマーケティング(PLM)という会社が誕生しました。

PLMができたことで、他球団との交流や協力関係が強くなりました。

2019年ライオンズの優勝は千葉ロッテのホームゲームで決定しました。当然、その試合の映像は千葉ロッテ球団のものなので、ライオンズとしてはそれを購入するのがスジです。

2019年、千葉ロッテの本拠地であるZOZOマリンスタジアムで優勝を決めた際の辻監督胴上げの様子 ©SEIBU Lions

でも千葉ロッテから、「その1試合はいいですよ。優勝ですから、どうぞ使ってください」と言ってもらえました。

「胴上げシーン」は重要な商品ですから、昔だったらギスギスとしたビジネスになっていたかもしれません。つながりが強くなったからこそのご厚意で、とてもありがたく思いました。

次回は、このPLMを中心とした中継映像のインターネット配信事情について、お話したいと思います。

『球団職員の世界』は次回3/20(金)更新予定です、お楽しみに。