パ・リーグ各球団の経営状況は、90年代までと比べてよくなっている。これは、観客動員数が増加していることからもおわかりだろう。しかし、収益源はそれだけではなく、「中継映像」にも秘密があるようだ。

リスクを取ってリターンを大きく――自前で映像をつくる意味

プリンスホテルからライオンズに戻った後の、2018年7月からは営業部リレーション・メディアグループに移り、現在に至っています。

仕事の内容は、まずテレビ、ラジオ、インターネット事業者に向けて試合中継の放送権を販売すること。もうひとつは、選手や球団の肖像権などの、いわゆるライツビジネスです。

このふたつがメインで、それに加えて私たちが「リレーション」と呼んでいる業務もやっています。

これは何かというと、オフのイベント出演依頼や、グッズへのサイン入れ、スポンサー各社から依頼されたサイン取得など、球団各セクションの職員から上がってくる選手へのニーズを取りまとめる業務です。

昔はそれぞれの職員が、各選手に直接お願いしていたのですが、今では人員も増えたため、「交通整理」が必要になりました。それで、リレーション・メディアグループで一括して管理しているのです。

さて、第3回ではシーズンシートの販売について、グループ会社による委託販売から、自前で法人営業を行うようになったことで、収益性が向上したことをお話しましたが、実は映像コンテンツの制作にも似たような構造の変化がありました。

↓球団職員の世界 第3回

かつては、多くの方がイメージされている通り、放送権を買ったテレビ局が中継映像を制作し、放送していました。しかし、現在のライオンズはそうではなく、球団が中継映像を制作しています。

「放送する権利だけ」ではなく、自前で制作した映像を買ってもらうようになった――これが大きな変化です。

もちろん、映像制作自体はその道のプロの方に業務委託をしているのですが、球団が主体となってお金を出して、つまりリスクを負って、それに見合う収入を得るようになったのです。

そのメリットはとても大きく、幅広いものがあります。

たとえば、ある選手が2000安打などの個人記録を達成するとしましょう。当然、球団としては初安打のシーンとか、節目となったヒット、思い出の名場面などを場内のビジョンで流したり、公式サイトに動画を掲載したりして、盛り上げたいところです。

ところが昔は、各テレビ局が映像を制作し、権利を持っていましたから、自チームの出来事であっても、球団が購入する必要がありました。

一方、自前で映像を制作し、権利を持つようになった現在では、球団はさまざまな場面で過去の映像を活用できるようになりました。どんどん映像を見てもらう形で、ファンに還元できるようになったのです。

自前で映像を作っておけば、地上波、BS、CSなど、ひとつの映像を複数社に販売することができるのも、球団にとって大きなメリットです。放送権収入を最大化できるのはもちろんのこと、それにより露出が増えて、視聴者数を増やすこともできます。そして、それが球場へ足を運ぶ「呼び水」にもなるので、いいことずくめなのです。