パ・リーグ各球団の経営状況は、90年代までと比べてよくなっている。これは、観客動員数が増加していることからもおわかりだろう。しかし、収益源はそれだけではなく、「中継映像」にも秘密があるようだ。そのあたりの状況を高木大成が語る。

着実に成長しているインターネット配信ビジネス

さて前回、パ・リーグ6球団が出資して設立したぱパシフィックリーグマーケティング(PLM)という会社のおかげで、リーグビジネスができるようになったことに少しだけ触れました。現在、事業の核となっているのがインターネット配信の分野です。

■球団職員の世界 第5回

 放送権ビジネスにおいて、インターネットは急拡大中の収入源です。インターネット用コンテンツは、現在はパ6球団それぞれが制作した映像とインターネット配信権を、いったんPLMがとりまとめています。つまり、パ6球団が主催するすべての試合について、PLMがインターネット配信権を販売する権利を持っているのです。

その結果、現在はパーソル パ・リーグTV、DAZN(ダゾーン)、RakutenTV、パ・リーグLIVE、4つのサービスがパの全試合をインターネット上で配信しています。そして、放送権の販売によって得た利益は、6球団に分配される仕組みです。

各サービスの契約者数は右肩上がりに増えていて、野球中継を見る手段としてインターネットが定着してきているのは間違いありません。

インターネット中継によって“現地”の観客も増えている

インターネット配信もファンを現地に呼び寄せるしかけといえる ©SEIBU Lions

インターネットによる情報発信は、おそらく来場者にも影響しています。「ネット」と表現したときに意味するものが、自宅で見ていたPCから、場所を選ばないスマートフォンやタブレットに変わってきたことによる変化が大きいと思うのです。

インターネットを通じたプロ野球の楽しみ方は、中継映像を見るだけではありません。電車内で「1球速報」のようなサイトをチェックしているプロ野球ファンはたくさんいます。そうした情報を見て、球場に行ってみようかな、行きたいなと思う人も一定数いると思われます。

これは実証できていない仮説でしかありませんが、チームの状態や、試合展開、出場している選手をネットで見て、「行きたい!」という感情につながることは十分考えられます。ネットが「リアルの臨場感」を求めたくなる仕掛けになっています。

また、昔からあるラジオというメディアもそれに近い存在です。

インターネットでラジオが聞ける「radiko」によって、ライオンズ戦を中継する文化放送がスマートフォンで聴けるようになっているからです。