ただ「与えよう」と考えるライフスキル

過去や未来にとらわれて暴走するよりも、今に集中しましょう。人と自分を比べるよりも、自分自身に集中しましょう。結果にとらわれるよりも、プロセスに集中しましょう。

こういう表現はとても耳触りがいいのですが、ひとつ落とし穴があります。

こうした話を認知だけで聞くと、今度は「今」や「自分」や「プロセス」にとらわれ始めるというパラドクスが起こります。

「今に集中」と言っても、過去を反省することもなく未来も見なくなっては困ります。
「自分に集中」と言っても、他者に配慮しないで自己中心的になりすぎても困ります。

もちろん、結果は大事なので、結果なんてどうでもいいわけではありません。集中するべきことにはフォーカスするけれど、それにとらわれてしまっては本末転倒です。

パフォーマンスとは「何を」「どんな心」でやるかということです。

人間は「やるべきこと」を認識するのは得意でも、それを「どんな心の状態でやるのか」を整えるのは不得意なのでライフスキル脳を磨きましょう、というお話をしてきたわけですが、脳のメインはあくまで認知脳です。

ただし、認知脳は時々暴走します。そこで、認知脳の暴走を抑えてリセットするのが、ライフスキル脳というサブの脳です。

ライフスキル脳を磨いて心の乱れを常に整えながら、認知脳でやるべき事をしてPDCAサイクルを回していく。このバイブレインが私の理想です。ですから「今に集中」というよりは「“今に生きる”と考えよう」というスタンスです。

「今に集中」だから、目の前のことに集中しなくてはいけない、ではありません。
「自分に集中」だから、自分のことだけ考えなければならない、でもありません。

もちろん、目の前のことに集中して事を進めるのは大事です。

自分のやるべきことに集中することも大切です。しかし「〇〇に」と他動詞的に考えた途端に意味付けが起こって、その対象にとらわれてしまっているかもしれません。ここをよく知っておいてほしいのです。

〇〇さん頑張れ。
〇〇がありがたい。
〇〇をリスペクトしよう。

これも悪くはありませんし、「与える」思考をルーティン化していく途中段階では対象があるほうが思考しやすいのも確かです。

▲ただ「与えよう」と考えるライフスキル イメージ:metamorworks / PIXTA

ただし、本来のライフスキル的な「与える」思考には対象がない、このことを繰り返しておきます。

ただ「与えよう」と考える。
ただ「頑張れ」と考える。
ただ「ありがたい」と考える。
ただ「今に生きよう」と考える。
ただ「一生懸命を楽しもう」と考える。

それだけで本当に気分が良くなるのです。

難しく感じるとすれば、それは今まではライフスキル脳を使う習慣がなかっただけなのです。人間に備わっている本来の機能を信頼してください。あなたの可能性を磨いて集中力を高めていきましょう。