古典モノマネのパクリ疑惑
モノマネ業界では「あの歌手のモノマネは自分が一番最初にやってたのに、あいつがパクった」という揉め事がよくおきた。
たまたま面白いと思った視点が被っただけかもしれないし、あるいは本当にパクったのかもしれない。これだけは本当に難しい問題で、正しいジャッジは誰にもできない。
「モノマネ」という時点で、そもそもオリジナルではないのだから、パクった、あるいはパクられた、という表現自体もどうかと思うのだが、当人からしたら許せない気持ちなのだろう。
ある時期、とある芸人Aが「別の芸人のネタをパクっている」と話題になった。
彼がパクった疑惑をかけらたのは「ヤッターマンのドクロベエのモノマネ」だった。ご存知のように、モノマネにおける古典というべきメジャーネタなので、それをパクりと言われるのはツラい気もする。
芸人Aも「誰もがやってるモノマネなのに、それをパクりだなんておかしい」と憤っていた。
そりゃそうだ。そのトラブルを収めようと思ったのだろう、ある先輩芸人が芸人Aに楽屋で話しかけた。
「A君のドクロベエのモノマネが、自分のネタと一字一句同じなんだって怒ってたけど、そらそうだよな。ヤッターマンは好きなの?」
それに対して、芸人Aはこう返した。
「いえ、ヤッターマンは見たことないです」
「じゃあパクりじゃねーか!」と、その場にいた全員が心の中でツッコんだのは、言うまでもない。
芸人は承認欲求のかたまりのような人間が多い。自分が認められない、あるいは理不尽な扱いをされたという恨みはずっと忘れることはない。売れてても売れてなくても、どこかで自分を認めてほしいという思いをずっと抱えている。
だから、他の芸人の面白いネタを見たときは悔しいと思うし、パクらないまでも、知らないうちに影響されてしまうのだろう。
芸人としてデビューしてから20年近くが経とうとしているが、俺のネタをパクる奴はいまだに現れない。
(構成:キンマサタカ)