モノマネ芸人が食っていける理由

一言で芸人といっても、その仕事は幅広く、さらに細かく分かれている。

たとえば、お笑い芸人、ものまね芸人、落語家、大道芸人、マジシャンなど、これらもすべて芸人と呼ぶ。

この中で特殊なのが、ものまね芸人とマジシャンだ。彼らは知名度がなくても、芸だけで食っていける。それは「営業」と言われるイベントで稼ぐことができるからだ。

マジシャンはオリジナリティがなくても、「マジック」というもの自体に引きがあるので、いろんなイベントに呼ばれるし、マジックBARなどで地道に稼げる。小さいハコでも盛り上がるので、呼ぶ側としても気軽に声をかけやすいのだろう。

モノマネ芸人は売れっ子のマネをすることが多いので、本人の知名度はたいして必要ない。地方のイベントやお祭りで西城秀樹さんのYMCAをやれば間違いなく盛り上がる。サザンやチャゲアス、松田聖子の名曲を歌えば、感動する人は多い。本人を呼ぶほどの予算はないけど、一人で何役もこなしてくれるモノマネ芸人は、地方のイベントで重宝される。

ということで、比較的若手の頃から営業の仕事が入ってくるので、本業だけで食っていける者が多い。

一方で、お笑い芸人は人気が出てテレビなどに露出しないと食っていくのは難しい。売れてない芸人の漫才やコント、ピン芸などはまともに見てもらえないし、営業に呼ばれることもほとんどない。せいぜい売れてる芸人の前説に若手がブッキングされるかどうかだ。

だから収入の多くはアルバイトに頼るしかない。それもできるだけ時間に融通がきいて、割のいいバイトを探すことになる。しかし、年齢や芸歴を積んでいけばいくほど先の見えない不安にさいなまれるし、バイトの最中に「いつまでこんなことやってるんだろう?」と考えるようにもなる。「就職するならラストチャンスの年齢かもしれない」なんて考え始めたら、もう止まらなくなる。

気がつけば、子供ができたことを理由にやめていく芸人もちらほら出てくる。売れようというエナジーの炎が消えてやめてしまう者もいた。結婚相手や相手の両親の反対でやめていく者。この世界の厳しさに直面して気持ちがふさぎこんでやめていく者もいた。