売れてない芸人の彼女は性格がいい

M-1のおかげだろうか、芸人=カッコいいなんてイメージがついて久しい。ステージ上の姿がカッコいいかどうかは別にして、芸人がモテるのは事実だ。売れてる売れてないに関わらず、だいたいかわいい彼女を連れている。彼女以外にも声をかけたら遊べる気軽な女友達をキープしているやつも多い。おそらく、芸人という仕事で身についたサービス精神や、先輩付き合いのなかで学んだ気配りができるヤツが多いからだと俺は思っている。

これまで多くの芸人の彼女を見てきた。

いわゆるミーハーな気持ちで付き合ってる(のだろうと思われる)子や、その芸人の才能に惚れて付き合ってる(っぽい)子、売れてないうちから支えてあげたいという母性本能で付き合っている子など、ひとえに彼女と言ってもいろんなタイプがいた。

だいたい、金のない芸人と付き合うくらいだから、みんな気立てが良い。

だが、売れてる先輩芸人の彼女のなかには面倒な人もいた。後輩芸人に対して、自分も上から目線で接してしまう人などがまさにそれだ。

売れてる先輩芸人に頭が上がらない後輩を見ているうちに、自分もまるで権力者になったような錯覚に陥るのだろうか。「ベテランの姉さんか!」と言いたくなるような偉そうな立ち振る舞いをする人もいて、そんな彼女はだいたい後輩の芸人から嫌われていた。

飲み会で一緒になった日には「なんであんたの酒を注ぐんだよ」と腹が立って仕方ないが、おごってくれるのは先輩だから、もちろん顔に出さない。先輩がその女性と別れて新しい彼女を連れてきたときは「今回は素敵な彼女ですね!」と声に出そうになったもんだ。

一方、売れてない芸人の彼女は、もれなく全員性格がいい。

売れてないから金もないし、先が見えない不安もあることだろう。それでも「この人といたら楽しくて幸せなんだ」と思って一緒にいてくれる。金や名声という物差しで人を計らない素敵な人たちばかりだ。

嫁に「この歳まで売れてないから苦労させちゃったからね」と冗談めかしていうたび、「食事ができて、住むところがあって、好きな人と一緒に暮らせる。苦労したなんて思ってないよ」と笑ってくれる。さすが20年売れてない俺の嫁になるだけのことはあるなと思う。

調子がいいときにはいろんな人が寄ってくるらしい。そのなかには金目当てだったり、あるいは利用価値があるからとすり寄ってくる人間もいると聞く。だが、売れてないときは、良い人しか寄ってこないらしい。なるほど、俺の周りには、良い人しかいないわけだ。