2014年のW杯ブラジル大会から3大会連続、合計21試合を現地で観戦しているのが、サッカー大好き芸人として活躍しているお笑いコンビ・カカロニのツッコミ担当すがやさん。昨年冬に行われた2022年カタール大会も現地で観戦し、ドイツやスペインに勝利をあげたサッカー日本代表の戦いぶりも、しっかりと目に焼き付けてきました。
今回、カタールW杯を題材にした書籍『ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色』(徳間書店)を発売した安藤隆人氏との対談が実現! 育成年代の選手たちを長年取材してきた安藤氏が、日本サッカーの発展に欠かせない「伸びる若手選手の見極め方」を話してくれました。
ベスト8以上を目指す日本代表に足りないもの
すがや 2022カタールW杯では、日本はドイツやスペインという強豪国に勝ちましたが、結果は前大会と同じベスト16に終わった、というところにもしっかりと目を向ける必要があると思います。2026年の北中米W杯で、日本代表がベスト8以上の成績を残すために、安藤さんは何が足りないと思いますか?
安藤 今のU-20世代の選手たちが実力を磨いて、2026年の北中米W杯に出ないといけないと思うんですよ。今回、久保建英選手(レアル・ソシエダ)が21歳で代表に選ばれましたけど、各国と比べても、日本代表には10代の選手が少ないように思うんです。
どちらかというと、日本は他国よりもU-23の五輪代表の活動に重きを置いているので、10代の選手がフル代表でも活躍できるような土台を整えていく必要はあるかもしれません。
すがや たしかに、他の国よりも23歳以下の代表チームや、五輪のメダルに対する思いが日本は強いように感じます。
安藤 20代中盤で初めてW杯を経験するようでは、世界的な基準では遅いんですよ。日本では「飛び級」と騒がれてしまうかもしれないですけど、フル代表には年齢関係なく入れるわけですから。
10代でフル代表に選ばれて、活躍する選手が出てくるのが、日本代表がさらに強くなるためのバロメーターなのかなと思います。あとは、ヨーロッパのトップチームでやる選手が増えると、戦力は間違いなく底上げされていくでしょうから、その辺りにも期待したいですよね。
インタビューでわかる伸びる若手選手の見極め方
すがや 安藤さんが執筆した『ドーハの歓喜』では、カタールW杯に出場した選手たちの育成年代の姿が描かれています。現在のフル代表で活躍している選手たちが、育成年代に話していた言葉と、今の時代に育成年代でプレーしている選手たちが話す言葉に、何か違いを感じることはありますか?
安藤 正直に言うと、昔の選手たちのほうが、発する言葉自体は豊かだったかもしれません。今はみんながそれなりに話せる分、個性的で可能性を感じる発言をする選手は探しやすくなったような気がしています。
すがや 安藤さんが可能性を感じるのはどのような言葉ですか?
安藤 僕は「言葉に隠されたヒントを見極められる選手かどうか」を、若手選手の判断基準の一つにしているんですよ。最近は、スマホでいろいろなゴールシーンの動画が見られますし、いろいろな情報も得ることができる分、世の中のありとあらゆるものが、結果中心になりつつあると思っていて。
さまざまな情報に踊らされて、そのまま間違った方向に進んでしまう選手と、一度立ち止まって“それが本当に正しいのか”を考えられるかどうかには、そのあとの伸びに大きな差があるんですよ。
日々、サッカーと向き合うなかで出てきた疑問を、しっかり自分で解決できるかどうか。正しい答えがないサッカーだからこそ、自分の課題を見つけて、自分なりの解決方法を導き出せる選手が、サッカー選手としても人間としても上に行けるんじゃないかなと思います。
すがや すがや 例えば「FCバルセロナがやっているから、ポゼッションサッカーは素晴らしい。これこそが正義だ」という論調の方もたまにいますけど、ラ・リーガのチーム同士が対戦するからこそ、崩すためにあそこまで緻密にパスを繋ぐ必要があるという側面もあると思うんです。
高校生同士の対戦だった場合には、それこそ縦の空いたスペースにパスを出すほうが、チャンスを作れる場面も出てくるでしょうから。試合の中で柔軟な発想で工夫をしていくことが大事ですよね。
安藤 そうですね。「正義と悪の対立」で考えてしまうのは、一番良くないですよね。情報に過剰な反応を示してしまう人は、そのぶん、排他的な行動を取りたがる傾向がありますし。
自分が捨ててしまった情報のなかに、もしかしたら大切なヒントが隠されているかもしれない。育成年代のうちから、トップクラブのサッカーを自分たちのレベルに落とし込んでいけるのか。それを考えられるのは大きいですよね。
すがや 昔よりも取材を受ける場面が増えて、大人の対応を求められるようになりました。良い面も悪い面もあると思いますけど、選手たちにとっては、成長できるチャンスでもありますよね。
安藤 選手と話せる機会が増えたからこそ、僕らのようなメディアが“育成世代の選手たちと向き合って話す”ことについて、しっかりと考えていく必要があると思います。
すがや 後に活躍する選手は、会見の受けこたえにも何か違いがあるんですか?
安藤 そこはいつの時代も十人十色で、さまざまなパーソナリティがあると思います。言葉巧みでパーフェクトな回答が、必ずしもすばらしいわけではないですね。