ワールドカップの名場面「三笘の1mm」を振り返る

すがや 育成年代からカタールW杯までの日本代表選手の姿を追った安藤さんの書籍、『ドーハの歓喜』が発売されました。僕も読ませていただきましたけど、本の表紙には「三笘の1mm」の写真が使われていますよね。スペイン戦でVARチェックを待っているとき、安藤さんはどのように過ごしていましたか?

安藤 絶対にラインから出ているだろうと思っていたので「本当にVAR判定をやるんだ……」という感じでした。でも、思ったよりもVAR判定の結果判定に時間がかかっていて。5分くらい経った頃から「もしかしたら、得点になる可能性があるのかな…?」と周囲がざわつき始めて。得点が認められたときには、もう大喜びでしたね。

▲スペイン戦の逆転ゴールのときの心境を語ってくれた安藤氏

すがや 判定が長引けば長引くほど「もしかしたら出ていないんじゃないか?」という雰囲気が、観客席にもありました。

安藤 たぶん、サッカー経験者のほうが“出ている”と思うはずなんですよね。審判が「ラインを割っている」とジャッジしても、誰にも責められることはないと思いますし。

すがや ゴール裏からだと、遠いし高さもピッチレベルに近い分、この場面が全く見えなくて。

安藤 僕は「三笘の1mm」が見えるエリアにいたんですけど、どう見てもラインを割っているように感じていて。もし、マイクロチップがなかったら、得点になっていなかったと思いますし、もしかしたら議論にもならないかもしれない。田中碧(デュッセルドルフ)も「ボールが外に出たと思ったから一瞬止まろうと思った」と話していましたし。

すがや そうですね。サッカーをやっていたら“割っている”と思うでしょうね。写真を見ると、カルバハル(レアル・マドリード)も、あまり必死じゃないですから。

安藤 だからすごいんですよ。一瞬止まろうと思っても、実際は動きを止めなかった田中碧選手の前向きで諦めない気持ちもそうですし、三笘薫選手(ブライトン)がボールに追いつくことを確信していないと、できない動きだから。

 すがや 僕はこういうときに図々しくボールを追いかけるタイプで。自分がスライディングしている姿を見せて、“監督にアピールしようかな”とか思っちゃうんですよ(笑)。

安藤 なるほど(笑)。その発想はなかった! その積極的な姿勢が実を結ぶんですね。

▲すがやさんの「告白」に盛り上がるインタビュー

≫≫≫ 明日公開の後編へ続く