サッカー大好き芸人として、活躍の場を広げているお笑いコンビ・カカロニのツッコミ担当すがやさん。2014年のW杯ブラジル大会から3大会連続、合計21試合を現地で観戦しています。昨年冬に行われた2022年カタール大会も現地で観戦し、ドイツやスペインに勝利をあげたサッカー日本代表の戦いぶりも、しっかりと目に焼き付けてきました。

今回、カタールW杯を題材にした書籍『ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色』(徳間書店)を発売した安藤隆人氏との対談が実現! すがやさんがインタビュアーとなって、現在の日本代表で活躍している選手たちを育成年代から追い続けてきた安藤氏に、本の見どころを語ってもらいました。 

グループリーグを突破したタイミングで執筆依頼

すがや 『ドーハの歓喜』の発売おめでとうございます! まずは、刊行するまでの経緯を教えてください。

安藤隆人(以下、安藤) ありがとうございます。当初は日本国内のサッカー日本代表に対するカタールW杯の期待値の低さもあって、ほとんど仕事が決まらない状況のなか、ドーハに旅立つことになりました。

「赤字になってしまうかもしれないけど、人生においては大切な経験」と自分に言い聞かせて向かったW杯は、穏やかな開幕を迎えたんですけど、日本がドイツに勝った途端に、僕の携帯が鳴り出して……。

その後、スペインに逆転で勝ってグループリーグ突破を決めたときに「多くの方に注目されているので、本を出しませんか?」というオファーをいただいて、出版が決まったという流れです。

▲出版に至った経緯を語ってくれた安藤隆人氏

すがや その時点でサッカー日本代表をテーマに本を書くことを決めていたんですか?

安藤 いえ、そのときは具体的なイメージがまったく思い浮かんでいなくて……。「もし決勝トーナメントを勝ち進んだら、サッカー日本代表の物語を書いてもいいかな?」と思ってクロアチア戦を見ていたら、PK戦で負けてしまって。「4試合で終わってしまったのでどうしよう……」という感じでした。

すがや それでも読み応えのある作品に仕上がっていると思います。

安藤 結構、頑張りました(笑)。強豪国のドイツとスペインに勝ったという盛り上がりと、2大会連続のベスト16敗退のどちらを軸にしようか迷ったんですけど、なかなかアイデアがまとまらなくて。実際に“この本が書ける”と確信したのは、決勝戦のアルゼンチンの優勝で大会が幕を下ろしたあとでした。

すがや 決勝戦はドラマティックでしたよね。

安藤 W杯トロフィーを掲げるメッシの姿を見るまでは、「本当に書けるのかな? 正直、ヤバいんじゃないかな?」という感じでしたよ(苦笑)。

すがや それは意外ですね。僕は安藤さんが書いた『ドーハの歓喜』を読んで、育成年代から選手たちを取材してきた安藤さん自身のストーリーでもあると感じました。本を書く際にどんなことを意識されましたか?

▲身振り手振りを交えて熱く質問するすがやさん

安藤 僕は「日本代表はよく頑張った」とか「ベスト16入りおめでとう」だけではつまらないと思っていたので、代表に選ばれた選手たちが本番まで歩んできたストーリーに自分なりの主観を加えて、臨場感を出すことを意識しました。

例えば「自分に自信がない」と話していた大学生の三笘薫選手が、その後どうやって自信をつけたかとか。高校時代の浅野拓磨選手が、弁当を食べているときにポロリと言った「諦めの悪い男になりたい」という言葉とかですね。

まだ学生だった頃に選手たちが僕に話してくれた言葉があって、今の姿がある。「カタールW杯で、僕がこれまでの取材で実際に目にしてきたものの答え合わせをする」という構成が思い浮かんで、そこからは筆が一気に進みましたね。

「この選手は昔からこういう性格で、こういうふうに頑張ってきたから今の受け答えにつながっている」というストーリーや、「どういう行動をしたから、W杯に出られたのか」という教育的な要素も取り入れながら書いていきました。