サッカー大好き芸人として、さまざまな方面で活躍しているお笑いコンビ・カカロニのツッコミ担当すがやさんは、2014年のW杯ブラジル大会から3大会連続、合計21試合を現地で観戦しています。昨年冬に行われた2022年カタール大会も現地で観戦し、ドイツやスペインに勝利をあげたサッカー日本代表の戦いぶりも、しっかりと目に焼き付けてきました。

今回、カタールW杯を題材にした書籍『ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色』(徳間書店)を発売した安藤隆人氏との対談が実現! 安藤さんとすがやさんに現地で味わったドイツ戦の勝利を振り返っていただきました。

取材として初めて行った2022カタールW杯

カカロニ・すがや(以下、すがや) さっそくですが、2022カタールW杯の感想をお聞きしたいです。

安藤隆人(以下、安藤) W杯にはこれまで4回行っているんですけど、実は取材として行くのは今回のカタール大会が初めてだったんですよ。

すがや これまでは、どのW杯を現地観戦しているんですか?

安藤 高校2年生のときにアメリカ大会(1994年)を見に行ったのが最初でした。その次は大学3年生のとき、バックパッカーとして1ヶ月間フランス大会(1998年)に行き、決勝戦まで見て帰ってきました。

その後、銀行に就職して迎えた日韓大会(2002年)は、日本でも数試合を観戦して、有給休暇を使って韓国にも数試合観戦に行きました。そこからW杯には行ってないので、20年ぶりの現地観戦でしたね。

すがや なぜそこからブランクがあったんですか?

安藤 僕自身が「育成年代を取材していこう」と考えていたからです。プロのライターとして生活をするうえでは、ポリシーが大事だと思っていて。“オンリーワン”のライターになるために、ユース年代の取材に全力を尽くすことに決めたんですよ。

そこから少しずつW杯を現地観戦することに対しての興味が薄れていって、僕の中では、W杯は現地に行って楽しむものから、選手たちの背中を見送るものに変わっていきました。

すがや W杯の期間中は、どんなお仕事をされていたんですか?

安藤 W杯が行われているときは、同じ時期に行われているアンダー世代の国内外の合宿を取材していたり、インターハイ予選などのユース年代のサッカーを取材したりしていました。

すがや 今回、再び「W杯に行きたい」と思った理由は何かあるんですか?

安藤 (2018ロシアW杯の日本VSセネガルの観客席にいた)すがやさんのヘディングを見て、燃えたぎるものがありまして(笑)。あとは、代表の選手たちが「なんで来てくれないんですか?」と言ってくれたことですかね。それで“またW杯に行ってみたいな”と思うようになって、取材の申請を出しました。

取材として行く初めてのW杯で、いきなり『ドーハの歓喜』を発表したので、ライター仲間とかは驚いていましたね。

▲安藤隆人氏の言葉に耳を傾けるカカロニ・すがやさん

サッカーライターになることを決めた本田圭佑の言葉

すがや 安藤さんが本格的にライター活動を始められる際には、本田圭佑さんの後押しがあったそうですね。

安藤 忘れもしません。僕が銀行員として5年目を迎えた、2004年10月のある日曜日のことでした。当時、星稜高校(石川県)の3年生だった本田圭佑選手とは、それまでいろいろ進路の話をよくしていて、名古屋グランパスに決める時もきちんと僕に報告をしてくれたんです。名古屋入りが決まって、最後の選手権予選に臨む際にインタビューをしに星稜まで行ったんです。学校の体育教官室で2時間以上話しました。

僕は大学1年生の頃からサッカーの取材を初めて、コアなサッカーファン向けにコラムを書いていたんですが、社会人2年目になった頃から仕事が舞い込んでくるようになって。本田選手を高校1年生の頃から取材した3年間は銀行員とライターを掛け持ちしている時期でした。

僕が本田選手に「プロ行ってからも応援するから頑張ってな」と言ったら、「安藤さんも、僕と一緒にプロになりましょうよ」と言われたんです。その言葉に胸打たれて、帰り道に福井県のサービスエリアで辞表を書いて、月曜日の朝に提出したんですよ。

すがや カッコいいですね。

安藤 12月末に会社を辞めて、年が明けたら上京をして“ライター1本で頑張ろう”と思っていたんですけど、支店長や人事部から「頼む。辞めないでくれ」とちょっとした騒ぎになって……。実際に退職できたのは、翌年の6月30日でした(笑)。

すがや 6月だと、とっくに本田さんはプロデビューしている(苦笑)。

安藤 そうなんですよ(苦笑)。

すがや 本田さんの言葉がキッカケで、安藤さんは専業のライターになったということですね。その本田さんも解説者として今大会は注目を集めました。カタールW杯では、お二人とも大会やサッカーの魅力を伝える立場として携わられていましたね。

安藤 そうですね。当時からこれまでを振り返ると、僕は言葉にできないくらい感慨深いものがありました。

▲プロのサッカーライターになるキッカケを教えてくれた安藤隆人氏