保活ブログの闇に手を染める
私みたいな者にも息子が2人いる。
長男は保育園を卒園し、この4月から小学生になる。ほぼ毎朝、私が保育園に連れて行った。この5年間にはさまざまなことがあった。
まず思い出すのは、子持ち芸人としての麻薬行為に手を染めたことだ。
「保活ブログでバズる」
これである。
10年以上やって売れなかったこともそうだが、結婚はおろか子供もできるなんて、芸人を志したときには思ってもいなかった。
しかし時は流れ、あまりに先が見えない現状に、覚悟を決めないといけないときがくる。無理矢理、自分に言い聞かせる。
「凝り固まった考えを改めないと!」
そして、子供を使った発信を始める。実に恥ずべきことだ。本当はこういうことをする芸人にはなりたくなかったのだ。
が、しかし!
生活の中で占める時間の割合上、どうしたってSNSやブログに子供の話題が出てくるのは仕方ない。さらに、収入はバイトのみで、芸人の仕事なんてないのだから、日々発信することなど何もない。そこで、降って湧いたのが「保育所問題」である。
見事、区が運営する保育園に落ちた私は、点数を稼ぐために少々保育料がお高めの保育園に入れなければならなくなった。というのも、保育園に入るには「点数」がものをいう。共働き、祖父母が近くにいないなどは必須。他の保育園に預けた実績があると、さらに加点されるなど細かいルールが定められている。「持ち点数」が高くないと、公立の保育園にはなかなか入れない。
罵詈雑言が「存在の証明」
その結果、週3日預けるだけの保育料が月14万である。これをブログに書いたら、Yahooニュースに取り上げられてヤフコメ民の餌となった。
「自業自得だな」
「田舎に引っ越せよ」
「誰?」
スマホをフリックする指の筋肉の消費カロリーもったいなくない? と思ってしまうような罵詈雑言が続く。しかし、そのおかげでとんでもない閲覧数を叩き出す。こうして始まった「パパブロガー」としての日々。
あるときは、TKO木本さんに出産祝いで電動自転車を買ってもらい、それをブログに載せた。再びヤフコメの荒海の中に放り込まれる。
「卑しいな」
「こんな後輩いらんわ」
「誰?」
もう私は中毒になっていた。売れていない芸人にとっては、罵詈雑言でさえ私に向けられた興味の証なのだと思った。汚い言葉の数々に心の中で感謝した。
震えながらスマホでブログを入力する日々。汗だくでネタを探し更新する私。だが、ある日、息子へのネガティブなコメントでハタと目が覚める。それ以来、更新頻度は激減し、最近は年に数回ペースになった。なんだかそれも良い思い出である。