ミュージシャンは普段どんな「メシ」を食べているのか、実はめちゃくちゃこだわっている「メシ」があるんじゃないか? ニュースクランチの編集部員が個人的な趣味で聞きまくる「ミュージシャンのこだわりメシ」。
今回は、自らの著書『焼きそばの果てしなき旅』(ワニ・プラス)も出版している、クレイジーケンバンドの小野瀬雅生さんにズバリ!「焼きそば」について聞いてみました!
これから流行るかもしれないのは…ソース後がけ?
――小野瀬さんが焼きそばにハマったきっかけをお教えいただけますか?
小野瀬:2020年にコロナ禍になって音楽活動があまりできなくなったときに、自宅でいろいろ料理を作ってたんです。そこで突如、焼きそばに興味を持ったのがきっかけですね。
――え、いきなりだったんですか?
小野瀬:それまでいろいろな所で焼きそばを食べていたんですが、意識したことはなかったんです。ただ、そういう状況だったので、いろいろな焼きそばを取り寄せて食べているうちに、どんどんハマっていった感じですね。
――なるほど。例えば、今や国民食とも言われるラーメンであるとか、他にもそば、うどんと麺類はありますが、そのなかでも焼きそばの魅力というのは、どういうところにあると思いますか?
小野瀬:まさに今おっしゃったような地位とは、少し遠いところにいる感じ。ひとくちに焼きそばといっても、家で作るマルちゃんの焼きそばも立派な焼きそばなんです。
そうやって、敷居が低く、求道的ではないところがひとつ。あとは、それぞれの土地に根付いているところ。焼きそばのなかでも、全国区になったものはありますが、基本的にはその土地のもの、というのが魅力だと思います。
――この本からもそうですし、小野瀬さんの価値観からは、とても多様性を感じます。ラーメンは好きですが、やはり詳しい人との知識の差がつきやすいですし。しかも凝れば凝るほど、家で手軽に作れるものじゃないですよね。その点、焼きそばはどんな人でも受け入れる度量の広さを感じます。
小野瀬:そうですね。堅苦しくないけど、奥深いものですね。
――ちなみに、ラーメンって二郎系、家系……などトレンドみたいなものがあるような気がするのですが、焼きそばにはあるんですか?
小野瀬:うーん、あるような、ないような……と言うと、曖昧になってしまうんですが(笑)、例えば、両面焼き、固めに焼く、というのは若干トレンドになりましたが、それが全国的な広がりを見せたかというと、そこまでではない。
近年では、富士宮やきそばやホルモン焼きそばが認知を得ましたが、ラーメンなどに比べると、やはり焼きそばはローカルな色合いが強いのではないかと思います。
――だからこそ、現地に行かないと出会えない、新たな発見が多い食べ物なのかもしれないですね。では、小野瀬さんがこれからちょっと話題になりそう、スタンダードなものになりそう、と思われる焼きそばはありますか?
小野瀬:これは自分だけで盛り上がっているのかもしれないんですが、ソース後がけ、ですね。出来上がりの直前にソースをかける。
――へええ! そういうのがあるんですね!
小野瀬:最近、自分で焼きそばを作るときにそうしてるんです。最初に味付けを完璧にしないで、具もキャベツだけ。そこに出汁粉をかけておく、そうすると、それだけでもう美味しいんです、塩焼きそばでも、ソース焼きそばでもない、麺の美味しさを味わえる焼きそば。ただ、それだけだとギミックがないから、あとからソースをかけるんです。そんな楽しさもあります。
――たしかに、ちょっと楽しそうですね。
小野瀬:もともと、北海道の札幌に、味のついてない焼きそば屋があるんです。そのままの名前「やきそば屋」っていう店で札幌駅の近くにあるんですけど、そこは、卓上にいろいろな調味料があって、各自でカスタマイズして味付けをするんです。これが僕は楽しかったので、もしかしたら流行るかもな……と。
〇焼きそばの果てしなき旅【その7・めん亭はるもと後篇】[note]