太麺・細麺の違いと自作焼きそばのススメ

――ちなみに、焼きそばにも細麺、太麺とありますが、ここに好み以外の違いはあるのでしょうか?

小野瀬:やはり、しっかり味付けをするのであれば、太い麺のほうが僕は良いなと思います。好みも太い麺寄りでした。ただ、細い麺の魅力が、最近わかってきたんです。

――それはめちゃくちゃ興味あります!

小野瀬:小麦の香りとかは、細い麺のほうがよくわかる気がするんです。だから、最近では細い麺の場合は、薄味でも良いかな、と思ってます。

――なるほど。自分の中での焼きそばというのは、やはりマルちゃんの3食入り焼きそばなんです。小野瀬さんも書籍の冒頭でお父様の思い出とともに語られていました。

小野瀬:はいはい、あれは細麺ですね。

――ただ、外に食べに行くと、太麺が多いイメージがあって。

小野瀬:そうですね。やはり、味は絡みやすいんですよね、太いほうが。

――小野瀬さんのおかげで、焼きそばへの見聞が広がって、価値観も広がりました。ただ、もうすぐ40歳なのですが、そろそろ脂っこい焼きそばがキツくなってきた年頃でして……。

小野瀬:それこそ、自作焼きそばのススメです。焼きそばはシンプルに作ろうと思えばシンプルに作れるし、手をかけて作ろうと思えば、手の込んだものを作ることができる。今日はちょっと軽めにしようと思ったら、味付けも薄く、油も少なめに作ればいい。今日はガッツリ食べたいなと思ったら、手の込んだものを作ればいい。40歳くらいの男性におすすめです。

――いいですね。ところで、焼きそばって焼き手でも変わる気がしていて、よく行く焼きそば屋さんがあるのですが、味にブレがあるというか……。

小野瀬:それは大いにあると思います、自分の好きな焼き加減を知るという意味でも、自作焼きそばはオススメですよ。

恵比寿にある焼きそばがうまい定食屋

――ちなみに、ニュースクランチ編集部がある恵比寿周辺で、美味しい焼きそば屋さんはありますか?

小野瀬:恵比寿だと、取材したんですが、本には掲載できなかったのが「こづち」ですね。

――こづち! 恵比寿の駅近くにある定食屋ですね、焼きそばを食べたことはないんですが、たしかに常連風の方は焼きそばを食べてらっしゃる気がします。

小野瀬:定食屋に行って、焼きそばってあまり頼まないかもしれませんが、なかなか美味しいです。個人的には、定食屋などにある焼きそばの場合、そのお店の味付けが出やすいと思ってます。働く男性が多いお店はちょっと味付けが濃かったり。炒飯もそうですね。そのお店を象徴する味、こづちにはそれを特に感じますね。

――小野瀬さんが焼きそばから感じること、焼きそばから伝えていきたいことってありますか?

小野瀬:均一にならない、なり得ないところだと思います。先程おっしゃっていただいたように、多様性があって、それぞれがバラバラで、お互いに影響しあっていない。その辺が僕は好きですし、僕を通して伝わっていればいいなと思うところです。

――ちなみに、小野瀬さんといえば天丼のイメージも強くて、ブログでは天丼についても語られていましたが、グルメ本の第2弾として、天丼本の執筆はいかがですか…?

小野瀬:いっぱいありますけど、なんか長くて、くどくなりそうだな(笑)。

――天丼も日本人の日常生活にあって、美味しいですけど、それほど語っている人を見かけない食べ物ですよね。

小野瀬:そうですね。個人的には地味なのかな、と思ってます。例えば、カツ丼や牛丼など、ほかの丼ものに比べると、地味。ただ、そこが良いところだとは思ってます。天丼って、安い天丼を食べても美味しいんですよ。

――たしかに。小野瀬さんにお聞きするのは失礼かもしれませんが、焼きそばをミュージシャンに例えると、どんなミュージシャンだと思いますか?

小野瀬:うーん、ミュージシャンというか、個人的にはギタリストがたくさんいるようなイメージですね。ギタリスト名鑑みたいな。あの人のギターを聞きたかったら、あのバンドを見に行かないといけない、とかに近い気がします。そこで言うと、天丼はもう少しアーティスト寄りなんですよね。焼きそばはちょっとプレイヤー感がありますね。

――面白い……感覚ですけど、なんかわかる気がします。では最後に、これからの展望を、ミュージシャン小野瀬さんと、焼きそば好きの小野瀬さんの両面でお聞きしてもいいですか? 両面焼きにちなんだわけじゃないですが…(笑)。

小野瀬:ミュージシャンとしては、世の中的にもいろいろな所に行けるようになったので、CKBもそうですし、それ以外にもさまざまなバンドに参加したり、ソロで出たりもしているので、ライブを楽しみたいと思いますし、見に来ていただきたいなと思います。

焼きそば好きとしては、一人でも焼きそば好きを公言する人を増やしたい。今、焼きそば好き何人かでミーティングを開いて、情報を交換したりしてるんですけど、焼きそば好きって良い意味でちょっとゆるいんですよ(笑)。そこはすごく居心地がいいので、暴飲暴食をせずに(笑)、少しでも焼きそばを食べていければと思っています。


プロフィール
 
小野瀬 雅生(おのせ・まさお)
クレイジーケンバンド(CKB)のリードギタリスト、そしてCKBキーボーディスト高橋利光も在籍するロックバンド「小野瀬雅生ショウ」のリーダー。通称は”のっさん”。緩急自在なギタープレイは“ハマのギター大魔神”の異名をとる。CKBでは自作曲も提供、そのコンサートでは自身が中心となるコーナーも設けられ好評を博している。 2001年結成の「小野瀬雅生ショウ(OMS)」ではよりロックギタリストとしてのパフォーマンスを披露。さらに、OMSもう一人のギタリストでありレコーディングエンジニアも務める須藤祐とともにアコースティックユニット「小野瀬雅生と須藤祐」を組み、様々な飲食店を中心にライヴ活動を行い2枚のアルバムを発表している(これらの作品は小野瀬雅生ショウOfficial Web Shopで販売中)。またSKA-9やIKURA&FUNKEE STYLEへの参加などでも精力的にライヴ活動を行っている。 横浜DeNAベイスターズの熱烈ファンであり、無類の野球マニア。さらに、高級・B級問わぬ食べ歩き家としても知られる。ブログ「世界の涯で天丼を食らうの逆襲」やnote、YouTubeなどでさまざまな分野の文章や動画を配信し、2021年9月にはこれらの蓄積を一冊に再編集した書籍『焼きそばの果てしなき旅』がワニ・ブックスより出版される。これが食関係にとどまらず多方面での注目を集め、同年11月には『マツコの知らない世界』に出演。マツコ氏より”神回”といわれるほどのウマウマウーな焼きそばを多数紹介した。(2021/11/2 オンエア)また2020年コロナ禍の中惜しまれつつ終了した横浜市商店街総連合会の食イベント『ガチ!シリーズ』には例年参加、2021年にはシリーズフォロー企画がyoutube配信される。そして2023年には小野瀬自らが大量の焼きそばを焼いてふるまう”ライブ”イベントを敢行、ファンの間で人気を博している。Twitter:@onosemasao、note:小野瀬雅生、ブログ:世界の涯で天丼を食らうの逆襲、公式サイト:小野瀬雅生で御座います