カテゴライズされない絵を描きたい
――現在、イラストを描かれる環境はどんな感じなんでしょうか?
中島 ベースはすべてアナログで描いてます。自主制作で描いてるものは、ほぼ100%アナログなんですが、仕事で描くものは、微修正が入ったりすることがあるので、柔軟に対応できるように6~7割くらいアナログで描いたものを、デジタルツールで加筆修正して仕上げるって感じですね。
アナログとデジタルの一番の違いって、とにかく面倒くさいってところですね。まず、絵具を出すの面倒くさいし、洗うのも面倒くさい(笑)。デジタルならワンクリックでどんな色でも出せますけど。アナログだと、まず絵具を選んで、“これとこれ混ぜたら、この色が出るかな?”って考えて、それを水で溶いて……としないといけないので、とにかく面倒くさいですね。
――使ってる道具はどんなものなんでしょうか?
中島 私の絵を見た方には「水彩ですか?」って聞かれることが多いんですけど、絵具はほぼアクリルガッシュです。描いてる紙は水彩紙なんです。
――私も水彩かと思ってました。アクリルでこんなに透明感が出るんですね。
中島 そうなんですよ。ビビッドな色合いとか厚みのある色が好きなので、アクリルを使ってるんですが、水彩的なにじみの表現も捨てたくなかったんです。ただ、水彩絵具で水彩紙に描くと、水彩画すぎてしまうというか……。透明感が強くて、優しい感じになりすぎてしまうんですね。
もっとガツンとした感じがほしくて、うまいことできないかなっていろいろ考えてたときに、“アクリルガッシュで水彩紙に描いちゃえばいいや”と思って描いてみたら良かったので、それからそうしてます。
――絵の色合いの秘密が少しわかった気がします。1つの作品を仕上げるのに、どれくらいの時間をかけるんでしょうか?
中島 作品によってピンキリですが、仕事の絵だとラフが決まってから1週間くらい時間の余裕をいただいています。オリジナルの絵だと全然決めてないですね。ちょびちょび2週間くらいかけて描くものもあれば、2~3日でガーッと描いちゃうものもあります。
――絵の特徴として、瞬間の切り取り方がとても特徴的に感じるのですが、そういった意識はありますか?
中島 細かいストーリーをガチガチに考えたりはしないんですが、描いている子が“どういう子なんだろう?”っていうのは考えるようにしています。例えば、髪がゆるんでほつれてたりすると、“この子、寝起きなのかな”とか、“走ったあとで直してる暇なかったのかな”とか。そういう細部からその子の物語が出ているのかな。
その子が過ごしていた一瞬をいろいろ拾い上げて、“この子だったらこうだよね”っていう構図を考えるのは楽しいですね。そういうことを考えて描いてるので、結果的に物語性を感じていただけるのかもしれません。
――漫画のような作り方でもあり、ちょっと新しいジャンルのようにも感じます。
中島 そう言っていただけるのはうれしいですね。今の作品群を描き始めたときに、アニメやコミック的なイラストと写実的なイラスト、そのどっちにも寄らない、どっちでもある絵を描きたいと最初に思ってたんですよ。
そのほうがアニメやコミックが好きな人にも、写実的な絵が好きな人にも、どちらにも届くかなって気がして。あまりカテゴライズされないほうが面白いかなっていうのはありました。「新しい」と言っていただけるのなら、3年前くらいの私に「やったやん!」と言ってあげたいですね(笑)。
――そういう絵を描いてる人がいない、と思ったから描き始めたんでしょうか?
中島 まさにそうですね。イラストレーターの養成塾に通ってたんですが、そこに入る前は自分のオリジナリティが見つけられてなかったんです。その頃にコミティアにお客として行って、“こんな感じのイラスト集があったらうれしいな”って、いろいろ妄想しながら探してたんです。
けれど、限りなく私の趣味に近い作品っていうのはあったんですが、ドンピシャで私が見たいものっていうが、なかなか見つけられなくて。そこで“ないなら描くか”と思ったんです。自分が見たいものがないから、“ないなら描くしかねえ!”って(笑)。
――それはすごいですね!
中島 自分が思う最高のものって、自分にしか出力できないと思うので、人の作品を見てそれがないなって思うのは当たり前で、間違ってることだと思うんですけど(笑)。私の中に“こういう絵が見たい!”っていうのがあって、それを形にできるかやってみようって描き始めた感じです。
――そう思って実際に描けるのも、本当に誰も描いていないものになるのもすごいです。ほかに絵を描くときに意識していることはありますか?
中島 あまり自分の主観を入れないようにしてます。入れすぎてしまうとノイズになってしまう気がして。“自分ならこういう行動しちゃうな”って描いてる絵もあるんですけど、自分自身すぎたり、自分が思ってる人間観が出すぎると、自分の味付けが強すぎちゃうというか。一歩引いて客観を入れていかないと共感してもらえないと思っていて。人に届けるっていう点では、主観100%じゃダメだろうなと思ってます。