新しい職場や学校での生活が始まって数か月が経ち、人間関係の悩みを持つ人も多いのではないでしょうか。同僚や友達と仲良くなれない、なぜかいつも相手を怒らせてしまう、などなど。アスペルガーとして20年間も苦しみ抜いた精神科医・西脇俊二氏が、同じような悩みを持つ人へのメッセージを送ります。
※本記事は、西脇俊二:著『自分の「人間関係がうまくいかない」を治した精神科医の方法』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
時代の革新者はアスペルガーだった?
発明王エジソン、アインシュタイン博士、アップルコンピュータの創業者スティーブ・ジョブズ、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ。
その天才的な頭脳や独創的アイデアで世界に名を残した彼らに共通するのは、アスペルガー症候群だと言われていることです。
日本では、その言行録などから戦国時代の武将・織田信長が、アスペルガーだった可能性が指摘されています。
彼らは皆、その功績によって世界を変えた時代の変革者です。そして全員が、社会性やコミュニケーションに問題を抱えるアスペルガーだったというわけです。
エジソンは子どもの頃、学校の成績がまるでだめで、教師からは落第生扱いをされていました。アインシュタインは服装にまったく無頓着で、髪の毛もボサボサ、若い頃はいつも素足に靴を履いていたそうです。
スティーブ・ジョブズは極端な偏食で、ほとんどシャワーも浴びず、腹を立てると社員を何人も即刻クビにしていました。30歳の頃には、自分が作ったアップル社から解雇されてもいます。
ビル・ゲイツもまた、社員の車のナンバーをすべて暗記して出社・退社を確認する一方で、相手の目を見て話すのが苦手だといいます。
織田信長も、鉄砲を活用した新戦法を取り入れたり、南蛮貿易を奨励するなど先進的な考えを持っていましたが、ひどい癇癪(かんしゃく)持ちで家臣は大変だったようです。
コミュニケーションが下手。人間関係をまともに作れない。生きづらい。彼らは皆、そんな資質を抱えていました。しかし、だからこそ、自分の得意な分野で飛び抜けた才能を発揮できたのだと言うこともできます。
“変わった人たち”が世界を進化させた
「アスペルガーがいなければ、世界は石器時代のままだった」
精神医学の世界では、そんなことが言われることがあります。
つまり、はるか昔の時代から、人間が住むこの世界を革新し、文明を進化させてきたのは「アスペルガーの人たちだったではないか」というのです。
- 誰もまだやっていないようなことを、平気でやる。
- 周りのことなど考えず、自分の気持ちを優先する。
- 特別に高度な知能を持っている領域がある。
- 特定の分野への強い興味を持つ。
- 熱中してやり始めると非常にしつこい。
そういうイノベーター(革新者)になる素質は、アスペルガーの特徴とまさにピタリと一致します。世の中は、ずっと同じことばかり繰り返していたら進歩しません。
- 「何か違ったことをやってみよう」
- 「誰もやってないけどやってみよう」
そういう発想とチャレンジ精神を持つ人間が現れない限り、何も進歩しないのです。
つまり、大昔の石器時代、エジソンやスティーブ・ジョブズのような、人と違うことばかり考えるアスペルガー的人間が現れ、それまでにないことをやり始めたと考えられるのです。
- 木と木をこすり合わせたら燃え出すかもしれない。
- これをよじり合わせたら頑丈な縄になるかもしれない。
- これとこれを溶かして混ぜ合わせたら、石より強い武器ができるかもしれない。
そんなことを実際にやってみる「変わった人たち」は、おそらくその後も時代ごとに現れ、この世の中を進歩させてきたのです。