巨人師匠と紳助師匠は責任を感じていたのかも

――私は東京在住なんですが、おそらく関西にお住まいの方とは関西芸人の方々に対するイメージがちょっと違うと思うんです。というのも、やっぱり巨人師匠や紳助さんには、いまだに「強い」「怖い」というイメージを抱く人も少なくないと思います。実際、巨人師匠や紳助さんと接した角田さんは、お二人にどんな印象を受けましたか?

角田 本当にもう、お二人には優しいイメージしかないですね。それは、僕が特殊な入り方をしたというのもあって。紳助師匠の番組のなかの巨人師匠の企画でこの世界に入ったんで、なんか甘やかされてたというか(笑)。本当に、紳助師匠も優しかったですし。

――紳助さんも優しかったんですね。

角田 優しかったですね。マンダラの収録の日、関テレの前で巨人師匠を待っている僕を見かけたら、紳助師匠がちょっと離れたところからわざわざ話しかけに来てくれたり。自分の番組を経由して漫才師になろうとしてるヤツだから、責任を感じてくださったかもしれないですね。「角田の人生を変えた」みたいな意識が、もしかしたらあったかもしれない。

――その一方で、『EXテレビ』(日本テレビ)から巨人師匠の弟子になった有吉弘行さんがいらっしゃるわけじゃないですか? 有吉さんは「もう1回、ヒッチハイクやれと言われるのと、もう1回、巨人師匠の弟子になれって言われたら、圧倒的に巨人師匠の弟子になるほうがイヤだ」とおっしゃっていました。

角田 当時は巨人師匠も怖かったんだと思います。有吉さんと同期で弟子についていた堀之内さんという兄弟子とは僕も一緒やったんですけど、堀之内さんは巨人師匠にものすごい萎縮してはったんです(笑)。その姿を見て“あ、こうせなあかんねや”と僕も緊張するようになりました。

それまでは、素人として馴れ馴れしく接しても許してもらってましたから。マンダラのオーディションで漫才をやって、僕らが選ばれたとき、僕は阪神師匠を抱き寄せてキスとかしてたんですよ。

――(笑)。

角田 あとは『M-1グランプリ』が始まる前の紳助師匠って、2丁目劇場に出てる若手芸人に対して「ダウンタウンの真似して、ダラダラしてダウンタウン風にやって、そんなもんやないで」みたいなことを言ってたんですね。

――よく、おっしゃってましたよね。

角田 ええ。「基本に忠実な漫才を最初はやらなあかんで」というようなことを僕にも言ってくれて。ただ、紳助師匠もその後にM-1を見て「若い子も頑張ってるんや」って認識を変えはったと思うんですけど、M-1前夜は否定的な部分があったような気がするんですよね。だから、そうじゃない方向で育てるみたいな感じで、僕に接してくれてたのかなと思います。

――紳助さんの角田さんに対する褒めようって、すごかったじゃないですか。「ダウンタウン以来の衝撃」と。おおかみ少年(角田が組んでいたコンビ)のことを「天才」とおっしゃってましたね。

角田 でも、あれは褒めすぎですよね。正直、そうやないのは自分が一番わかってたんで(笑)。ダウンタウンみたいにはなられへんっていうのはありました。

――そこで天狗にはならなかったんですか?

角田 いや、天狗にはなってました(キッパリ)。

――ハハハハ!

大崎会長に漫才を見せて30秒で「あ、もうええわ」

角田 天狗にはなったけど、18歳のときですかね。大崎さんに呼び出されて、吉本の本社の屋上でネタをさせられたんです。でも、30秒ぐらいで止められて「なんか、紳ちゃんと巨人からはすごいって聞いてたけど、たいしたことないなあ」って言われて。で、改めて思ったのは“そりゃそうやわな”と。そりゃあ、ダウンタウンを見てきた人からしたらね。

――ただ、角田さんは『今宮子供えびすマンザイ新人コンクール』で優勝もされたじゃないですか。結果を出してるわけだから、それなりの自信はあったわけですよね?

角田 いや。でも、ほんまに下駄を履かせてもらってるのはあったんです。今宮戎のコンクールにマンダラのカメラが入ってたんで、“そりゃあ、僕らを落とすわけにはいかへんねやろ”みたいなのは、高校生ながらに思ってた部分もあったんで。

――そうなんですね。そして、巨人師匠の弟子も1年ぐらいで卒業されました。

角田 1年弱ですね。1年もやってなかったです。

――卒業した理由はなんだったんでしょうか?

角田 それまでは、番組のオーディションでは一番で、今宮戎に出たら優勝して……みたいやったのが、じきにNGKの手見せ(オーディション)で落ちるようになって。あと、梅田の玉姫殿で『梅田アンダーグランド花月』という若い芸人らの漫才イベントがあったんですけど、そこの人気投票でも全然ダメやったりしたんです。そういうのもあり、だんだん自信を喪失していくようになりました。

――当時、同世代にはどんな芸人さんがいらっしゃいましたか?

角田 梅田のイベントでは、ブラックマヨネーズの二人が、関西キング(小杉竜一が所属)とツインテール(吉田敬が所属)という別々のコンビで出られたりしていました。