スパナペンチ永田からのアドバイス
――“もっと評価されてもいいのに!”と思う芸人さんいますか?
山田 え、言っていい…?(小声で)
内田 言いな言いな!
山田 都トムさん。(可児正と高木払いのコンビ)ピンでも、ユニットを組んでも面白いです。面白すぎるとあんまり伝わらなくて悲しいな、とまで思っちゃいます。都トムさんと同じ教育を受けて、みんなが面白さをわかったらいいのにと思います。
内田 お笑いの教養が高いよね、圧倒的に。
――あの二人を面白がれる土壌になればいいですよね。
内田 最近、吉本のイチゴさんのネタを初めて見たんですけど、面白すぎて“なんで知らなかったんだろう”と思いました。吉本の劇場ってあんまり行く機会がなくて、今までほとんど見たことなかったんですけど、マイナビラフターナイトで見てびっくりしました。UNDER5の準決勝でも、めちゃくちゃウケていました。
――以前に取材したエアコンぶんぶんお姉さんも言っていましたね。周りの芸人さんからの忘れられない一言とかってありますか。
山田 永田敬介さん(元スパナペンチ)に言われた事が忘れられないよね。
――おお!人間横丁を見たときの感覚って、スパナペンチのネタを初めて見たときの感覚にちょっと近いかもしれないですね。自分のやりたいことだけをでっかいハンマーで振り回している感じがすごく痛快で、合わせにいってなかったから。ちなみに、どんな事を言われたんですか?
内田 私が「ネタを考えるときに楽しい気持ちが減っていることがよくあります、これが不安です」と言ったら、永田さんは「みんなツラいけど、なんとか出していてどうにかなっている。楽屋ではそんなの見せずに話しているけど、みんなグワっとなって考えているネタなんだって思ったら、生きやすいんじゃない?」と言ってくれて。
「ただただ褒めてくる先輩とかもいると思うけど、そういう人たちは無責任だから褒めるだけ褒めて、下がったときに何も言わないから、ほっといていい」とも言ってくれました。そこからは、褒め言葉も本気で受け取り過ぎないようにしています。永田さんの言葉は、ご自身の経験をちぎって、こっちに渡してくれてる感じがあって、すごくうれしかったです。
――永田さんからの言葉、優しくて重みがありますね。逆に、周りから言われたことで納得いかないことはありましたか?
内田 漫才のときはありました。「関係性が気になりますね」って。男女コンビだからって言われるのは“うっとおしいなぁ”とは思いますね。
山田 関係性って言われても……これだもんって。
内田 こういう人たちをどうやって黙らせられるんだろうと考えてました。
「私と一緒に芸人やっていたら超楽しいから!」
――芸人さん以外で尊敬する方っていらっしゃいますか。
山田 『サイコロ短歌』でお会いした水野しずさん。人に会って久しぶりに“うわーっ!”と思いました。こんなに感覚を言葉で説明できる人なんだ!って。ある人が「タバコをやめたい」って相談を話したときに、水野さんが「未来から見たときの自分が、なりたい自分であるように今を過ごす」みたいな解決方法をその人に話していて、僕もその感覚で生きていたなって共感するところがありました。
内田 言葉の出てくるスピードがとにかく速かったですね。
――山田さんは水野しずさんと同じように考えていたところがあったんですね。
山田 そうですね。養成所に入る前、42歳で人生を完成させようと思っていて。そのためには養成所に入ったあと、このタイミングで売れてとか、そこで売れるためには養成所ですごい頑張らなきゃいけないなとか。今やれることを全部やっとかないといけない、遠慮もせずに全部やろうと思ってました。
――42歳には何か理由があるんですか。
山田 体力的に42歳ならまだ元気、全てやれる状態で終われる。社会人時代に介護の仕事をやっていたので、死生観が変わったんです。それを内田さんに伝えたら「悲しいからやめて」って言われちゃったんですけど(笑)。
――この雰囲気でしゃべる話じゃないですよね(笑)。
内田 それを聞いたときは悲しくて……「私と一緒に芸人やっていたら超楽しいから、山田くんが生きているあいた、ずっと楽しくいられるようにするね! もっと長く生きたいと思って!」って話しました。
――すてきなエピソードですね。
山田 だから今は、終わらすというよりも、いつ終わりがきてもいいようには生きてます。
――内田さんの尊敬する方はいらっしゃいますか?
内田 音楽アーティストの「ずっと真夜中でいいのに。」が好きで、ライブドキュメンタリを見たときに、メンバーのACAねさんが演出されていたのがすごくカッコよくて。顔出ししてないから、ライブもずっと逆光になっていて、ライブのパフォーマンスもすごくて、扇風機を改造して楽器にしたりするんです。
歌詞もすごいステキで、歌詞に書いてあることと歌ってることが違ったりするんですよ。普通そんなことしないじゃんって、本当はこう書いてるけど、気持ち的に口で言うときはこうだっていう話とか。聞いたときと文字で見たときに感じが違ったりとか、全てがカッコいいです。
――それぞれの尊敬する方を聞くと、二人の内面が透けて見えました。
山田 恥ずかしい(笑)。