8月6日の横浜武道館からプロレスリング・ノアの毎年恒例イベント、“真夏のNOAH最強決定戦”こと『N-1 VICTORY 2023』が開幕する。16選手がA、Bブロックに分かれて8月27日のカルッツ川崎までリーグ戦を行い、各ブロックの1位が9月3日のエディオンアリーナ大阪第1競技場が優勝決定戦となる。選手たちにとっては、優勝戦まで進めば8試合のシングル戦となり、また灼熱の環境でコンディション作りも難しい過酷な戦いだ。
そうしたなかで「このベルトを持ったまま、全勝優勝する。なぜ、そんなだいそれたことを堂々と言えるか、それは俺が今、このNOAHの方舟の舵を取っているからだ」と、早々に優勝宣言したのがジェイク・リーである。
昨年12月末で全日本プロレスを退団し、今年1月からNOAHに戦場を求め、参戦わずか11戦目の3月19日の横浜武道館で清宮海斗を撃破して、第42代GHCヘビー級王者になったジェイクだけに自信に満ちた言葉なのか、それとも自らにプレッシャーをかけているのか!?
僕は運動神経がいい子ではなかったんです
「どちらもですね。自信もありながら……自分にプレッシャーをかけなければならないし、かけたいっていう思いもあって、あの言葉を出しました。自分で自分のケツを叩かないと動かないんですよ。僕は学生時代、よく夏休みの宿題とか、ギリギリまでやらなかった子なんです(微笑)。なので、社会人になってわかったんですよ。社会人になったら、そんな計画性のないヤツは信用されないし、実力が伴わなくなってくるし。
なので、早い段階から自分に発破をかけるんです。自分自身でかけたプレッシャーに圧し潰されないように日々トレーニングをして、自問自答を繰り返して……それが自信となって積み重なって、今の自分を形成しているので。その繰り返しですよ」とジェイクは穏やかに語る。
リーグ戦形式の大会では、ジェイクは2021年に全日本プロレスの春の祭典『チャンピオン・カーニバル』に優勝した経験がある。しかしN-1は真夏の8月開催だけに、コンディション調整は難しいと思われるが本人は「まったく心配していないです」とサラリ。
7月半ばの時点で、東京は36度台を記録する猛暑に見舞われているが、ジェイクは毎朝7時から9時までブラジリアン柔術の練習をしている。それも、時には道着の中にサウナスーツを着て5分6ラウンドのスパーリングをやっているという。そこから1時間の基礎体力作りのトレーニング。昼寝をして昼食を摂ったあとにウェイトトレーニングを1時間、夜も時間があれば柔術のトレーニングを1時間というのが1日のルーティン。
さらに「もともと、僕は体が柔らかいわけじゃないんですが、柔軟性がないと怪我につながるし、動きの幅が制限されるので」と、ストレッチも入念にやっている。つまり、自分のリズムで試合を形成することができれば、スタミナに関してはまったく心配していないのだ。
ジェイクが他の選手と違うのは、プロレスの練習だけでなく、柔術やパルクールなどのさまざまな格闘技や運動を取り入れていることだ。パルクールを始めてからムーンサルト・プレスもできるようになった。
そうした取り組みについて「僕は運動神経がいい子ではなかったんですよ。逆上がりができない、跳び箱が跳べない、倒立ができない、開脚前転ができない……数えたらキリがないぐらい“できないエピソード”がありまして、いろんなことができるようになったのは大人になってからなんです。
プロレスラーになってからできるようになったこともすごく多いです。なので、他の人よりも“できるようになった!”という喜びだったり、充実感だったりっていうのが大きいんでしょうね。だから、“もっとこういうふうにしたらどうなるんだろう?”と、パルクールとか柔術とかの武術系統もやり始めるようになって。自分の体の使い方を研究、理解するうえでも気づきが多かったので、大きな怪我をしてないんですよ」と言う。