「残留物」の土で育ったカイワレ
――「食べないとどうなる? 断食道場体験」「“事故物件の寝食べ現象”を専門機関で検査」「死を招くオムライス、集まってくる大根」など、『恐い食べ物』にはタイトルから想像できない、でも興味深い話がたくさん収録されています。
タニシ 松原タニシが“タニシ”を食べに行くとか。タニシは食べられるところがあまりなくて苦労しました。話のひとつひとつは長かったり短かかったりするんですけど、読んだ方には、どの話が面白かったかお聞きしたいですね。
――冒頭でお話されていた事故物件の「土」で、カイワレを育てて食べたと書かれていましたよね。すごくインパクトが大きかったので、最後にその話についてお聞きできますか。
タニシ はい。仕事で家を空けることが多くて世話が難しかったので、そのカイワレは編集さんに代理で育てていただいたんですけど……。
――ええっ……私だったらちょっとイヤかも……。(編集担当者に)この試みについてタニシさんから聞いたとき、率直にどう思われましたか。
編集担当 編集者としては“やってほしい”と思いつつ、その土を目の前にするとやっぱり怖くて、植木鉢を持つこともできなかったです。でも、タニシさんといると「じゃあなんで私はこの土を怖いと感じるんだろう?」「あの土は触れるのに、この土が触れないのはどうして?」と、自分自身を問いたくなるんですよね。
――なるほど。タニシさんにカイワレを託されたことで、問いを投げられる形になったんですね。
タニシ 僕、たぶんこうやって無意識に、人に問いを投げちゃってるんですね(笑)。巻き込んでしまってるなあ。
編集担当 事故物件も内心は本当に怖くて怖くて。でもタニシさんを見ると、平然としていらっしゃる様子なので「自分はこの場所がなんでこんなに怖いんだろう」という哲学的な問いをいつも突きつけられます。
タニシ そっか、そんなつもりなかった……僕という人間が一番怖いじゃないですか(笑)。
(取材:菅原史稀)