世界で唯一の「音楽とお笑いとゲームのフェス」
――コヤブソニックを始める前、音楽フェスに行かれたことはありますか?
小籔 行ってないです。ただ、ビッグポルノのときに手伝ってくれた進行の女の子が、ようフジロックに行ってたんで、彼女に「フェスってどんなん?」って聞いて。「こんだけの時間おんの、暑ない? 物理的にしんどいやろ」「いや、そういうものなんですよ。汗だくなってぐちゃぐちゃになるのが~」と言ったけど、“いや、でもこれはやばいな”と。
初期のコヤフェスで、ほっぺたまっかっかの女の子たちが立ってる姿をよう見て。僕も娘がおるんで、“よそさまの娘さんが、炎天下でほっぺたまっかっかってイヤやな”と思ったので、ここ数年は屋内会場で開催するようになりました。
なにより、僕が行くんやったら50歳で炎天下のフェスはもう無理なんで。「中年も過ごしやすいイベント、僕がお客さんとして行ってもイヤじゃないイベントってなんやろう?」と考えているうちに、屋内になっていった感じですね。
――コヤソニの会場には、キッズスペースもありますもんね。
小籔 そうですね。子どもをフェスに連れて行っても、家族内で「早く帰ろう」とか言うてるやろなと思って。「おもんない思い出になるんやろうな」と考えたら、これぐらいはね。ほんまは、メリーゴーランドやコーヒーカップやジェットコースターを置いとけば、子どもはずっと楽しいでしょうけど、そこまでの資金もないので。最初の頃は、ふわふわのマットを2個置くだけでも「ちょっと高い」って反対してくる社員がいてましたけど。
――本当ですか(笑)。
小籔 それはもちろん、収支を見ての判断なのでわかるんですけど、「いや、ここは置こう」って戦いましたね。
――今年のコヤソニの注目ポイントは、どんなところでしょう?
小籔 そもそもは「音楽とお笑いのフェス」として始めて、7~8回目ぐらいまでは「唯一無二のフェスですよね」と、取材でもよく言われてたんです。でも、今はもう誰も「唯一無二」「珍しい」って言わないんですね。
――「音楽とお笑いのフェス」は他にもあるんですよね。
小籔 「音楽とお笑いのフェス」だらけになった今、“俺がやる必要ってあんのかな?”ってすごい悩んでたところ、たまたま自分が『フォートナイト』というゲームを好きになりまして。だから、この3つをやろうと。「音楽とお笑いのフェス」は日本にあるし、「音楽とゲームのフェス」は海外にある。でも「音楽とお笑いとゲームのフェス」はないから、これなら僕がやらせてもらう意味あるんかなって……というのが、今年の一番の注目ポイントだと思います。
しかも、音楽・お笑い・ゲームと複数の柱があったら、どれか1つに熱量が寄ってしまうと思うんですね。でも僕は3つとも同じ熱量で好き。主催者が3つ同じ熱量で届けようとしてるフェスって、たぶん他にないと思うんですよ。なんか吉本が最近、音楽とお笑いのフェスをやりだして……。
――食い合っちゃってますね(笑)。
小籔 そこは、主催者の目利きと熱量が全然ちゃいますので。
――吉本さんもフェスを始められたということですが、他の音楽フェスにはないコヤブソニックならではの魅力とは?
小籔 フジロックさん、ロッキンさん、サマソニさんは、本当に有名な京都の料亭という感じだと思うんですよ。出てくるものは一流だし、そこへ行ったことをインスタに上げると、みんなから「いいね」が押される。
一方、コヤソニは地元の商店街にある居酒屋という感じ。地元のおっちゃん、おばちゃんなど常連ばかりが来る、優しい雰囲気の居酒屋でいこうと思ってます。ただ、ルートを持ってるから仕入れてるネタだけは京都や銀座と一緒。なので「コヤブソニック」という門構えだけ見たらダサいですけど、ネタケースを見たらタグが付いたカニだらけという感じ。だって、ほんまに出演者は一流なので。
で、お笑い芸人を選ぶ目利きに関しては、日本のフェスを主催してる人のなかで、たぶん僕が一番おもろい。フジロックやサマソニでブッキングしてる人らを全員集めて「すべらない話」やったら、僕がダントツで勝つと思うんです。
――当然ですよ(笑)。
小籔 ということは、お笑い芸人を見る目利き、仕入れの腕は僕がダントツなんです。なんぼ吉本がやったとしても、コヤソニに関しては「ほんまに絶対おもろいで!」っていうヤツしか仕入れてないので、芸人のクオリティに関しては余裕で日本一です。