バンドを始めたことで自分も優しくなれた

――今年の小籔さんはジェニーハイとして出演されますし、18日にはバレンシアガ(小籔が千原ジュニア、フットボールアワーと結成)がオープニングアクトを務めます。小籔さんだけでなく、音楽活動を並行する芸人さんが増えた現状をどう思いますか?

小籔 最近、バーって増えてるのはたぶん、僕みたいなド下手がずっとやり続けてるのを見て、“誰でもできるんや”と思い、開眼しだした人が多いと思うんです。

――確かに、小籔さんはドラムがうまくなる過程をずっと見せてきてますよね。

小籔 「あれ。あいつ、年いってからやり始めたん?」みたいな。「ほんじゃあ、できるんちゃう?」って。僕がジェニーハイでドラムを1~2曲やったとき、各方面から「小籔さんは、どこでドラムレッスンをやってるんですかぁ?」「私も始めようと思うんですぅ」「紹介してもらっていいですかぁ」って聞いてくる人が一気にガッと増えたんです。……えらい、ナメとんなと思って。

――(笑)。

小籔 “小籔ができてるから、私もできる”と思ったんやろなと。で、聞いてきたヤツらは今、全員やってないです。「お前ら、言うとくけども。むちゃくちゃ練習せなできんからな!」。まあ、僕も土足で入って音楽業界に迷惑かけてますんで。やる人が増えるということは、ええことなのかもわからへんなとは思うんですけど。

▲空き時間があればドラムの練習を今も欠かさないという

――バンド活動と芸人としての活動の共通点はありますか?

小籔 お笑いに関して、僕は苦労したことがなかったんです。高校のときに書いたネタをNSCでやったらめっちゃ褒められて、そのネタでテレビのゴングショーでも合格して。ただ、ドラムに関しては最初からできたことがゼロなんですね。だから、ジェニーハイでドラムをやって、できへんヤツの気持ちが初めてわかったというか。

子どもの頃から勉強も運動も、遊びとかでも真ん中以下になったことがなくて、いつもイケてるほうにおったんです。でも、ジェニーハイでは、僕がダントツ下なんですよ。こんだけ劣等感を味わうことってなかったから、今までと景色が全然違くて。そのときに「どうやってもできへんヤツって、こんな気持ちやったんやな」と、新喜劇のおもんないヤツにちょっと優しくなりましたもん。

だから、練習を繰り返してできるようになっていく“コツコツ練習”の大事さを、この歳になってほんまに知るようになりました。

――音楽を始めたことで、座長としての幅が広がった。すごくおもしろい話です。ところで今後、コヤブソニックが東京で開催される可能性はありますか?

小籔 コロナが落ち着いてから、いろんなところが東京の会場を奪い合ってるらしいんです。だから「会場の空きがない」ということ。あと「人件費と材料費の高騰」「大阪より東京のほうが物価が高い」。この3つがコヤブソニックが東京で開催できない理由です。

ということは、この3つをクリアすれば東京でやることもやぶさかではない、そう思っています。だから、今年のコヤブソニックが黒字になり、来年も黒字になったら、東京開催もあるかもわからないですよね。僕は、赤字が2年続いたらコヤブソニックをやめたいと思っているので。

――そうなんですか。

小籔 はい、言うてもおっさんなので。「赤字やけどやろうぜ!」って人もおるじゃないですか。あれ、イカれてると思うんですよ(笑)。お金が足りてないってことは、誰かに迷惑かけてるわけですよね。赤字の年があったとしても、次の年が黒字になってるんだったらいいですけど、赤字、赤字となったら僕はやめたいんです。

で、コヤソニの収支に関しては、僕はずっと知らなくて。会社には「(収支を)見せろ」と言い続けていたんです。僕はノーギャラなんですが……。

――え、ノーギャラなんですか!

小籔 ええ、ノーギャラです。もちろん、ほかの芸人さんにはお支払いしてますよ。他の芸人のギャラを見せたくないのはわかるけど、少なくとも全体の収支とアーティストのギャラは、僕が把握しとかんといけないじゃないですか。例えば、2組のアーティストのどちらにオファーしようか迷っていて、ギャラの内訳を知らんかったら高いほうを選んでしまうかもしれへんし。

でも、最近は僕も全体の収支がわかるようになったんです。だから、そこでようやくわかりました。数年前はチケットの値段が、いかに安すぎたかということを。

――(笑)。

小籔 7年前に見せてくれてたら、俺だってもっとチケットの値段を上げてたって(笑)! 会社はやたらとチケット代を上げたがったけど、俺は「いや、あかん。この値段のままや!」って言い張ってましたもん(苦笑)。

――収支を見てないから(笑)。

小籔 あのときに収支を見せてくれてたら、俺もアホちゃうから「よっしゃ、2000円上げよう」と言うてたって(笑)。「あんたらが巻き起こした赤字騒動ですよ」と言いました。だから、今回は財政健全化をテーマに解決を進めます。ですので、皆さんにチケットを買っていただいて、スポンサーに集まっていただいたら、いつかコヤブソニックを東京でやることがあると思いますので、よろしくお願いします。

(取材:寺西ジャジューカ)


<イベント情報> 
『KOYABU SONIC 2023』
開催日時:2023年9月16日(土)、17日(日)、18日(月・祝)
会場:インテックス大阪4号館、5号館(大阪市住之江区南港北1-5-102)
公式Twitter:@koyabusonicfest、公式Instagram:@koyasoni
プロフィール
 
小籔 千豊(こやぶ・かずとよ)
吉本興業所属のお笑い芸人。1973年生まれ。吉本新喜劇の座長を15年以上にわたり務めただけでなく、俳優やバンド活動など多方面で活躍する。フォートナイトというオンラインゲームにハマり、「フォートナイ ト下手くそおじさん」としてゲームYouTuber活動も始めている。X(旧Twitter):@koyabukazutoyo、Instagram:@koyabukazutoyo_shinkigeki、YouTube:フォートナイト下手くそおじさん