坂本勇人は、名実ともに歴代最高の遊撃手になり得る存在なのは間違いない。

歴代の巨人のスター選手を振り返っても、長嶋茂雄や王貞治、原辰徳以来の内野手のスター選手である。

今シーズンプロ17年目を迎えたが、プロ入り後の活躍ぶりは、12球団で一番長い歴史のある巨人軍という枠を超えて、歴史的に見てもトップクラスの選手になりつつある。

走攻守の三拍子揃っており、これまでの功績は計り知れない。その坂本も、遊撃手から三塁手にコンバートされた。今後のキャリアが注目される。

ゴジキ氏が、今シーズンの坂本の活躍ぶりと今後のキャリアについて語る。

強い気持ちで臨んだ今シーズンは劇的な復活を遂げる

今年のWBCは、日本が世界一に輝いたが、遊撃手のポジションに坂本の姿はなかった。

昨シーズンは、レギュラー定着後で自己ワーストのシーズンを送った坂本は、WBCの日本代表を辞退し、これまで以上に強い気持ちでシーズンに臨んだ。

巨人だけではなく球史で見ても歴代最高遊撃手と言ってもいい坂本が、世界の舞台で躍動する姿を見たかったファンは多かっただろう。

しかし、不甲斐ないシーズンから復活を目指したベテランは、自主トレやキャンプから今の自分にあったフォームを模索した。

坂本自身、今シーズンも怪我や体調不良による離脱があったが、打撃面では模索していたフォームがはまり、劇的な復活を遂げている。

また、坂本のキャリアを振り返ると、疲労が見え始める夏場に成績が下降する傾向はあるが、今シーズンは離脱期間がいい意味で休養となったおかげもあり、6月以降の月間打率は3割を超えている。本塁打に関しても40本塁打を記録した2019年以来の20本以上を記録しそうな勢いである。(9/12時点)

2016年から2019年の打撃は、キャリアにおいて全盛期といっても過言ではなかったが、「20代のときのように、いいコンディションで常に野球ができないので、打撃のほうもコンディションに合わせながら無駄をできるだけなくしてやりたい」とコメントをするように、今シーズンはオープン戦から模索をしていた。

キャリアを通して、オープン戦についてはスロースターターのため心配無用だったが、春先に強い坂本が開幕から22打席ノーヒットを記録し、開幕スタメンから外れる試合もあった。

そんななかで、23打席目にして待望の初ヒットをホームランという形で記録。そこから今の自分のフォームを掴んだのか、一気に成績をあげていった。

本来、オープン戦からフォームを模索しているのは、『坂本勇人論』にも記載している。

また、調整の部分では、例年はオープン戦であまり調子が良くない傾向にあるが、オープン戦の段階で、その年のシーズンに合う打撃フォームの型を模索していることも窺える。このことを踏まえてみても、一流ならではの、一年を大局観で見られる調整力があるのだ。 

今シーズンの打撃で一番印象的なシーンは、やはり6月16日の楽天戦のサヨナラホームランだろう。

このシーンは、坂本だけではなく今シーズンの巨人における最高の場面といっても過言ではない。

34〜35歳のシーズンで離脱や負担が大きい遊撃手を守り、経験が少ない三塁手を守りながら打撃面の復活は、坂本の天性的な打撃センスと年齢を考慮したモデルチェンジがうまくいったからだろう。

実際のところ、現在の坂本の打撃の形は、非常にいいものを感じ、この感覚を維持していければ、来シーズン以降も楽しみである。

遊撃手より負担が軽い三塁手にコンバートされつつあるなかで、現在のフォームを維持しながら、坂本のニュースタイルを確立してほしいところだ。

今シーズンも残りわずかとなり、坂本自身の成績を見ると打率3割、25本塁打が一つのハードルとなりそうだが、さらなる活躍に期待したい。

▲三塁手へのコンバートにより負担が軽減され、新たな坂本勇人が見られるかもしれない 写真:AP / アフロ