今年の夏の甲子園は8月23日に終了した。勝ち上がるごとに勢いが増した慶應が、夏2連覇を狙った仙台育英の投手陣を攻略し、107年ぶりの夏制覇を果たした。

夏の甲子園が終了し、8月31日からは台湾で第31回 WBSC U-18 ベースボールワールドカップが開催される。

Amazonや楽天等の媒体・紀伊國屋書店やジュンク堂書店の売上ランキングで上位に入った『戦略で読み解く高校野球』(集英社)の著者であるゴジキ氏が、21世紀における甲子園を制覇した最強のチームについて語る。

21世紀最強は藤浪・森を擁した2012年の大阪桐蔭

21世紀で最強と呼べるのは、藤浪晋太郎・森友哉を擁して春夏連覇を果たした2012年の大阪桐蔭だろう。

この優勝から大阪桐蔭は、甲子園で「勝って当たり前」と見られる常勝チームになったと言ってもいい。

この両選手は、【高校野球編】甲子園を沸かせた21世紀最強のエース・2番手・投手陣を考察と【高校野球編】21世紀の甲子園をバッティングで熱狂させた最強の打者たちで取り上げている。

チーム打率などは目立った成績ではないが、藤浪と森に関しては、21世紀にとどまらず、歴代最高クラスの投手と打者と言ってもいい。

また、データ上は2008年のチームほどの打力はなかったが、隙のない野球で強さが際立った。

プロ野球選手が高校生と一緒にプレーしているようにも見えた。

夏の甲子園の藤浪に関しては、金属バットとはいえ高校生のレベルでは打ち崩すのは非常に難しいレベルだった。

森に関しても、甲子園では打率4割を切っていないため、こちらも高校生のレベルではどこを投げても打たれるレベルだったに違いない。

また、他の選手を見ても、藤浪に次ぐ2番手は、澤田圭佑がいたこともあり、投手陣も強力だった。

澤田が先発したセンバツの浦和学院戦は、この世代の大阪桐蔭からすると、一番苦しんだ試合だったが、先発としてしっかりと役割を果たした。

さらに、夏の甲子園では済々黌(せいせいこう)の大竹耕太郎に投げ勝つなど、他校であればエースになれる実力だったのは間違いない。

センバツでは主砲の田端良基の代わりに4番に座り、決勝でホームランを放った小池裕也は、夏の甲子園でベンチにすら入れないほどの層の厚さだった。

この世代は、プロ級のバッテリーと緻密な野球、選手層の厚さで春夏連覇を果たした。

▲春夏連覇を果たした2012年の大阪桐蔭 写真:岡沢克郎 / アフロ

「最強世代」と呼ばれた2018年の大阪桐蔭

次に挙げたいのは「最強世代」と呼ばれた2018年の大阪桐蔭だ。

この世代の中心選手は1年生の秋から主力となり、センバツ2連覇、春夏連覇を果たしている。根尾昂、藤原恭大、柿木蓮、横川凱といった高卒でプロ入りした選手が4人もいた。

また、センバツ決勝や大阪大会で対戦している履正社も、翌年の2019年に夏の甲子園を制しており、この頃は両校ともに全国トップクラスだったと言ってもいいだろう。

この年の大阪桐蔭は、秋季大会から春季大会までライバル的な立ち位置にいた智弁和歌山と決勝で対戦し、全ての試合で勝利している。

さらにセンバツの準決勝の三重戦は、苦しみながらもサヨナラ勝ち。夏の甲子園の決勝は金足農業との対戦で、アウェイの雰囲気のなかで勝利しており、絶対王者の名に相応しい戦いぶりを見せた。

その他の世代を見ても、浅村栄斗を中心とした2008年は歴代3位のチーム打率を誇っている。

さらに、2022年の世代は夏の甲子園はベスト8に終わったものの、明治神宮大会・センバツ・国体の三冠に輝いている。

現代野球の考え方だと、仙台育英が一歩リードしそうな流れになるなかで、時代に合わせたチーム構成を再構築すべきときが来たが、21世紀の高校野球を牽引してきた大阪桐蔭の巻き返しに期待していきたい。