遊撃手からコンバート! 大台となる3000本安打の行方

2020年シーズンに2000本安打を達成した坂本だが、キャリアを終えるまでに大台となる3000本安打に到達できるかが注目だ。

この成績は右打者だからこそ価値がある成績でもある。

これまで3000本安打を達成しているのは、日米通算でイチローが達成し、NPBのみの記録では張本勲が達成している。両者ともに左打者のため、坂本が達成となると記録の価値は高くなる。

ネックになるのは年齢的な問題はもちろん、負担の大きい遊撃手としてのプレーの寿命だったが、シーズン中にも関わらず三塁手にも挑戦している。

三塁手として出場したヤクルト戦では、難しい打球を難なく捌くなど、守備面でも非凡な才能を見せた。

坂本の場合、遊撃手の守備の際に捕球からスローイングの早さや、深い位置からのスローイングの正確さがあるため、三塁手からの距離感でも難なくアウトにできているのも素晴らしいものがある。

さらに、一歩目のスタートの早さを活かし、慣れない三塁手でも早い打球に追いついている場面が見受けられる。

プロ野球の歴史を見ても、遊撃手がコンバートする年齢は、30代前半が多い。

坂本は遊撃手としてまだ一線を張っていけているが、疲労が溜まっている時期になると、足の怪我や動きも鈍くなることが多々見られた。

歴代の遊撃手を振り返ると、守備のパフォーマンスが低下したのに引きずられるように、打撃のパフォーマンスも低下する選手もいた。

坂本の場合は、万全に近い状態でシーズンを迎えたが、遊撃手としては厳しい状況だったのを目の当たりにしたのだろう。

その結果、巨人と坂本が下した決断は、三塁手への挑戦という形だった。

三塁手にコンバート後は、さらに打撃の調子を上げていることや軽快な守備を披露しているため、来シーズン以降は遊撃手として台頭を見せるであろう門脇誠や、三塁手として活躍していた岡本和真の起用含め、注目度が高い部分になっていく。

巨人の判断を見ると、功労者の坂本には現役生活をなるべく長くしてほしいのが感じられる。

メジャーリーグでは、大谷翔平が生きる伝説となっているが、坂本に関してもプロ野球において数々の記録を残していくのは間違いない。


プロフィール
ゴジキ(@godziki_55)
野球著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)や『東京五輪2020 「侍ジャパン」で振り返る奇跡の大会』『坂本勇人論』(いずれもインプレスICE新書)、『アンチデータベースボール』(カンゼン)を出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディア取材多数。最新作は『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『21世紀プロ野球戦術大全』(イースト・プレス)。X(旧Twitter):@godziki_55