国体制覇で有終の美を飾った仙台育英
2023年、夏の甲子園で準優勝だった仙台育英。新世代の秋季大会は残念ながら敗れたものの、2023年を3年生として迎えた世代は、高校野球史上を見てもトップクラスの強さだったのではないだろうか。
この世代の仙台育英を振り返ると、昨年の夏の甲子園で東北勢で初となる優勝。
その後の成績は下記になる。
・春のセンバツベスト8
・夏の甲子園準優勝
・国体優勝
この成績を見ても、トップクラスの強さだったと言っていいだろう。そして、この世代の強さは、センターラインの総合力の高さであることは言うまでもない。
投手は、エースナンバーの高橋煌稀や、監督を務める須江航氏が世代ナンバーワン右腕と評価している湯田統真、ポテンシャルがあった仁田陽翔といった甲子園の優勝を経験した3投手がいた。
また、野手も2年生から正捕手だった尾形樹人や主将の山田脩也、トップバッターの橋本航河のセンターライン3選手はもちろんのこと、4番の斎藤陽が優勝を経験している。
前年の優勝メンバーを揃えたチームは、盤石な体制で各大会に臨んだ。ただし、この世代に関しても、順風満帆とは言えなかった。
期待されていた仁田は、想定よりも伸び悩んでいたことは否めない。さらに、センバツまでの野手陣を見ると、盤石な投手陣に依存していたかのように、貧打だったため、競り合いの勝ちパターンはロースコアゲームがほとんど。
その状況でも、打順やポジションを入れ替えるなどをし、野手陣の底上げを図り、夏に向けてチームの力もついていった。投手陣は、湯田が実質エース格のレベルにまで成長を遂げた。さらに、田中優飛、武藤陽世といったあたりも試合を作れるまで成長した。
守備に粗さがあったものの、投打で世代トップクラスのチームを作り上げたと言っていいだろう。
そして、今年の夏は駒大苫小牧(2004年、2005年)以来となる、夏の甲子園連覇が期待された。前評判では、組み合わせが非常に悪いと言われていたなかで、順調に勝ち上がり、決勝まで上り詰めた。
連覇を狙った決勝では、慶應の勢いと応援などの後押しもあり、あと一歩のところで優勝を逃した。しかし、この慶應に対してはセンバツと国体で勝利しており、実力そのものは上だったと言っていいだろう。
特に、国体では慶應が2年生不在だったものの、湯田が完璧に近いピッチングを見せ、打線も11得点記録し、圧倒的な強さで勝利した。
北海戦は打撃戦となったが、夏に向けて成長した打線が力を発揮して勝利した。
夏の甲子園の決勝で抑え込まれた橋本だが、国体では打率.875を記録するなど、持ち味を発揮した。
この世代の仙台育英の強さは、トップバッター橋本が出塁し、揺さぶることにより、相手バッテリーがランナーに意識しすぎていたところを山田や湯浅桜翼、斎藤陽がつないで返していくことであり、それによって得点を積み重ねていった。
また、この世代が2年生のうちから主力だったように、勝ちながら育てていく須江氏の育成やマネジメント術も頭抜けている。
そのため、須江氏が率いる仙台育英はこの世代だけではなく、来年以降もトップクラスのチームを作り上げていくことが期待される。