この本のキーワードは「月収30万」
――新宿カウボーイの石沢さんは、太田プロを退社されてますよね。それでもこの本に入れたというのは、何か思い入れがあったんですか?
西堀 貧乏くさいからです!
――あはははは!(笑)でも、石沢さんすごく面白いし好きなので、石沢さんの生活が知れてうれしかったです。
西堀 もちろん面白いのもあるんですけど、石沢は今やいろいろなことに達観してて、それが面白かったですね。「もう老後だ」って言ってましたよ(笑)。
――石沢さんはしっかりと貯金もされていて、それにも驚かされました。
西堀 いやあ、底辺にもいろいろな形があるんだなと思いましたよ。でもたぶん、僕もちょっと病んでいるというか、ぶっ壊れてるところがあって、この本に出てくれた人も僕も、みんな悲惨だと思ってないんですよね。
世の中の基準で言ったら“可哀想”になるのかもしれないですけど、自分たちは可哀想とは全く思ってないんですよね。本にも出てくるかも知れないですけど「金と地位と名誉以外は全部持ってる」って、すげえ名言だなと思って。たしかに、時間もあるし、お金を持ったところで満たしたい欲がないから、金以外は全部持ってる状態なんだなって。
――皆さん「月に30万くらいもらえたら幸せ」って、まあでもたしかにそうだよなと思いました。
西堀 今回、この本は30万がキーワードです(笑)。
――西堀さんくらいの世代って、少し上にバブル世代がいて、芸人さんでも給料に合ってない家賃の家をわざと借りたほうが売れる、みたいな風潮がありましたよね。
西堀 ありましたねえ。なんか僕自身、ガツガツして売れるんだっていうタイプの芸人の中にいると、なんか居心地悪いというか……。
――この本には金言が多く収録されていますけど、西堀さんが感銘を受けた言葉ってありますか?
西堀 やっぱり一番最初に書いてある、和賀の「芸人以外にやりたいこともないし、それを投げ捨ててまで収入のために何かやることに意味があると思わない」ですかね。
――和賀さんがうれしそうです。
和賀 僕の哲学です(笑)。
西堀 これ、ちょっと深いんですよ。自分自身への保身もあって、すごくスケールが小さくていいなって。
――(笑)。
西堀 たぶん、和賀が知り合いじゃなかったら「うるせえよバカ野郎、みんなイヤでも働いてんだよ!」って言うと思うんですけど、“待てよ、よくよく考えたら、これに対して反論することもできねえな”っていう。
――たしかに、和賀さんの言ってることって結局、腑に落ちちゃうというか、論破できないんですよね。
西堀 でも、勘違いしてほしくないのは、論破って論がある人が相手だからできることであって、和賀には論がないですからね、哲学とか言っちゃってるけど!
和賀 わははははは!
西堀 本当に何もないですから、毎日ある程度お金があって、酒飲めてればいいと思ってるだけだから。
――(笑)。和賀さんの銭湯に行って、サウナ入って、酒飲んだときの顔、めっちゃいいですよねえ。
西堀 でも、朝から土木作業に行って、風呂に入って酒飲むまで、一切笑わないんですよ、昼飯のときだってブスッとしてるんだから! 怖くないですか?
和賀 わはははは!
〇土木作業の日給を一日で使いきる男、和賀。朝、昼、夜と何を食い、何を飲むかに密着した。第一弾。[西堀ウォーカーチャンネル]
――(笑)。でも、あの笑顔には人間が詰まっている気がしました。
西堀 外でパックの寿司食うヤツ、初めて見ましたよ! でもこれも、最初の頃の動画を見返したら、僕あまりツッコんでないんですよね。和賀みたいなヤツを目の当たりにしても、“まあこんなヤツもいるか”と思って。
――あ、その空気感がすごく居心地良かったです! 過剰にツッコまないというか。
西堀 それ、動画で気をつけたところかもしんないです。テレビ的なことや、YouTube的なことを意識しすぎないように。最初は全く意識してなかったんですけど、自分で見返したらそれがいいなと思って、この温度感、このトーンを保つように心がけてました。