みんなが俺の操作方法をわかってた
――3週間におよぶ網地島(あじしま)でのオールロケ。島の方々とはどのような交流がありましたか?
アフロ 撮影から2週間経ったぐらいのタイミングで、島のおじいちゃんから「島の顔になったな」って言われたんですよね。
――すごいじゃないですか!
アフロ 俺、それすごいイヤで…長野県の山に囲まれたところから出てきて、念願のシティボーイになったのに、たった2週間で島の人間になっちゃった。また染められちゃったと思って、ワハハハハ!
――あはははは!
アフロ でも、ロケーション的な意味合いでもそうだし、コロナ禍でもあったので、本当に島の人たちに理解してもらわないと撮影ができませんでした。なので、島の人たちに好きになってもらいたいし、好きになりたいという気持ちで敬意を持って接していましたね。
――弟役の黒崎煌代さんとは、どのような掛け合いをしましたか?
アフロ 超素直に、彼の話を聞きました。黒崎くんは一回り以上も年下なんだけど、 役者としては先輩。俺は自分が一番のペーペーだってことを自覚していたから、年下の子から言われることも超素直に聞きました。
――どのような話を聞いたのでしょうか?
アフロ 心情の解釈。俺が「このシーンはこういう気持ちで喋ってると思うんだけどな」って聞いたら、「いや、アキラはこのときこうなんじゃないですか」みたいな。じゃあ、その気持ちで1回やってみるねって。
あれだけ素直に聞くと、自分の視野が広がりますね。仮に彼の言ったことがしっくりこないのであれば、自分のやり方でやるしかないんだと確信を持って、また別のことを試せる。黒崎くんと接してみて、これからは音楽の現場でも、年下のミュージシャンの言葉を聞いてみようかなって。これから生き方を変えていけたらいいなと思えました。
――高橋美晴を演じた呉城久美さんはどのような印象でしたか?
アフロ 呉城さんとは、向き合うシーンが印象的でしたね。呉城さんにカメラが向けられているときに俺の顔は映らないんですけど、彼女の表情を引き出すのは俺の演技だったんです。だから、自分がやり切れたときは相手のおかげで、相手の演技がすごかったときは、もう俺のおかげだなって、ワハハハハ!
UK(MOROHA)とは、お互いに引き出し合ってはいるけど、それぞれカメラを向けられてる状態じゃないから、音楽にはない感覚を味わいましたね。
――周りとの交流で印象に残ったことはありますか?
アフロ みんなね、すんごい褒めてくれる。超うれしかったです。ずっと、ずっとうれしかった。「いまの演技いいですね」って言われたら「えー、そうかなあ!」って。みんなわかってた、俺の操作方法。
――庄司輝秋監督は、アフロさんの目にどう映りましたか?
アフロ ビジョンには確かなものがあったと思います。監督にとって初の長編で、他のスタッフの方たちはベテランだったんですよ。だから「こうやって撮ったほうがいいよ」とか熟練者から意見を言われていたんですけど、そこで監督は折れなかったんですよね。それってスゲーなと思って。
あれだけベテランに囲まれても、意見を変えない監督の姿を俺たち出演者は見て、すごく安心しました。そして、監督が引かないのを見たら、じゃあその方向で行こうってなるベテランたちの姿もかっこよくて。憧れの大人をたくさん知れた現場だったんですよね、ステキだった。
誰かのために生きたことがある人へ届けたい
――映画の主役を演じきったアフロさんは、これから俳優のお仕事も受けていくのでしょうか?
アフロ その役になりきって歌詞を書けるかどうかが、受ける基準になると思います。自分にその役の要素がなかったら、たぶんリリックは書けないから。
――すごい……初めて聞く判断基準です。
アフロ アキラ、めっちゃリリック書けたからね。なんなら、そのままアキラにMOROHA歌わせていいんじゃないのと思ったし、やりやすかった。 これからMOROHAの活動を通して自分の人間性の幅が広がれば、いろんな新しい曲を書けるようになる。そうすれば、受けられる役もどんどん増えていくことになると思っています。
――最後になりますが『さよなら ほやマン』は、どんな人に届けたい作品でしょうか?
アフロ いま配っている映画のチラシには「人生を諦めかけている、全てのひとへ」と書いてあります。これを更新しようと話し合いをして「誰かのために生きたことがある人へ」というコピーにしました。つまり、全員に見てほしいってことなんです。
あとは、黒崎くんと呉城さんっていう、素晴らしい才能を目の当たりにしました。ぜひ羽ばたいていってもらいたいので、2人にも注目してほしい。俺と目を合わせるシーンでは、2人の表情を引き出すよう努力しました。だから、黒崎くんと呉城さんがこれから羽ばたいていったら「あ、俺が頑張ったからだな」と思うようにします。ワハハハハ!
(取材:川上良樹)