2023年11月3日、震災の傷を抱えながら生きる家族が、新しい出会いのなかで奇跡を起こしていく映画『さよなら ほやマン』が公開された。主役の阿部アキラを演じるのは、人間の感情を妥協なく表現する音楽性が人気のグループ「MOROHA」で、MCとして活躍するアフロだ。テレビCMを中心に、徐々に俳優としての才能を開花させている彼が、今作では映画初主演として新たな一面を見せる。

石巻出身でもなければ、島で暮らした経験もないアフロが、なぜ庄司監督に「お前じゃなきゃダメだ」と言われたのか。ニュースクランチ編集部は、彼の魅力に迫りながら『さよなら ほやマン』に込めた思いをインタビューした。

▲アフロ(MOROHA)【WANI BOOKS-NewsCrunch-Interview】

俺が選ばれた理由は「台本」に書いてあった

――『さよなら ほやマン』の主演に抜擢されたアフロさん。庄司監督には「お前じゃなきゃダメだ」と言われたそうですが、アフロさんはその口説き文句を聞いて、どう思ったんですか?

アフロ 庄司監督がMOROHAのライブをずっと見てくれてたんです。俺じゃなければダメだと言ったのは、MOROHAにある要素が作品に必要だと感じてくれたからだ、と受け取りました。

――具体的には、どのような部分が必要だと言われたのでしょうか?

アフロ 監督から具体的なことは言われていなくて、メッセージは台本だけでした。「詳しいことは全部、台本に詰まってるから、これを読んで判断してください」と。もちろん、監督としてどのように頑張っていきたいか、その誠実な熱意は受け取りました。声をかけていただいたことは素直にうれしかったし、どの部分を必要としてくれてるのかなと思って台本を読みましたね。

――台本を受け取り、映画のタイトルを見たときの印象はどうでしたか?

アフロ “これは……確実にB級だ”と思って……ワハハハハ!

――あははははは。

アフロ ちょっと勘弁してよ、って。でも、台本を読んだら、すごく頷けました。自分に声がかかった理由がよくわかったんです。台本をもらったときは、離れていく家族を描いた『ネクター』 っていう曲を書いている途中だったんですよ。その内容と『さよなら ほやマン』のストーリーが、完全ではないけれどリンクする部分があって、これであれば演じられるかなと思いました。

〇MOROHA「ネクター」MV

――『ネクター』すごく好きな曲だったので、そのエピソードを聞いて尚のこと、映画でのアフロさんのお芝居に深みを感じました。

アフロ じつは俺がやると決まってから、追加されたシーンがあったんです。美晴役の呉城久美さんと2人で坂を登っていって……というシーンなんですが、あそこは、アフロがやるんだったらいけるなと思って、庄司監督が加筆したみたいです。

――あのシーンには、芝居を超越しているものを感じました。どれぐらいのテイクで撮ったんですか?

アフロ 結局、使われたのは1回目でしたね。レコーディングもそうだなって思いました。1発目いい感じで録れたから、もっとよくしていこうって思うんですけど、やっぱり1発目は超えられない。追加されたシーンに関しては、そのときの感覚がありました。

▲阿部アキラと美晴のシーンは見どころのひとつ