お父さんの仕事は「セールスコピーライター」
――大橋さんは、なぜセールスコピーを広める活動をしているのでしょうか?
大橋:もちろん、自分の認知度を上げて仕事の価値を増やしたい目的もあります。ほかには、セールスコピーを広めたほうが、世の中がもっと良くなると思っているからなんです。
たとえば、僕が1万本のコピーを書いたとしても、 1万種類の商品が売れた実績にしかなりません。でも、売れるコピーを書ける人間が1万人になれば、社会にもたらす経済効果が高まると思うんです。だから、これからは僕が書くより、書ける人をどんどん増やしていきたいですね。
――大橋さんのおかげで、セールスコピーライターの知名度は上がっている気がします。
大橋:8歳の息子が、授業で父親の仕事について発表をしたことがありました。そのとき、セールスコピーライターと書いたら、先生に怒られたらしいです。そんな仕事、世の中にないって(笑)。泣きながら帰ってきた息子と、一緒にプレゼンテーションの資料を作って先生に見せたら、僕の仕事内容についてわかってくれました。
とは言え、まだセールスコピーを怪しい仕事だと言ってくる人もいます。そういった背景も肌で感じているので、セールスコピーの仕事をもっと世の中に広めていきたいですね。
――大橋さんが仕事をしているうえで、大切にしていることはありますか?
大橋:「息子に恥じない仕事をする」ことです。お父さんの仕事はセールスコピーライターですと、堂々と言えるような働き方をしたいと日々思っていますね。
――大橋さんが言葉を学ぶなかで、“これはいいな!”と思ったコピーを教えてください。
大橋:株式会社稲葉製作会社さんの「やっぱりイナバ 100人乗っても大丈夫!」です。ほかには、キューサイ株式会社による青汁のCM「まずい、もう一杯!」も素晴らしい。
最近だと、旧車王のテレビCМで「古い車しか買い取りません」は尖っていて目を引きました。僕は休日だけはセールスコピーのことを考えないようにしているのですが、バリアを突破してきた言葉でしたね。
――それらのコピーは、大橋さんが2023年9月に発売した『「ふ~ん」が「これ欲しい!」に変わる 売れるコピー言い換え図鑑』(小社刊)に書いていあるノウハウに当てはめられる気がします。
大橋:そのとおりです。今回の本は、まさに世にあるコピーをベースにしてノウハウをちりばめました。インターネットやテレビなど、さまざまな媒体でよく見るコピーをリストアップし、共通する部分を100個ほど盛り込んでいます。
――どのような人に向けた本なのでしょうか?
大橋:前作の『セールスコピー大全』(ぱる出版)は、専門的に勉強している人にターゲットを絞っていました。今作は、セールスコピーをより広く知ってもらうための入り口になることを意識しています。セールスコピーという言葉を知らなかったとしても、普段の文章作りに悩んでいる人が手に取り、売れる言葉を生み出す価値に触れてもらえたらうれしいです。
――最後に、大橋さんの今後の目標を教えてください。
大橋:今までは“売る”ことをテーマにしてコピーを考えていたのですが、次は「3回聞いたら一生忘れない言葉」というジャンルを開拓していく予定です。一昔前とちがい、今は商品を買うまでの比較検討時間が長くなっているんですよ。広告1発で買ってもらうことが難しいので、どれだけ記憶に残すかが大事だと感じています。今後はそのあたりを深く研究し、ノウハウを作っていくつもりです。
(取材:川上良樹)