アクリルから決める独特の色使い

――色使いが独特ですが、これはどう決めてるんでしょうか?

よしの:アクリルから作り始めたので、アクリルにある色をメインにして配色してます。もともと原色は好きだったんですけど、アクリルにある色を選ぶようになってから、もっと好きになりましたね。

――普段描いている「ひそもん」のような生き物の絵と違って、今回はいろんな「モノ」の絵を描いたと思います。やはり、それぞれ使う脳は違いましたか?

よしの:制作途中に違うなと感じました。生き物は好きな色で塗ることが多いんですけど、「モノ」はそれだとわからないといけないので、一般的なイメージが強いであろう色で塗りました。カスタネットなら赤と青とか、ニンジンは青くしないとか、そこは意識して描きました。

――そうなんですね。でも、たまに独特な色でもわかるものがあって、そこも面白いです。本を作るときに一番意識したことはなんでしたか?

よしの:一般的なイメージの色じゃなくてもいけるかな? というところは、好きな色を使うようにしました。そこはとても考えましたね。意識したことは、いつもより「わかりやすくしよう」ということです。パッと見て「何これ?」ってならないようにしました。

「宇宙」のページだけは、“宇宙だからいいかな”と思って好きに描いちゃいましたけど(笑)。ただ、宇宙のページでいえば、迷路だけじゃなくて、らくがきの要素もあれば、両方を楽しめるページにしたら喜んでもらえるかな、など考えながら描きました。そのほかのページでも、キツネの頭にお花を置いたり、クジラの中に宝箱や宝石を描いたりしているので、少しでもワクワクしてもらえたらうれしいです。

――迷路のスタートからゴールまでの形は、よしのさんが考えて描いたんですか?

よしの:はい。 “どうしたら引っかかってくれるかな?”とか思いながら、ひたすらいろいろな形の迷路を描きました。描いたら自分でやってみて、“めっちゃ簡単だ……”と思って描き直したりしました。迷路を考えるのが一番時間かかりましたね。

▲考えるのに時間がかかった迷路

色を考えてるときが一番楽しい

――イラストを仕事として意識したのは、いつ頃だったんでしょうか?

よしの:グッズだけ作るのではなく、できることをもっと増やしていきたいと思って、イラスト塾に通うようになったんです。そこから「ひそもん」以外にも、いろんなものを描くようになりました。

――最初は本当に「ひそもん」だけだったんですね。

よしの:そうなんです。最初は「ひそもん」だけをアクリルで作ってました。普通はイラストを作品として描いて、それをアクリルとか立体物にするっていう順番だと思うんですが、私は先にアクリルがあって、それがイラストになっていったので、順番が逆なんですよね。イラストはここ数年で描き始めました。

――アクリルにこだわる理由も教えてください。

よしの:高校3年生の頃に行った展覧会で、アクリルのかっこいいイスがあって、それを見て空間デザインに興味をもって、そういった大学に進学したんです。そのときからずっとアクリルが好きですね。大学で課題を提出するときも、アクリルで作ったりしてました。

そんなことしていたら、友達が「東急ハンズにアクリル売ってるよ」って教えてくれて。そこからカラーアクリルを使って作品を作るようになりました。

――にせんちめんたるを知ったのはイラストが先だったんです。あとからアクリル作品を知ったので、“こんなにアクリルが似合う絵って他にない!”と思いました。アクリルありきでイラストを描き始めたからなんですね。建物や風景を、あんなにエキセントリックに描けるのはスゴいと思います。

よしの:ありがとうございます。そう言っていただけるのはうれしいですね。

――制作環境についてお聞きしたいのですが、どのように作品を作っていらっしゃるんでしょうか。

よしの:タブレットで下書きを描いて、パソコンのillustratorを使ってベジェ曲線で下書きをなぞる感じで描いてます。

▲よしのめんたるさんの作業用PC

――アクリルを作るときはどんな手順なんですか?

よしの:アクリルもillustratorでキャラクターの線を描きます。その線がアクリルのカットラインになるんです。カットラインを作るためにillustratorを使うようになったら、これでイラストも描けるようになった、みたいな感じですね。

――ここでもそういう順番なんですね。お二人の作業分担はどんな感じなんでしょうか?

よしの:アクリルをカットするまでが私ですね。データを作って、実際にアクリルをカットして、出来上がった部品をかき集めて、なぐらに「お願いします!」って渡してます。なぐらは組み立てをしてくれてます。一番大変な作業ですね(笑)。

――完全に分業しているんですね。ちなみに、この本に描かれている絵を1枚描き上げるのには、どれくらいかかるんでしょうか?

よしの:描くものが決まっていれば、そんなに時間はかからないです。下書き、ペン入れ、着色と全部で6時間くらいの作業を2~3日かけて、のんびり描いてますね。

――どの作業をしてるときが一番楽しいですか?

よしの:色を考えてるときですね。あと、下書きをなぞっているときに、いったん下書きの表示を消してみて、“よし、ちょっとずつできてる!”って感じるときが好きです。