ビジネス・就活、友達や近所との付き合いでも重要なのがコミュニケーション能力です。相手の話したことを繰り返すオウム返しは“良い聞き方”のひとつですが、間違った使い方をしていると失礼になるかもしれません。コミュニケーションコンサルタントの吉原珠央氏が、相手を心地よくする「良いオウム返し」を教えてくれました。

※本記事は、吉原珠央:著『シンプルだからうまくいく 会話のデザイン』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

状況に応じて「オウム返し」の仕方は変わる

オウム返しというのは、コミュニケーションのなかでも“良い聞き方”の一例として紹介されることがあります。

1930年代以降、カウンセリングでクライアント中心療法を発案し、アメリカの臨床心理学者であったカール・ロジャーズ氏が示している「カウンセリング技法」でも、オウム返しのように、相手の話したことを繰り返すことは、意思決定が尊重される手法のひとつとして紹介されています。

私自身、オウム返しは情報を正確に理解しているかどうかの確認にもなるため、普段の会話中に使用することもしばしばです。

一方で、それを使用する際の基本としては、頻度やタイミングはもちろんのこと、状況に応じた声の大きさに気をつけることも求められます。

そもそも、相手の話したことをオウム返しすることは、手段であり目的ではありません

相手の話をどのように受け止めるのが最適か、その都度、さまざまな方法の選択肢のなかから瞬時に適した判断をする必要があります。

▲状況に応じて「オウム返し」の仕方は変わる  イメージ:Luce / PIXTA

また、オウム返しというと、簡単で単純な反応のように思われがちですが、だからこそ、機械的に言葉を発するだけになってしまわないよう、そのタイミング、さらには声の大きさや丁寧さ(抑揚や発声のスピードなど)にも気をつけたいものです。

以前、カフェで、私の前に並んでいた女性の顔をのぞき込んだ別の女性が「〇〇さん、お久しぶり!」と、声をかけている場面を見かけたことがあります。

顔を覗き込んでいた女性は、続けて「ねえ、そういえば、お子さんは今、どちらの学校に通っているの?」と、私の前にいた女性に質問しているのが聞こえてきました。

周囲には数人のお客さんがいたこともあり、あえて小さな声で学校名を答えていた女性に対して、「◆◆ちゃんと△△くんは、〇〇に通っているのね」と、質問した女性が、子どもたちの名前と学校名を、大きな声でオウム返ししたのです。そして一瞬にして、個人情報が店内に知れ渡ってしまったのです。

子どものことぐらいで、と世の中には気にしない方もいらっしゃるでしょうが、私の前に並んでいた女性は明らかに困惑した様子でした。

というのも、学校名というのは、公立校であれば学区がわかり、住まいも特定できますし、私立であれば、住まいまでは特定できないまでも、わざわざ知らない人たちに個人情報を知られるメリットは何ひとつありません。

個人情報については、“気にしている人もいる”という前提で会話をする気配りの大切さを、身をもって体験したのでした。

「ぜひ教えてほしい」という姿勢で話を聞く

それでは、オウム返しについて、真の傾聴という意味で考えてみましょう。

そもそも傾聴とは、先述したカール・ロジャーズ氏が提唱した「クライアント中心療法」という心理療法で注目された経緯があります。

ロジャーズは、クライアント自らの「ありのままの自分を受け入れる」といった目標のなかで、肯定的に話を聞き、安心して話してもらうために、傾聴を重視したとされています。

つまり、実際の対話のなかから、相手が自分でも認識していない思い、感情などに気づいてもらうために傾聴が大切であり、“話を聞くパフォーマンス”という表面的な意味での「聞く」という意味とは異なることがわかります。

オウム返しをすることが良き聞き手になるための条件であるかのように思い込み、ひたすら、とりあえず反芻のような反応をしたとしても、それでは意味がありません。

たとえば、私が自己紹介をしたときに「コミュニケーションコンサルタント!?」「本を書く仕事!?」などと反応する人がいるとしましょう。

こういう場合、関心から来るオウム返しというより、「なんだ、それは?」「は? この人は何者だ?」といった、警戒心や否定的な感情を持っているものと受け取ってしまうこともあります。

それでは、温かみのある聞き手としては、どのように相手の話に反応したらいいのでしょうか。その答えは、とても簡単です。

味気ない「オウム返し」を避ける方法

  1. 体言止めをやめる(たとえば、相手の職業を聞いたとき「銀行?」「IT系?」「(出身地を話す人に)埼玉?」など)
  2. 「~なのですね」「~ですか」など、丁寧に返す(抑揚を意識すると尚良い)
  3. 自分なりの感想を一言そえる(「〇〇ですか。それは初めて聞きました」「〇〇とおっしゃるのですね。それは気になるな」「よろしければ、もう少し詳しく教えてもらっても、よろしいですか?」など)

もしあなたが、相手の仕事について聞いたとすれば「駅前の洋菓子店にお勤めなのですね」と、1.と2.をセットで、和やかな表情と文末の終助詞「ね」を1秒長く延ばすことで、情報の内容を丁寧に理解しようとしている様子を柔らかな印象として醸し出すことができます。

ちなみに、終助詞の「ね」には、情報の読み取りよりも、相手の気持ちを読み取るために共感し、情緒的な情報を相手と共有するといった機能や、会話の促進や注意喚起の機能があるなどと、言葉の研究では示されています。ですから、適度に活用できたらいいですよね(「ね」を早速、活用してみましたが、いかがでしょう)。

3.のポイントは、何か“うまいことを言う”というわけではなく、「あちら(相手の働く店舗)は、人気店でいつも混んでいますよね」「今度、ぜひ立ち寄って(相手が勤務する店舗へ)みたいと思っていたのです」などと、自分の知っているポジティブな情報や、感じていることを組み合わせ、短くシンプルに一言を添えるだけで、話の内容に関心があることを伝えられるというものです。

▲「ぜひ教えてほしい」という姿勢で話を聞く イメージ:amadank / PIXTA

もし聞いた情報について、何も知らなくても焦る必要はなく、関心が持てなくても、なんら問題などありません。

そういう場合には、「そうでしたか。甘いものが好きな友人に手土産を買うとしたら、何が一番、おすすめですか?」などと、相手が答えやすそうな質問をしてみるのはいかがでしょう。

「ぜひ教えてほしい」といった相手に対する姿勢からは、きっと、それを受けた人は「自分は、頼りにしてもらえているのかな」という、うれしさを感じてくれるはずです。