NewsCrunchの人気連載『毎週アメフラっシ!』のライターとして活躍している、小島和宏氏の最新刊『W★ING流れ星伝説 〜星屑たちのプロレス純情青春録』(双葉社:刊)が8月7日に刊行された。かつて、異色の「カルト団体」として一部で熱狂的な支持を得たW★INGだが、なぜ、今、このテーマで本を書こうと思ったのか? そこにはたくさんの人たちの「青春」に決着をつけたい、という熱い想いがあった。
『W★ING流れ星伝説』2年7カ月という濃厚な歩み
ここ数年、平成初期にスポットを当てたプロレス関連書籍が続々と出版されている。ほぼ30年前の話ではあるが、当時、週刊プロレスで「活字プロレス」の洗礼を受けた世代にとって、ブ厚いプロレス本が書店に並んでいると、ついつい胸が熱くなるものだ。
そのなかでも『W★ING流れ星伝説』は、ひときわ異彩を放っている。人気があった、とは言っても、わずか2年7カ月で崩壊してしまった団体。そんな短い歴史が一冊の本にまとまるものか? という疑問も湧き起こってくるが、出来上がった本は376ページとズシリと重い一冊に。しかも、この本は「構想20年」の大作だというのだ。
――「構想20年といえば聞こえはいいですけど、正直に話せば、20年前に初めて企画書を提出してから、20年間、どこの出版社からも相手にされなかっただけなんですよ(苦笑)。最初の15年間は、箸にも棒にもかからなかった。この5年ぐらいでようやく風向きは変わってきたんですけど、それでも『絶対に読みたいです! ただ、ウチの社では企画が通らないと思うので、ぜひ別の出版社で……』というリアクションがほとんどで、もう半分、あきらめかけていました」(小島和宏、以下小島)
そして昨年の夏、ようやく出版の話がまとまった。学生時代からW★INGの会場に足繁く通っていたという編集者の熱意で、企画会議を強行突破してくれたのだという。さらに当時の主力選手や関係者も続々と協力を申し入れてくれた。
――「本当にたくさんの人たちの『W★ING愛』が、ひとつにまとまってくれたんですよ。長らくプロレス業界から遠ざかっていた関係者まで全面協力してくれて、これはしっかりとした一冊にしなければいけないな、と気合が入りましたね。ちょうど発売日の2021年8月7日は、W★ING生誕30周年記念日。その記念すべき日に、W★INGのロゴが表紙にドーンと入った書籍が全国の書店に並ぶ……それこそがあの頃、W★INGにすべてを捧げた、たくさんの人たちにとっての「青春の決着」になるんじゃないのか、と」(小島)
この本の出版に合わせて、書泉グランデ(神保町)と書泉ブックタワー(秋葉原)では「W★INGフェア」を開催。TシャツやDVDなどとともに特設コーナーが作られ、『W★ING流れ星伝説』も数十冊、大量に平積みされることになっていた。
――「僕としては、ここまでがこの本を作るうえでのワンセットだったんですよ。30年前、プロレス業界で本当にちっぽけな存在だったW★INGが、書店のド真ん中を占拠している。青春の決着だけじゃなくて、30年目の世間へのリベンジですよね。だから発売日に書泉さんにお邪魔して、山積みになっているところを撮らせてもらおうと考えていたんです。その写真を今回、取材に協力していただいた方に送って、熱い想いを共有したい。その瞬間、この本は本当の意味で完成するんじゃないか、と。
さすがに朝イチから行くのは恥ずかしいな、と思って午後3時ぐらいにお伺いしたんですけど、特設コーナーには4冊しか置かれていない。あれっ? と思って店員さんに尋ねたら『朝から飛ぶように売れて、それしか残っていないんですよ』と。もう、うれしい誤算ですよね。20年間「こんな本、売れない」と、どの出版社も相手にしてくれなかった本が、初日から売れまくっている。僕と金村ゆきひろ(W★ING最後のエース)のサイン本を置かせていただいたんですけど、翌日の午前中にはすべて売り切れたそうです。このことを金村に報告すると『(W★INGでデビューした)20歳の自分に、この状況を教えてあげたい』と感無量の様子でした」(小島)