ウケない理由を自分で考えることが成長の秘訣

今回のライブのほかにも「POISON吉田が1人と漫才」など、面白い漫才企画を打ち出している吉田。どのような思いで漫才と向き合っているのだろうか。

「単純に漫才をやるのが好きだからですね。でも、意外と自分の頭の中を整理したいから、漫才と向き合っているのかもしれません。たとえば、若手芸人のネタの審査員をしているときに、自分の意見を言葉にできないと説得力が生まれないですよね。頭の中にあることを整理していくなかで、漫才という具体的な形が出来上がっているんだと思います」

現在では先輩として意見を求められる立場である吉田。自分が若手の頃受けたアドバイスで、印象に残っているものはあるのだろうか。

「うーん……。当時は、ああしろこうしろって、あんまり言われなかったんですよね。漫才中に腕を組むな、ぐらいかな(笑)。自分も、あまり後輩へ積極的なアドバイスはしてないんですよね。というのも、他人に言われたままやってみても、本人が乗り気でなければ意味がないと思ってるんです。ネタがウケなかったときに、それはなぜなのか? を自分自身で考えて対策を練っていくほうが絶対に身になると思うので」

▲ウケない理由を自分で考えることが成長につながるんです

若手のネタ見せの講師もしている吉田に、最近見た若手のなかで面白いと思った芸人を聞いた。

「パンプキンポテトフライは、初めてネタを見たときに面白い! と思いました。ほかには、1~4年目の若手芸人たちのネタを見たときはイチゴが印象に残りました。あと、9番街レトロも好きです。なかむら(☆しゅん)くんのYouTube『えぐいっちtokyo(仮)』はチャンネル登録して見るぐらい好きですね。若手のネタを好きになるときは、バンドを好きになる感覚で見てるかも知れない。基準は僕がドキドキするかどうか、ですね」

囲碁将棋、オズワルドなど「POISON GIRL BANDを見て、お笑いの世界に入った」と公言する後輩芸人は少なくない。

「オズワルドの伊藤くんとか、囲碁将棋の文田とかは、ポイズンを憧れだと言ってくれます。とてもうれしいです。そういえば、僕の憧れである甲本ヒロトさんが、パンクロックを初めて聞いたときに“これだったら僕たちでもできる”と思ったみたいなんですよね。同じようにポイズンを見て、“これなら僕たちでもできる”と思ってくれた人がいるなら、もうパンク漫才師を名乗ろうかな(笑)。

あと、これは阿部ちゃん以外の方々と漫才をやってみて、改めて気づいたことなんですけど。やっぱり芸人はみんなすごいですよ。営業妨害になるかもしれないけど、とろサーモンの久保田とか、天竺鼠の川原とか、2人とも無軌道な感じに見えるけど、ちゃんと台本を読み込んできてる。そのうえでアドリブもめっちゃ面白い。みんなバケモンだなって思います。

プロ野球選手のピッチャーが決め球を持っているみたいに、売れてる芸人みんな2~3個は得意なものがあるんですよね。声の張り方とか、間の使い方とか……うまい人を見てると、僕はつくづく決め球なしでやってたんだなって(笑)」

コンビにとって2015年の『M-1』が転機だったかも

NSCに入ってからを考えると、25年を数える吉田の芸人人生。転機になったのは、やはりM-1グランプリだ。

「2003年に準決勝進出をしたとき、その頃はまだ結果を出せていなかったけど、“ああ、いつか決勝に残れるな”って感じたんです。実際、翌年は決勝まで残った。そこから、2006年、2007年って決勝に行って、変ホ長調に負けて“素人に負けた”って言われて……。とりあえず、2010年で一度M-1が終わって、そこが自分たちのラストイヤーって認識だったんです。

そしたら、2015年に復活したらルールが変わって、参加資格が結成10年以内から15年以内に変わって、出られることになった。でも、僕の中では2010年でM-1のスイッチは切れていたし、若い子にめちゃくちゃ申し訳ないところもあって、気持ちがあまり乗らなかったんです」

自分たちが出たら、若い子に申し訳ないのではないか。その思いを相方の阿部に伝えたところ、「それでも、もう一度出たい!」と言ったので、「じゃあ、ネタ選びもやってね」という約束で、二人はM-1再挑戦を決めた。

「それまでは、ネタ選びも話し合って決めてました。でも、2015年は阿部ちゃんが全部決めた。結果は予選の審査員の方々からも“今年は決勝進出確実だね”と言われたのに、準決勝で敗退してしまったんですが……。じつは阿部ちゃんが準決勝のネタを選んだときに、“そっちかぁ!”と思ったんです。でも、阿部ちゃんに全部任せると言った以上、僕からは口出しできませんからね。もしかしたら、あの日が転機かもしれない(笑)」

「復活してからのM-1は別物」というのは、2001~2010年の決勝大会に出た人がよく言うことだ。ピリピリした緊張感が張り詰めており、ウケないコンビが容赦なく晒されてしまう場。今の空気で挑戦してみたい、という気持ちはないのだろうか。

「いや、それ以前に決勝まで残るかな……一応、残りますって言いたいですけど。でも、2015年も決勝のメンバーを見て、結果的には残らなくて良かったなと思いました。若い人たちの大会になっていたから。今のほうが羨ましいと思うところは一個あって、笑神籤ですね。出番順が決まっていると、勝手に緊張しちゃうんですよ、僕(笑)。

ルミネ(the よしもと)の出番でも、楽屋でくつろいでて、自分たちの出囃子が鳴って、“やべえ!”って出ていったときのほうがよくウケたんですよ。だから、当時も笑神籤システムだったらよかったなというのは、見ていて思います」