まずはケガしない体づくりをすることが大事

――親方は現役時代、度重なるケガと向き合いながら、40歳近くまで土俵に立ちました。そういった経験を生かしながら、弟子がケガしたときにはどう指導していますか?

安治川親方:まずはしっかりと治すのはもちろん、そのうえでアイシングやストレッチなど、自分でできるケアは面倒くさがらずに毎日しなさいと話してます。あと、痛かったら無理しないでちゃんと申告しなさい、とも言っています。痛いなら痛いなりに、その日に取り組めるメニューがあって、やることが変わってくるからです。

また、俵があると無理して残ろうとしたり、打ちつけたりしてケガするため、稽古場の俵は取りました。まずはケガしない体づくりをすること。ただし、相撲にケガはつきものなので、うまく付き合っていくことも大切です。相撲を取る稽古は短期集中で、基礎とぶつかりを長く、大事にしています。稽古時間は長くないけれど、中身の濃い稽古ができていると思いますよ。

▲弟子たちの一日のタスクが書かれたボード

――基礎から徹底して指導してもらえると、未経験でも入ってきやすそうですね。安治川部屋では、公式LINEや各種SNSを駆使した部屋の情報発信にも積極的にしていますが、その理由はなんでしょうか?

安治川親方:開かれた、風通しの良い部屋にしようと思っているからです。興味があれば、自分の目で見て選んでもらうのが一番。そのための情報はなんでも教えますよ、というスタンスです。不安なく入ってきてくれたほうが、こちらとしてもありがたいので。入門希望者だけでなく、後援会もそう。SNSやテクノロジーもうまく活用して、いろんなつながりができる場にしたいです。

「素直で親を大切にする子」が向いている

――2021年から1年間、親方は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科で「相撲部屋におけるおかみさんの役割について」をテーマに学ばれました。そういった考え方は、親方自身が大学院に行かれた経験が大きいのでしょうか?

安治川親方:大きいですね。考え方が広がったというか、今まで普通だと思っていたことがそうじゃないんだとか、外からの目を意識しながら物事を考えられるようになりました。今では、自分の部屋だけじゃなく、相撲界全体を支えてくれる人たちを増やすために何をすべきかを考えていきたいと思っています。弟子たちも、資格取得などのやりたいことがあったら、どんどんサポートしていきたいです。

▲しこ名の入った座布団

――伝統は守りつつ、時代に合った新しい部屋の在り方ですね。親方は、どんな子に入門してきてほしいですか?

安治川親方:まずひとつは素直な子。言われたことを素直にやってみるのが、早く上達する一番の方法です。それと、それぞれの家庭環境があるので一概には言えませんが、親を大事にしてきた子ですね。相撲って、親に心配はかけるけど、一生懸命に取り組んでいる姿は届きやすい。自分が強くなれば自分に返ってくる世界なので、親や育ててくれた人に恩返しがしたい、という気持ちの強い子がいいなと思います。

その面では“こういうことをしたい”と、ひとつ決めたものがある子が強いんです。目標は関取じゃなくたっていい。ちゃんこを覚えて将来、ちゃんこ屋をやりたいとか。やりたいことを見つけるために、後援会でいろんな人と出会いたいとか。何かひとつ、したいことを見つけて入ってきてほしい。

その点で、10代であれば「恩返し」の気持ちが持ちやすいのと、自分一人でここまで育ってきたわけではない、というところで「素直な子」に結びつくかなと思います。そういう子たちに来てもらえたらいいですね。

▲弟子思いの安治川親方と飼い犬のシロくんのツーショット

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