5月20日にロッシー小川が旗揚げしたばかりの女子プロレス新団体・マリーゴールド。その主要立ち上げメンバーとして参加したのが林下詩美だ。以前所属していた団体・スターダムでは、トップ選手として数々のベルトを総なめにしてきた。そんな彼女にニュースクランチがインタビュー。7月13日の両国国技館での試合に対する意気込みなどを聞いた。

▲林下詩美【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-INTERVIEW】

「どうしても闘いたい相手」との邂逅

2024年7月13日、両国国技館で女子プロレス界が誇る「運命の対決」が実現する。

林下詩美vsイヨ・スカイ。

イヨ・スカイは、今をときめくWWEスーパースターで、バリバリのメジャーリーガー。今年のレッスルマニアにはWWE世界女子王者として出場。まさに世界の頂点に立った女、である。日本のファンとっては「紫雷イオ」の名前のほうが通りはいいかもしれない。

その紫雷イオに憧れてプロレスラーになったのが、誰あろう林下詩美。いつか対戦することを夢見て、紫雷イオがトップに君臨するスターダムに入団したのだが、運命のいたずらで詩美がデビューする直前、イオはWWE入りのためアメリカへと旅立ってしまった。

あれから6年。すれ違ってしまった運命が、ついに交差する。

6月11日後楽園ホール大会のエンディングで、イヨ・スカイ戦決定の映像がサプライズで流されると、詩美はリング上で喜びの感情を爆発させた。普段は「クールでロイヤル」なキャラなので、なかなか見られない“素”の姿だった。

「本当になんにも聞かされていなかったんですよ。もちろん、ひょっとしたら実現する日がくるかも……と、うっすら聞いていましたけど、あくまでも“ひょっとしたら”レベルの話だったので、まさか、こんなに早くその日が来るとは思っていなかったので、めちゃくちゃうれしかったですね。

イオさんと闘いたい、というのがマリーゴールドの旗揚げに参加する理由のひとつでした。私にはどうしても闘いたい相手がいて、ひとりがイオさんで、もうひとりがジャングル叫女(元スターダム)。

でも、それってスターダムにいたら、きっと実現しない。そんなときに(ロッシー)小川さんが新しい団体を立ちあげる、という噂を聞いて“あっ、そっちに移ったほうが私の夢に近づくかもしれないな”って。本当にその通りになりました!」

自分のためにプロレスをしたい

詩美はデビュー直後から闘いの最前線に飛びこみ、若くして団体最高峰のベルトを巻くと、長期政権を築いた。それゆえの悩みも、マリーゴールド参戦へとつながってくる。

「そろそろ“自分のために”プロレスをしたいなと思ったんです。ベルトを巻いているときは、やっぱり団体を背負うことになるし、ユニットのリーダーになったことで、ずっとユニット全体に意識を向けて闘ってきたので、今度は自分のために闘ってみたいなって」

ちなみに、詩美がリーダーを務めていたユニット『Queen’s Quest』の創始者は、誰あろう紫雷イオ。もし、スターダムに籍を置いたまま対戦が実現していたとしたら、どうしても闘いのテーマとして、そのユニットを巡る物語が主軸になってしまう。

そういう意味でも、旗揚げしたばかりのマリーゴールドのリングで、まっさらな状態でシングルマッチができる、というのは大きい。まさに“自分のための闘い”が実現するのだ。

「夢が叶ってうれしいですけど、それで終わったら意味がない。夢が叶う、という意味ではゴールなのかもしれないけど、これからも私の闘いは続いていくし、そのためにはしっかりとした試合をして、イオさんに勝ちたいですね。そう考えると喜んでばかりはいられないし、すごく緊張しています。

私が憧れていたことをイオさんは知っていますけど、今までに一度もリングで闘ったことがない。本当に今回が正真正銘の初対決なんですよ。だから、実際に両国国技館で闘って、イオさんに“なんだよ、詩美ってこんなもんだったの?”とだけは絶対に思われたくない。

イオさんにも、お客さんにも“すごい!”と思ってもらえるような試合がしたいし、それができる自信はもちろんあります! この試合を見ることで歴史の証人になれると思うので、たくさんの方に足を運んでいただきたいですね」

歴史の証人、というのはオーバーな表現ではない。

この試合を野球に例えると、大谷翔平が1日限定で日本球界に復帰し、自分に憧れてファイターズに入団した若い選手と、1打席だけ公式戦でガチ勝負するようなもの。

野球の世界では、そんな話は絶対に実現しないが、そんなウソみたいなことがホントになってしまうのがプロレスならではのファンタジー。

とは言え、こんな壮大なレベルの闘いはそうそう実現しないわけで、まさしく7月13日の両国国技館は「歴史の証人」になれるチャンス、なのである。