結成16年以上の漫才師による『THE SECOND~漫才トーナメント~2024』で優勝を果たしたガクテンソクが、7月19日に大阪、7月26日に東京で『ガクテンソク単独ライブ「ふるべのかむわざ」』を開催する。毎年恒例の単独に加えて、優勝後の心境や今後についてなど語ってもらった。
飄々としたボケのよじょうに、奥田修二が耳に残るフレーズでツッコむ、話術に長けた実力派漫才師・ガクテンソク。昨年、活動拠点を大阪から東京に移し、今年の5月に開催された『THE SECOND~漫才トーナメント~2024』で優勝し、7月には大阪と東京で単独ライブ『ふるべのかむわざ』を開催。バラエティ番組に出演するなどメディアでの活躍も増えつつある。
※本記事は『+act.(プラスアクト)2024年8月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。
ウケなかったときは防衛本能のアドリブに懸ける
――今年の単独は大阪、東京ともに、すでにチケットが完売されたそうですね。
奥田修二(以下、奥田):東京公演を急遽、配信ありにしました。単独は年1回だけやってきたんじゃないですかね。『M-1グランプリ』が復活した頃は、なんのネタが当たるかわからへんから数作ろうっていうので、毎月やっていたこともありました。けどまぁ、最近はゆったりとしてます。基本、ネタは僕が作ってるんですけど、単独前日とかに台本を渡すこともありまして。
よじょう:あんまりせぇへんですね、ネタ合わせも。ちょっとやばいネタだけ、もう1回やっとこうかって。
奥田:そこまで(ガチガチに)決めないイメージですね、僕らは。本番でやばい、ウケないってなったときは、防衛本能で出るアドリブに懸けます。そのときに出た言い回しがウケたら、次からはそれでやろうかってなりますけどね。
単独は基本、新ネタで。普段の寄席って、僕たち以外を見に来た人がたくさんいるじゃないですか。『THE SECOND』で優勝する前なんて、僕らを見に来てる人は、ほぼゼロというか。
僕らを見に来てる人以外の人も笑かさなあかんので、ある程度、確定でウケるネタをやることになるんです。けど、単独は100パーセント、僕らを見に来てくれてるじゃないですか。やから、新ネタをやらせてもらって、次に見たときにどう変化してるかも楽しんでもらう、という感じでファンの皆さんに甘えさせてもらいながらやってます。
今年でいうと、今はうっすらとテーマを思いついたらメモしている段階で、本格的に(ネタを)作るのは6月末くらいからですかね。大阪は配信がないぶん、自由度が高いかなとは思ってます。
――で、よじょうさんはネタの出来上がりを待っていると。
よじょう:そうですね。けどまぁ、2日前くらいまでにもらっときゃあ、なんとかなるかなって。急に20本くらいバーンと渡されたら、無理やで!ってなりますけど、いつもやってる5~6本くらいならなんとか。
奥田:あと、一応はできた順に送るんで。
よじょう:できたやつがめっちゃ早くに来て、そこからは不定期って感じですね。2~3年前くらいの単独で、前日に3本くらい持ってきたことはありましたけど、それでもなんとかなりました。
奥田:ネタができないときは、3本同時進行なんですよ。1本目で行き詰まったら、2本目を書き出して、そこでも行き詰まったら3本目を書き出すんで、ギリギリになってるネタほど行き詰まってるものなんですよね。
よじょう:あと、ここの部分はまだやからって言われて、当日に(できてなかった部分を)パッと渡されたこともありました。
奥田:フフ、あったなぁ。最初の2分と最後の2分は決まってて、あいだ4分くらいあんねんけど、まだやわって。意地悪してるつもりはないし、ちゃんと事前に報告はするんです。前に送ったやつは一応憶えておいたほうが、そちらもしんどくないと思いますよ、ということで。
まぁ、この人は勉強を遅れたくないという理由で、小中高と皆勤賞なので記憶力がいい。やから、(直前に台本を渡しても)なんとかなるでしょうと勝手に高を括ってます。
よじょう:あはは! 僕がネタを飛ばすこともあっても、こっち(奥田)もなんとかしよるんでね。
中川家さんみたいな漫才もやってみたい
――ライブを重ねてネタを育てられるところもまた、漫才のよさなんでしょうね。『THE SECOND』優勝によってネタ作りに変化はありそうですか?
奥田:『M-1』が終わったときのほうがありましたね。『M-1』って、新しさを求められるのでテーマ選びが大変なんです。良い着眼点が必要というか、真っ直ぐに『サザエさん』とかやれない。
やってもいいんでしょうけど、その場合はとんでもない切り口が必要なんですよね。やから、『M-1』が終わったときにテーマ選びが自由になったなと思ったんですけど、そう感じてネタを作り始めた2年後くらいに、『THE SECOND』が始まって。
で、自由なテーマのネタでアプローチできる大会やったし、そこで今年、優勝できたんですけど、優勝したネタに普段のネタでやってたウケるフレーズとか、くだりをふんだんに入れたぶん、今ネタがないんですよ。それに『THE SECOND』でやったネタは(舞台だと)ウケが緩くて。
よじょう:まだ(オンエアの記憶が)残ってるんでしょうね。
奥田:(昨年優勝した)ギャロップさんに、どれくらいで『THE SECOND』でやったネタを舞台でやったんですかって聞いたら、2~3週間かなって。けど、ギャロップさんのネタは、正確になんて言ってたんか、もう1回聞きたいと思うネタやったんですよ。
僕らのネタは、特に僕のフレーズが残ってるんでしょう。幕張(よしもと幕張イオンモール劇場)とか、一昨日、見ましたみたいな感じでシビアやったなぁ。だから、新ネタを補充できたらとも思ってますね。
――そうなると、今回の単独では新しい形の漫才も見られそうですね。
奥田:そうですね。ボケとツッコミが代わるというよりは、どっちがどの役割をやっているのかわからん、みたいなのが理想やと思ってるんです。ボケとツッコミというよりは、芸人二人っていう感じのほうが。やすきよ師匠(横山やすし・西川きよし)とか、そうやもんな?
よじょう:どっちがどうってないもんな。
奥田:注意される側とする側は多少ありますけど、どっちも変っていうか。きよし師匠が、やすし師匠の私生活のことを注意してるんですけど、いざ漫才始まったらめちゃくちゃなこと言うて。それで、やすし師匠が「おまえやめろ」ってツッコんでるから意味わからん。
よじょう:せやなぁ。中川家さんとかも最近、場合によって代わったりしてますよね。
奥田:剛さんがツッコむことはないけど、剛さんにフリ続けられた礼二さんがボケ続けるとかあるよな。人間……すよね。作品系じゃなく人間系の漫才ができたら。せっかく戦いの螺旋から降りたので、そういうネタもやっていきたいなと思いますけど。
――それにしても、『THE SECOND』決勝は大変ですね。オンエアの時間も長いですし、6分ネタですし、優勝までにネタが3本必要なので持久力が試されるというか。
奥田:そうですね。沼津に吉本の劇場があって(沼津ラクーンよしもと劇場)。そこの支配人が、『THE SECOND』に出る世代の芸人たちに注目されるような劇場にしようっていう方向性を出して、月2回くらいですかね?
土日で1日2公演ずつ、6分ネタを磨く漫才合宿みたいなライブを始めたんです。1公演5組くらい出て、2本ずつ漫才するんですけど、1日で4本、2日で計8本じゃないですか。しかも、お客さんは間違いなく2ステとも見るんで、絶対に4本ともネタを変えなあか
んのです。これがめっちゃしんどくて(笑)。