トリックスターから点取り屋に変貌したC・ロナウド
1ヶ月に渡った欧州選手権、ユーロ2024も終わりを迎えました。たくさんの激戦があり、選手たちの戦いぶりは凄まじかった。
その中でもポルトガル代表クリスティアーノ・ロナウドの勇姿は多くの人の心を打ったと思います。
20年前、母国ポルトガルで開催されたEURO2004で国際舞台に鮮烈デビュー。
黄金世代と呼ばれたフィーゴやルイ・コスタらが最後の国際舞台になるのではないかと言われた(ルイ・コスタはこの大会で代表引退)この大会では、長く特別だった彼らが特別な存在として扱われることはなく、途中交代やベンチスタートすることもある中、18歳のC・ロナウド(当時はロナウドといえばブラジルの怪物・ロナウドだったので『C』をつけないといけなかった)は伸び伸びと躍動。
決勝でギリシャに敗北すると耳や目元を真っ赤にして号泣しました。その2年後、ドイツW杯でも敗退後に号泣したロナウドにはクライベイビーというあだ名がつきました。
そこからロナウドは変貌を遂げていきます。
細身でどこか相手を小馬鹿にしたような遊び心のあるトリックスターから、遊びの要素は削ぎ落とされ、代わりに筋肉の鎧が備わっていき、ドリブラーはいつしか歴史上でもリオネル・メッシしか並ぶものはいない点取り屋になりました。
その間、マンチェスター・ユナイテッドではルーニーやテベス、レアル・マドリードではベンゼマといった相棒に恵まれたロナウドですが、ポルトガル代表では
「ロナウドさんが呼んだから、パスを出さないと!」
と周りにどこか遠慮されるような選手になっているように見える時期もありました。
不動のエースがいる代表チームが結果を出すには、エースについていけて、なおかつ存在を立ててくれる相棒というのが重要だと僕は思っています。
メッシにはディ・マリア、モドリッチにはラキティッチ、ベイルにはラムジー、そしてエンバペにはグリーズマンがいました。
ロシアW杯でフランスが優勝した2018年、決勝進出した2022年のカタールW杯。エンバペが自由に振る舞えたのは、ポジションを自在に変えながら中盤と前線を繋いだグリーズマンがいたからであり、エンバペが高い位置に残ることができたのもグリーズマンが守備で気を利かせたおかげでした。
そして先日のEURO2024準決勝のスペイン戦。
スペインの2ゴールはどちらも守備をある程度免除されているエンバペのサイドから突破を許してのゴールでした。そして、この2得点をグリーズマンはベンチから見ていました。もし相棒がピッチにいたら……そう思ってしまう幕引きでした。
〇準決勝│スペイン vs フランス 3分ハイライト/UEFA EURO 2024™ サッカー欧州選手権【WOWOW】
じゃあポルトガルのロナウドにそんな相棒と呼べる選手はずっといなかったのか。
ずっといない、ということはありません。デコもいましたし。でもメッシとディ・マリアのように長きに渡ってという意味で言うと……。
今大会が終わってみて、「ぺぺだな」と多くの方が感じだと思いますが、それはメンタル面に関して、のように思います。
例えばEURO2016を制した時のロナウドは圧倒的王様。
初戦のアイスランド戦では"1人で"11本のシュートを打ったほどでした。2節のオーストリア戦でPKを失敗するも、なおも強気のロナウドは3節でやっと今大会初ゴール含む2ゴール1アシスト。
内容的にはかなり塩っ辛いもののグループステージを3位通過。その後も強豪が軒並みトーナメントの逆側に集結するという幸運の中でなんとか決勝進出。
ただ、その決勝でロナウドは前半早々に負傷退場。大会通じて、追い込まれた時の強さは見せたものの、クラブで見せているような無双ぶりを見せることはなく、ベンチで監督以上にテクニカルエリアから指示を送るシーンが印象に残る大会となりました。
ロナウドの国際タイトルは嬉しいけど、後にメッシがW杯を取った時とはまた違う、どこか「ロナウドすげぇ!!」と手放しで言いづらいような、なんか棚ぼたで優勝できちゃった、そんな大会だと僕は思っています。だからこそもう一回タイトルを取って欲しかった。