試合中に涙を流したロナウド
その4年後、前回王者として挑んだEURO2020はベルギーに敗退。「これで国際舞台ではもう最期かな」と思っていた中で2022年、カタールW杯の舞台にも立ったロナウド。
多くの人がロナウドの終わりを予感する中、ついにロナウドに萎縮することなく活かすことができるベルナルド・シルバやブルーノ・フェルナンデスらのポルトガル史上最高の陣容が揃うチームに恵まれました。
しかしこの時、ロナウドは所属するマンチェスター・ユナイテッドで試合に全く出場できず、無所属に。代表でも途中出場するようになっていました。
準々決勝でモロッコに敗れて久しぶりに悔し涙を見せたロナウドは『クライベイビー』というよりも『伝説の最期』という感じの哀愁のある姿で、多くのサポーターがメッシの栄光の影にロナウドの終焉を予感したと思います。
しかし、ロナウドはまた国際舞台に帰ってきたんです。マジかよ!
初めて出場したEUROから20年。ロナウドが孤高の王様として優勝した時から8年です。
今や、ロナウドより年上で2006年のW杯から共に戦っているぺぺ(41歳)以外のほとんどの選手はロナウドを見て育った子ども達です。たぶんぺぺの退場も10回は見てます。
今大会に出場したフランシスコ・コンセイソンの父親はセルジオ・コンセイソン。2002年日韓W杯ではポルトガルのウイングを務め、ロナウドと入れ替わるように代表から外れたウインガーなので、父子でロナウドを挟んでいます。
迎えた決勝トーナメント一回戦。相手はスロベニア。90分では決着が着かず、延長戦に。その延長前半、ポルトガルがPKを獲得すると、PKスポットにはもちろんロナウド。右足を振り抜いくもスロベニアのキーパー・オブラクのスーパーセーブに遭いました。
驚いたのはその後です。ロナウドは泣いているように見えました。
まだ試合中にも関わらず。延長のハーフタイムに、PK戦前に、ロナウドを見て育った子ども達から励まされているのです。
驚きました。まだ決着がついていないにも関わらず、試合中にこの傷心。こんな弱いロナウドは20年以上一度も見たことがありません。
その後、PK戦の1人目のキッカーとしてゴールを決めた後にサポーターに
「ごめんね。ホッとしたよ」
とジェスチャーしたロナウドに昔のギラギラしたものは感じられず、試合には勝利したものの、全盛期を知っているからこそ、
「さすがにこれが最後かな……」
と思わされるシーンでした。
〇ベスト16│ポルトガル vs スロベニア 3分ハイライト/UEFA EURO 2024™ サッカー欧州選手権【WOWOW】
それでも今大会のポルトガルはロナウドと心中しました。それは徐々に不動でなくなっていった2004や2006の黄金世代の最期とは違いました。
ポルトガルは準々決勝でフランスに敗れましたが、今やロナウドと同等、もしかしたらそれ以上の実力を持つ世界屈指のプレーヤー達が「ロナウドのためにプレーする」という点は最後まで誰1人ブレず、後半の最後に訪れた決定機をロナウドが決めきれず試合が終わったことで、今度こそ、「これが最後かな」と感じ、僕はその姿をこの目に焼き付けました。
〇準々決勝│ポルトガル vs フランス 3分ハイライト/UEFA EURO 2024™ サッカー欧州選手権【WOWOW】
……とかいってまた2年後の2026北中米W杯にまた出てきちゃうのがロナウドなのかもしれないけど。その時、ぺぺもいたら笑っちゃうな。