ロックバンド、クリープハイプが8月16日・17日に北海道石狩市の石狩湾新港樽川埠頭横野外特設ステージで行われた「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO」の2日目にトリとして出演した。バンドとしてライジングサンに強い思いがあったというライブの模様をニュースクランチ編集部が現地で取材した。

▲クリープハイプ (C) RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:大峡典人

24回目を迎える老舗ロックフェスで初の大トリ

今年で24回目を迎えた「RISING SUN ROCK FESTIVAL」。そもそも、かねてからメディアで「ロックフェス」というものに対して、愛憎混じった思いを吐露していた尾崎世界観。

「ステージのかぶりがあるからこそ、自分のステージにどれくらいの人数が見に来ているか可視化される」「ステージから自分のライブを見ずに移動していく人がよく見える」「ロックフェスのクイックレポートは、MCをツギハギしたもので無意味ではないか(※これに関しては、この記事を書いている自分が喉元に刃物を突きつけられているようで生きた心地がしない)」

それでも、24回目を迎える老舗ロックフェスで、大好きなクリープハイプがトリを務めるという事実を、この目に焼き付けずにはいられなかった。

オールナイトである2日目の朝4時。まだ夜明け前で会場は暗い。ステージにメンバーがリハーサルにやってくる。フェスに出演するときにクリープハイプは、リハで本編では披露しない楽曲を少しだけ披露する。

▲小川 幸慈 (C) RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:大峡典人

この日は『大丈夫』と『手と手』。『手と手』は彼らが初めてライジングサンに出演したときも披露されていた楽曲。それが12年前と考えると感慨深い。『大丈夫』には「あー、辛くてたまらないなら 酒飲んで酔っ払ってそのまま朝になるまで寝てれば良いよ」という歌詞があるけど、この日は朝にクリープハイプが見られる貴重な時間なのだ。寝てなんかいられない。

一番大きなステージのトリで、ほかのステージの演奏は終わっているといっても、2日間テントを張って参加している観客にとっては、楽しさとともに疲労がピークに達する時間。お客さんの集まり具合を心配していたが、リハの音につられてか、SUN STAGEにどんどんお客さんが集まってくる。

バンドが変わることなく支持を広げてきた証

そして時間となる。「クリープハイプです、よろしく。特別な夜も終わりかけているけど、ギリギリ滑り込んで間に合ったから、とっておきの危ない、ヤバい夜遊びをしましょう」と尾崎世界観の言葉からライブがスタート。1曲目は人気の高い『キケンナアソビ』。アダルトで妖艶な雰囲気を歌詞にも曲にもまとうこの曲を、深夜から明け方にかけての野外で聞けるという贅沢を噛みしめる。

個人的な思いをここに記すと、このフェスには2001年から2006年まで6回連続で訪れていた。当時、陽が落ちてからは、海が近く、周りに建物がない立地条件もあって、8月といえど吐く息が白くなることも珍しくなかったが、地球温暖化の影響か、今年は陽が落ちてしばらくしても半袖で過ごせるほど。それでも、この時間になると少し肌寒く、長袖を着ていてちょうどいいくらいの気候になっていた。

2曲目の『火まつり』は、ベースの長谷川カオナシがメインボーカルを取る楽曲。この時間に、童謡のような趣をもつこの曲を聞くと、楽曲がより立体的に見えてくるようだ。「その冷たい火まつりに僕もまぜてよ」という歌詞に、まだ夜が明けきらないシチュエーションもあいまって背筋がゾクッとする。

▲長谷川 カオナシ (C) RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:大峡典人

続いて『身も蓋もない水槽』『社会の窓』『社会の窓と同じ構成』と、クリープハイプのなかでも特に攻撃的な3曲が並ぶ。『火まつり』もそうだが、『身も蓋もない水槽』は12年前に発表されたアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』に収録された楽曲だ。その頃から、曲も歌詞も何ひとつ古くなっていないことに驚くし、うれしい。

『身も蓋もない水槽』は曲の終盤、「バイト先のクソが」と連呼されるが、この曲を作った当時の尾崎世界観にとって、「バイト先のクソ」はまだリアリティのある歌詞だったのだろう。そこから12年、バイトという言葉がリアリティを持たなくなってもまだ、クリープハイプが鳴らすこの曲は息が詰まるほどのリアルを感じる。

それは続いて披露された『社会の窓』もそう。メジャーデビューを果たした自分たちを、上から目線で愛でるリスナーをイメージし、自分たちを俯瞰で描いたこの曲を、10年以上経って緊張感を持って聞かせられるのは、このバンドが変わることなく着実に支持を広げてきたことの証である。