主砲の不振が勝敗に直結した

2.主砲ジャッジの大不振

大谷選手と並び、打者として一番注目されていたのが、ヤンキースの主砲でありキャプテンでもあるジャッジ選手。

ワールドシリーズ前のプレーオフ9試合で打率.161。優勝決定シリーズではホームラン2本を放ったものの、シーズン58本塁打った強打者の基準では、非常に物足りない結果と言えるでしょう。

そしてワールドシリーズ中はさらに冷え込み、1~4戦目は打率.133、18打席で7三振と大ブレーキ。

特に第1戦、同点の9回2塁から前打者のフアン・ソト選手が敬遠され、一打勝ち越しの場面で、ショートフライに終わってしまった場面は特に痛かった。第5戦に本塁打と二塁打が出たものの、時すでに遅し。

前述のエラーを含め、本人とっては相当悔しいシリーズとなり、試合後のインタビューでは「この悔しさは死ぬまで忘れないだろう」と言ったのは、ジャッジ選手史上、最も悲壮感ただよう発言ではないでしょうか。

疑問の残る選手選考

3.左翼手選考の優柔不断さ

比較的地味な話かもしれませんが、プレーオフを通して、レフトを守ったのは軽打好守のアレックス・バードゥーゴ選手でしたが、実は直前まで正左翼手が決まっていなかったことをご存知でしょうか。

ギリギリまで争っていたのは、ヤンキースの超有望株ジェイソン・ドミンゲス選手。MLB公式のものを含めた、有望株ランキングでは常に球団1位、リーグ全体でも最高20位以内を飾ってきた「5ツールプレイヤー」として、とても期待が大きい逸材。

打撃面では確実にバードゥーゴ選手より上ではあったものの、レギュラーシーズン中にあまりにもレフトでの守備難を見せてしまった為(本職はセンターであり、ヤンキース・スタジアムのレフトは非常に広く難しいとされている影響もあり)、最終的には、より堅実な守備を出来るバードゥーゴ選手が抜擢された、という経緯。この判断は妥当な判断だったでしょう。

しかし、ここで不可解なのが、プレーオフで一度もドミンゲス選手が打席に立たなかったこと。接戦が多かった為、出すタイミングが難しかった点は承知の上ではあるものの、打撃で期待をあまりできないバードゥーゴ選手(シーズン打率.233、OPS .647はリーグ平均を17%下回った)や、その他選手の代打として一度も送り出されなかったのは何故でしょうか。

代打実績がなく不安、という話であれば、何故プレーオフを通して、代打の経験を積ませなかったのか。もっと言うならレギュラーシーズン中にもっと代打起用をしなかったのか。当初、昇格が見込まれていた8月(それまでは怪我でマイナー調整をしていた)から、9月中旬まで昇格がズレてしまったのか。

皮肉にもワールドシリーズの最終打席に立ったのは、プレーオフ中の打率.208、OPS .622とシーズン中を下回る成績を残したバードゥーゴ選手。三振に終わりましたが、あそこでドミンゲス選手が立っていればどうなっていたか……。

その他の大事な場面でも、不調な選手ではなく、ドミンゲス選手を代打に送っていればどうなっていたか。今となっては妄想するしかありません。

筆者はヤンキースファンですが、個人的には、せっかくの名門チーム対決、かつ大谷vsジャッジという、スーパースター対決に心躍らせていました。しかし、ヤンキース側があまりにもあっさり負けてしまったが故に、もっともっと盛り上がる余地は残されたまま終わった……と感じています。

来年には、この反省を活かし洗練されたヤンキースが、二刀流復帰を果たした大谷翔平選手率いる王者・ドジャースにリベンジをする劇的第二章が実現することを大いに期待したいです。