2019年からメキシコに移住し、2021年からYouTubeチャンネル『ルス・グアダルーペ』を開設したルスさん。現在のチャンネル登録者数は、12万人にものぼる。YouTubeを通してメキシコ暮らしのリアルをゆるく届けるルスさんに、メキシコ移住のきっかけやYouTubeを始めた理由、今後の目標など幅広く伺った。

海外旅行好きが転じてメキシコ在住に

福岡で生まれ育ち、新卒では乳児院で保育士として働いていたルスさん。移住したきっかけは何か、移住するにしてもなぜメキシコだったのかを尋ねると、「実際はなんとなくというところが大きかった」と笑いながら、成り行きを話す。

「当時の勤務形態は、長期休暇の取得が難しく、前日に休みがわかるシフト制…。大学生の頃から海外旅行が好きだったので、旅行に行けないもどかしさがありました。

仕事は好きだったけど、『ここで働いている限りは、プライベートでの夢を叶えられない』と思ったんです。休みが取りやすい保育園や幼稚園への転職も検討しましたが、調整して長期休暇を取るとしても2週間とかが限度。それなら、海外に住んだ方がお得だし良いんじゃないかと考えたんです」

アジアは「1週間ほどの休みがあれば気軽に行けるから、移住する意味はそこまでない」と候補から外し、ヨーロッパは求人がほぼなく断念。2年間の保育士経験を活かせる求人が出ていたのがメキシコだった。

▲メキシコに移住したばかりの頃の1枚

日本から1万キロ以上も離れたメキシコを拠点としてしまえば、世界遺産が数多くあるキューバやペルーへ行くのにも5時間程度。「日本からタイやベトナムに行く感覚で、そういった国々に行けるのは魅力的だった」という。そうして言語も文化もまったく違う異国の地に、身一つで飛び立った。

「もともとスペイン語は全く話せなかったのですが、現地で就いた仕事は、日本人の子どもの世話をする保育業務。なので、仕事上ではスペイン語は必要ありませんでした。ただ、メキシコ人家族と一緒に住んでいたのでそこで発生するコミュニケーションや買い物など、普段の生活で困ることに気づいて…。

夏休みとして一か月ほど有給休暇をもらえたので、それを活用して隣国のグアテマラへ語学旅行に行きました。向こうではマンツーマンレッスンが比較的安く主流なので、1日6時間みっちり勉強しました。そのおかげもあって、上達は早かったと思います」

日本人の常識が通用しないことも

移住当初は、メキシコ人シングルマザーのお母さんと娘さんが住んでいるマンションの一部を間借りして同居していた。そこで、親子が飼っていた犬の世話をめぐって、カルチャーショックな出来事が起きる。

▲間借りの部屋で撮影

「その親子はもう1つ家を持っていて、行ったり来たりの生活をしていたんです。ある日、もう一方の家で飼っている猫が病気になってしまい帰れないから、犬の面倒を見てほしいと頼まれました。私は犬が好きで快諾したところ、1ヶ月経っても帰ってこなくて…。

その犬はトイレを覚えていなくて、部屋中を汚しちゃう子でした。仕事から疲れて帰ってきてはいろいろと掃除して…、という生活が続き、さすがに嫌になりましたね。

日本人同士であれば、1ヶ月も世話を任せきりなのは失礼、限度があるという共通認識があると思うのですが、その方は、“犬が好きで快諾してくれたんだね、じゃあよろしく!”と、悪気なく言葉のまま受け取ったみたいです。“私が受け入れられるのはここまで”とはっきり言わないと、相手の都合のよく扱われてしまうという文化の違いを痛感した出来事でした」