この台本は怪文書です(笑)
――以前、第一章の「唐傘」に出演された黒沢ともよさんと悠木碧さんに取材させていただいた際に、台本が分厚いというお話をされていました。お二人は台本を読んでどのように感じましたか?
日笠:(実際に台本を見ながら)この厚さですね。
戸松:これ75分の映画の台本の厚さじゃないよね(笑)。
日笠:とにかく1シーンの中でカット数が本当に多いんですよ。例えば、「おはようございます」という一言が4カットにわたって書いてあるみたいな感じ。私たちが喋っている感覚としては、実際にセリフ数はそれほど多くないので、割と短いんですよ。というのも、この作品は絵で見せることが重要で、間がきちんと取られているので、『セリフ=お芝居』というわけではなくて、会話のテンポや思惑、思っていることの間や空間などを含めた総合的なものだなと感じました。

戸松:本当にその通りで、カット数がとても多いので、油断しているとあっという間に進んでしまうんです。おそらく他作品の劇場版の何倍ものカット数があるんじゃないかな。実際に出来上がった映像を見ても、カットがすぐに変わるので、セリフを一言言っている間に次のカットが入る感じなんです。なので、置いていかれないように、ものすごいスピードでページをめくるように進めなければいけなくて大変でした。
日笠:今、テレビアニメーションでは世界観の説明や、誰がどこで何をしているかといった説明が多くありますが、この作品では基本的に一切説明がないんですよ。もちろん完全にないわけではないのですが、基本的にはキャラクターが何でここにいるのか、どうしてそうなったのか、といったことは語られないんです。
だからこそ、私たちも資料を見ながら、知らなかったことに気づく瞬間があって、キャラクターがどうして大奥にいるのか、その背景を知っていくのがとても面白いんです。視聴者の好奇心をかき立てるような要素が多いのも、魅力なのかなと思います。
戸松:感情の細かいところまでト書きで書いてあるんですよ。作品は少し重苦しくなりがちな世界観なんですけど、このト書きが面白くて、なんだか救われる感覚になりました。

――前回、黒沢さんはこの台本を販売してほしいと話されていましたが、今回もすごく濃いものになっているんですね。
戸松:ぜひ見てほしい。私たちだけで楽しんじゃうのはもったいないよね。
――台本だけで楽しめそうです。
日笠:楽しめると思います! もう怪文書です(笑)。
戸松:逆にピッタリとワードを当て込むほうが無理だよね。
日笠:カット内に収めなきゃみたいな声優さんが陥りがちな固定観念は、ぶち壊していくスタイルです。
――最後にお二人が2025年に挑戦していきたいことを教えてください。
戸松:年々、仕事に対する欲望がどんどん増えていくのを感じます。年齢的に減るかなと思っていたんですけど、むしろ今はやりたいことがたくさんあるんですよ。これからも貪欲にいろいろなことに挑戦していきたいという気持ちは強いです。
役としても、ボタンのような挑戦を含んだ役を演じるのは自分にとって大きな経験でしたが、また役者として新しい殻を破りたいという欲望があるので、2025年はその思いを持って進んでいきたいと思います。
日笠:私もやりたいことや、やらなきゃいけないことがたくさんあるので、分身の術を習得したい(笑)。去年は「自分が二人いればいいのに」と思うことが多かったので、一人で頑張るのではなく、もう分身の術を習得する方向にシフトしていった方がいいなって。本当はタスクを減らしたり、仕事を早くこなすことができればと思うのですが、無理なので分身します(笑)。
(取材:川崎 龍也)


7月16日生まれ。神奈川県出身。趣味・特技は旅行、カフェ巡り、ドライブ、料理。『劇場版モノノ怪』で時田フキ役を務める。Instagram:@hikasayoko_official、ブログ:日笠陽子オフィシャルブログ

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