神戸のグルーヴみたいなものが培われて今がある
――曲はどういう感じで作っているんですか?
コウイチロウ:かなり出来上がったものを持っていくこともあれば、弾き語りみたいなものを持っていって、あと編曲とかアレンジはホンマにみんなで合わせながら作っていったりします。ここにこういうメロディー、もう一個欲しいねんけど、みたいな。
――歌詞はどの時点でできあがってるんですか?
コウイチロウ:歌詞はホンマ最後ですね。最初は適当に歌いながら、ここにこのフレーズ入れたら気持ちいいな、とか、ここはこの母音が気持ちいいな、とか、で入れて、最後に整える感じですね。
――歌詞を聴いていて思ったんですけど、すごく前向きだなって感じたんです。楽曲の感じとか、パッと見、そう思われなさそうですけど。
コウイチロウ:ネガティブではないですね。暗いことも仕方ないな、とは思うけど、失恋の歌でも、幸せになってね、って気持ちがあるんですよね。中島みゆきさんみたいに、恨み節を歌えたらいいんですけど、僕の性格的にちょっとちゃうし。割と、プライベートでは失望しがちなネガティブなんですけど、歌やから迷いながらでもカッコつけたことを歌えるのがいいかもなって思ってます。
――あと感じたのは、神戸って街がすごく好きなんだろうな、というか、誇りを持っているんじゃないかなってことです。
アキホ:それはあるかも。
コウイチロウ:そうですね。なんか神戸の人って、出身どこ? って言われて、兵庫と言わず、神戸って言う、みたいなのがあって。それが対外的だけじゃなくて、内側にもあるんです。神戸の人って、多分みんな神戸が好きやし、俺も中学くらいからライブハウスでコピバンしたり、高校でもオリジナル曲をやるバンドに入れてもらったりしてたんですけど、なんかそういう中で、色々な人に色々なことを教わりながら育ててもらったから、神戸のグルーヴみたいなものが培われて今があるし、人も街も好きですね。
――それが楽曲に滲み出ているような気がします。みなさんに、音楽以外で一番自分に影響を与えたものについてお聞きしたいんですけど。
アキホ:私は絵画が好きですね。自分で絵を描いたりもするし、この画家がめちゃくちゃ好き!とかはないんですけど、絵を見るのは好き。あと最近は地球が誕生してからの歴史とかみてますね。
カマノ:そうなん?
アキホ:最初、音楽の歴史を知りたくて調べたら、紀元前の話まで行っちゃって、そこで見てったらオモロ! みたいな。
カマノ:僕は飯と名探偵コナンがめっちゃ好きですね。
アキホ:(笑)飯とコナンって!
――可愛い笑
カマノ:あと、野球は高校までずっとやってたんで、好きですね、巨人ファンなんです。
――関西で巨人ファンは気合入ってますね!
アキホ:甲子園でビール飲むのが好きなんでしょ?
カマノ:好きですね、高校野球見ながらビール飲むのが好きですね。
コウイチロウ:あんまり音楽以外でパッと思いつく趣味というか、好きなもの思い浮かばないんですけど、やっぱ小説読むんは好きですね、中島らもとか、町田康とか、大槻ケンヂとか、好きで読みますね。
音楽シーンをこのバンドで変えていけたら
――お聞きしたかったのは、これから先、めちゃくちゃ売れて、お客さんのキャパが増えていった時に、蟹光船の楽曲って揺るがないかな?って少し思ったんです。割と、楽曲が一人一人にきちんと伝える系の音楽だと感じたので、これが何千キャパとかになった時に、作る曲って変わっちゃわないのかな、って。
コウイチロウ:曲は狙ってこれを作ってる、ということが今の時点でなくて、言いたいことを言いたくてやってるだけやし、もしそうなったとしても自分の根本がもっと広がっていくだけかなって思います。自分が大切にしたいこと、表現したい事が広がっていくだけで、表現したくないことは今も未来もずっと表現しないままだと思うので、そこは揺るがないですね。
アキホ:そういうところは、私が一番ワガママなんで。この曲調嫌やわ、とか、このコーラス受け付けへんわ、とか言ってしまう。
コウイチロウ:そういう意見は聞きつつ、アキホのやりたいものの範囲でいいものを表現してくれたらいいなと思うし、現段階でも自分が良いなと思うことは変えれないんで。
――それって、もっと言語化すると、白々しい、とか、あざといことやりたくない、みたいなことなんですかね。
アキホ:そうかもしれないです。
コウイチロウ:30年後、40年後に古いな、と思われちゃうような曲は作りたくないですね。例えば、この手法が今流行ってるから、とか、みんながやってるから、とかで取り入れるのは絶対にないし、それを取り入れても絶対のちのち古くなってしまうので。
――最後に、途方もないことでも良いので、今後やってみたいこと、野望などはありますか?
アキホ:印税で暮らしていきたい。
――あははははは!
アキホ:基本働きたくないっすね(笑)。
――でも例えば、他のミュージシャンから楽曲提供を頼まれたら?
アキホ:それはもう全然やりたいです。仕事したくない、って感覚です。
――ということは、音楽は仕事じゃないってことですよね。
アキホ:そういう事になりますね。やりたくないことをやりたくないですね。あとは……THE YELLOW MONKEYと対バンしてみたいですね。
コウイチロウ:ええなあ、夢やな。あの、これはなんか学生時代に、音楽に限らずなんすけど、周りのみんなが良いって言ってるものを良いっていえなくて、俺って呪われてるんや、無理なんや、って思ったんですけど、なんかこう、そういう子が今もいるとして、今のシーンとか良いとされているものを自体を、蟹光船で変えていけたら良いなと思いますね。イギリスでSEX PISTOLSがパンクを知らしめて、歴史の一部になったみたいに、「ジャンル、蟹光船」みたいに、音楽シーンの歴史の一つになれたらってのは、野望ですけど、ありますね。
――素晴らしいですね、ライブを見て思ったのは、なんか凄くかっこいい地元の先輩のバンド見たような、なんかフレッシュさがあったんですよね。
アキホ:蟹光船って小慣れ感が出えへんよな。
――それがめっちゃ良いなと思いました。
コウイチロウ:なんか、アーティスト、って立ち位置にむず痒さ、恥ずかしさを感じているんですよね。仮にこれから日本武道館に立っても、歌の上手なお猿さんみたいな気持ちが抜けへんと思う。
アキホ:(笑)歌の上手なお猿さん?
コウイチロウ:なんかアーティストのガワをかぶって見せるよりかは、人間をそのまま見せて、その上で音楽を聞いてもらうのが良いですね。
カマノ:今ファンでいてくれる人がそのままいてくれたら良いなと思いますね、そしてバンドを長く続けられたら。ライブにわざわざ来てくれて、俺にサインくださいとか話しかけてくれるのは、本当に嬉しいなと思うんです。ちょっと音楽をやって、ステージでみんなより高いところに立ってるだけで、自分は昔とそんな変わらへんな、という気持ちはずっと持っておきたいですね。