神戸を拠点に活動するバンド、蟹光船。3月21日(金)に「愛に溢れてるツアー2025 ~歌は我が命~」ツアーファイナルをmusic zoo KOBE 太陽と虎で行う。メンバーのコウイチロウ(Vo/G)、アキホ(G)、カマノ(Ba)の3人に、昨年リリースされ、先日リリックビデオが公開された「おかまの唄」が収録されたアルバム「AVANT GARDE」の話から、メンバーのパーソナルな一面、そして今後の野望について聞いた。

▲蟹光船【ニュースクランチインタビュー】

ルーツは3人ともバラバラ

――まず、昨年8月に発表された『AVANT GARDE』についてお聞きしたいんですが、『政治家』『愛に溢れてる』『おかまの唄』『いついつまでも』『海に行こう』とそれぞれ曲調がバラバラで素晴らしいなと感じたのですが、これは意図的なものですか?

コウイチロウ:そうですね、曲ができたら、レコーディングして、それがパッケージングされるという感じなので、1枚で考えた時に曲調はバラバラになってるというのと、あとメンバーのルーツがバラバラで幅広い、というのがバンドの持ち味でもあるので、それが出ているかなと思います。

――なるほど、ルーツが皆さん違うんですね。

カマノ:俺はHi-STANDARDとかELLEGARDENを聞いて、メロコアやハードコア、あとは海外のポップ・パンクとかに興味を持って音楽をはじめた感じです。

アキホ:お姉ちゃんが軽音部やったんですけど、中学の時にニルヴァーナを教えてもらって、その流れで90年代の洋楽ロックを聞いてたんです。で、高校に入って私も軽音部に入って、そのタイミングで小中高って一緒の友達が昔のロックも好きやって、洋楽聞くんやったら、こういうのも聞いてみたら?ってAC/CDとかLed Zeppelinとか教えてくれて、そこから年代の幅がバーっと広がっていって、ビートルズを聞いたり、もっと昔のデルタ・ブルースとか、ジャズを聞いたりしてたんです。

そうしてる中で、高2の時にTHE YELLOW MONKEYをはじめて聞いて、“めっちゃカッコええやん!”って思って、この人らの好きなのは何なんやろ、ってDavid Bowieとか、グラム・ロックを聞くようになりました。

コウイチロウ:僕ももちろんメロコアも通ってますし、THE YELLOW MONKEYも好きですし、ただ一番最初はTHE BLUE HEARTSからパンクロックに入って、銀杏BOYZを聞いたり、青春パンクと呼ばれるものを聞いたんですけど、そのもっと前は、サザンオールスターズがずっと好きで。子供の頃からずっと好きなのはサザンオールスターズですね。

――サザンオールスターズも幅広いジャンルの楽曲を作られてますよね、それこそ『政治家』って曲もありますし。

コウイチロウ:そうですね。

アキホ:そうなんや! 知らなかった。

コウイチロウ:その流れで、マヒナスターズとか、美空ひばりとか、自分の親世代、もっと上の世代の曲も好きになっていった感じです。

――幅広い楽曲の素となっている、メンバーそれぞれの良い意味でバラバラなルーツですけど、このメンバーが知り合ったのはどういう経緯だったんですか?

アキホ:ネットですね。

――おおお! ネットなんですね。

コウイチロウ:自分がもともとやってたバンドが解散して、でもまたバンドをやりたいなと思ったんです。でもなかなかリアルで探すとなると、好きなものや考え方がちょっとズレてたりとかすると、この先わかり合えないかもな、うまく行かないなって考えちゃって。自分のバンドを1から作りたい場合、ネットって便利なんですよね。好きな音楽が似てる人、性別や年齢を絞って、声をかけられるんで。

アキホ:でも、私は最初は男で登録した。

コウイチロウ:そうそう、アキホは男で登録してた、やっぱ変なやつがいるみたいで。

そこで20人くらいに声かけて、音を鳴らしてみて、このメンバーでやりたいな、と思ったのが蟹光船ですね。

――個人的には、今様々な音楽の形がある中で、バンドという形を選んでくれたのがとても嬉しくて。正直、パソコンでDTMである程度曲ってできちゃうじゃないですか。メンバー募集はネットを使っているけど、バンドという形態自体はネットとは真逆に近いというか。バンドやライブにロマンを感じてくれてるんじゃないかと思って。

コウイチロウ:やっぱり自分も、このバンドを組む前に少しいじってみたりとか、今でも曲を作る時に、ラフみたいなものをパソコンで作って、それをメンバーに聞かせたりするんですけど、自分一人で作ってたら、自分の引き出しでしか曲ができないんですよね。それが、メンバーが集まることで、自分でも思ってないような曲ができたりする。例えば、“このギターソロ、ここ好きに弾いてみて、あ、それええやん”みたいな。バンドにロマンを感じているかとは違うかもやけど、その瞬間が好きですね。

――多分これから色々な所で聞かれると思うんですけど、そもそも、蟹光船ってバンド名はどうして決まったんですか? 

コウイチロウ:俺、めっちゃ蟹好きなんすよ。

――あはははは!

アキホ:毎回言うこと違ったらおもろいよな。

コウイチロウ:たしかに(笑)。ミッシェルガンエレファントの由来くらい、毎回変わっていくのも面白いかも。でも蟹はホンマに好きな食べ物なんですよ、牛、豚、鳥、蟹、どれかひとつしか今後食べられないってなっても、余裕で蟹選ぶ。

アキホ:それは結構珍しいと思うで。でもそれやったら、バンド名、蟹だけでええやん。

コウイチロウ:…。

アキホ:はい、論破~!!!

――あはははは(笑)。でも実際に小林多喜二の「蟹工船」の意味もあるんですよね。

コウイチロウ:そうですね、バンド名を決める時にちょうど読んでたんですよ。別にプロレタリア思想があるとか、共産主義で読んでるとかじゃなくて、文章の美しさが好きで。「THE なんちゃら」みたいな名前の英語の名前でロックバンドってありがちやけど、漢字の名前でロックバンドって面白いかなと思って決めました。あと、神戸は港町やし。

アキホ:検索した時に引っかかりやすいように蟹工船の「工」を「光」にして。そういえば、高校生のお客さんが「蟹工船」がテストに出てきました! って伝えてくれましたね。