口寄せで巫女さんに親父が憑依

そして、ロケの終盤に予想もしてなかった展開があった。
オレの生まれ、山形県の「月山」という霊峰には、巫女さんの体に霊を憑依させて故人と話せる「口寄せ」という文化があるらしく、そこで親父を憑依させて直接話せるというのだ。

オレは正直、
胡散臭すぎるだろ!  どういう展開だよ!
と心の中でツッコミを連打した。

ただ、かっちゃんは、
「いいじゃない! 弟と喋りたいわ!」
とまさかのノリノリだった。

このロケで、とりあえずかっちゃんはアクティブでノリが良いことがわかった。

かっちゃんが乗り気なら……とオレも覚悟を決め、スタッフに連れられて畳の部屋に案内された。部屋の中央の座布団に、50代くらいの綺麗な女性が座っていた。

口寄せをする前に巫女さんと少し雑談をすると、普段はメディア出演も断っていて、口寄せを商売にしている訳でもなく、本当に困っている人や、縁があった人だけを引き受けているらしい。

ほう。なかなか信頼できるじゃないか。

隣に座っているかっちゃんを見ると、あまりにも目をキラキラさせているので雑談もそこそこに口寄せをお願いした。

巫女さんがブツブツ何かを唱えると、それに呼応するかのように徐々に体が揺れ始める。

しばらくすると、ガクッと肩が下がった。

「どこだー? ここ 誰か オレを呼んだのかぁ」

さっきまで雑談していた巫女さんの喋り口調じゃない。
多分親父だ。

 きょろきょろと辺りを見渡し、オレとかっちゃんを見つける。

「おぉー かっちゃん ナオトじゃねぇか お前らがオレを呼んだのかぁ?」

突然話しかけられてどう返したらいいか全くわからずに、

「あぁ、どうも」と
人見知りをしてしまった。

「久しぶりじゃない! 元気?」
かっちゃんは慣れた様子で返事をしていた。

なんで慣れてんだよ。
人見知れよ。

オレとかっちゃんのそれぞれの対応を気にも止めず親父は頭を下げた。

「ごめんなぁ 二人には本当に迷惑かけた 本当に申し訳ない」

生前親父が弱気なところや謝っているのを見たことがない。
4年ぶりに会ったと思ったら、とにかく謝罪をするマシーンになった親父。

「いやいや、どうしたのよ?」
「そんな謝らないで、どうしたの?」

とりあえず事情を聞いてみることにした。

「実はなぁ 死んでからすぐ お地蔵さんに
お前はなんて人に迷惑をかけて生きてきたんだ! 
反省しろ! ってお地蔵さんに目から火が吹くくらいキレられたんだよ 
だから今反省中なんだ」

なんだそれ。聞いたことない。
死んでからすぐ説教されるって親父すぎるだろ。
しかも4年も反省させられてるのかよ。

思わぬ返答に、オレとかっちゃんは大爆笑してしまった。

それでも親父の謝罪は止まらない。
「申し訳ない 本当に 参ったよ」

最初は笑っていたけど途中から、あまりにも不憫なので、

「いやいやそんな謝ることないよ」
「そこまで迷惑かけられたと思ってないから」

とフォローをしてあげた。

なんで故人を励ましてんだ?
今生きてるオレたちを励ましてくれよと思ったが、
そう思う頃には親父はご機嫌になっていた。

「まぁでもオレカッコ良かったもんな! 
じゃあ墓参りくる時はタバコとビール頼む!
あ、タバコはちゃんと火をつけてな!」

と親父の決め台詞と大量の注文をして親父は去っていった。

なんだよ。めちゃくちゃ親父じゃないか
相変わらずおもしれぇやつ。

本音を喋るなんて瞬間はあったのか、なかったのかよくわかんないけど、
親父という存在が「楽しい」や「面白い」の象徴なんだと、
自分の本音が腑に落ちた。

そのあと、オレは親父の墓参りをして、注文通りタバコとビールを供えた。

番組の締めのコメントをそこで撮ったのだが、そこでまさかのオレよりかっちゃんの方が良いコメント言って番組が終了して帰りの新幹線で反省した。

親父はあの世で、オレはこの世で反省をしている、似たもの同士だ。

次回、反省第8回「小学5年生、心霊系じゃない、ちょっと怖い話」は、9月20日(土)更新予定です。お楽しみに!!