西野愛望のまま終わりたかった・・・。

――さっき、5人になって以降はやることがどんどん難しくなって、分からなくなっていったっておっしゃってましたが、それは卒業とは関係あるんでしょうか?

西野:う〜ん・・・・・(長い沈黙)。全然それが理由の全部とかではないんですけど、笑顔封印は辛かったですね。5人になってからさらに深い世界の表現になっていて、パフォーマンス中の笑顔が禁止になったんですよ。でも私は笑顔が武器で、それを見てくれてみんなが楽しくなってくれるのが最大のモチベーションだから。

ただシチュがそういう表現をやるっていうのはすごく分かるんです。実際私以外のメンバーは笑顔じゃない表情も種類をすごく持ってて上手いんですよ。でも私は本当に1個か2個しかない。それを頑張って克服すればいいのか? 実際2週間くらい自分も笑顔を封印してみたんですけど、やっぱり自分のオタクの人たちは全然楽しそうじゃなくて・・・。自分は本当にオタクの人たちを楽しませたくてアイドルをやってるから、そこは本当辛くて。ず〜っと今に至るまでの悩みですね。

――でもそれだけが理由というわけではない?

西野:そうです。あと去年の8月に1回自分が超ダメになっちゃって。それはグループがではなく、本当に私の中での話なんですけど。その時にヨロコビからもらったアドバイスが“自分のことしか考えなくていいんじゃない”って言われて。確かにそのときの私の状態を考えると適切なアドバイスだった気もするんですけど・・・。私はやっぱり、オタクのためだったり、メンバーのためだったりって思えないと頑張れない人間なんですよ。

自分がスポットライトを浴びて、みんなが私に注目してくれるから嬉しいんじゃなくて、私を好きになってくれた人が楽しんでくれてるのが好きなんです。私のオタクって、みんなバカで、変人で、でも本当にいい人たちしかいない。そのみんなを喜ばせたいだけでやってるから、“自分のことしか・・・”っていうのは、ヨロコビが私のために言ってくれたことなんだけど、そうしないと続けられないなら、それは私の考えてるアイドルじゃないなって。それはさっき言った笑顔のこともそうだし・・・。

そういう気持ちを抱えて悶々としてたときに、去年の秋くらいにあるキッカケがあって頭の中でバチン!って音がした感じがあって、“あ、私今もう西野愛望じゃないや・・・”って。アイドルの西野愛望じゃなくなってしまった。西野愛望じゃない状態でアイドルは続けられない・・・。その時にすぐ辞めますって言って。今日限りで辞めたいって言いました。私は自分のアイドルのやり方を変えたくなかったというか・・・。西野愛望のまま終わりたかった。

今になって考えると、周りに対して思うこともあるけど、グループや事務所に対するより、自分がこだわりを捨てきれなかったんだな〜って思います。自分の今までの選択もアイドルをやってきたやり方も、間違ってなかったって。そう信じて言い切れるまま終わりたかった。

――しかし流石にそこですぐ卒業ということにはならなかった、と。

西野:とりあえず1回休んでみようって話になって、2週間休んだんですよね。でも2週間1歩も家から出なくて、ぜんぜんプラスの気持ちにはなれない。とりあえず年末までってことで復帰して、年末に完全に決意した感じでしたね。

私はすぐ脱退って形で辞めたかったんですよ。時間をかけて卒業って形をとるより、一瞬の痛みで終わった方がオタクの人たちも楽なんじゃないかと思ったから。でもそこは事務所の方達が、ここまで頑張ったんだから卒業という形を取った方がいいって、考えてくださって。8月4日に卒業するというのが決まって。そしたら本当にその直後に、ドイツのフェスの話が来たんです。

――8月に開催されるドイツの野外フェス『TAUBERTAL FESTIVAL2025』出演と世界デビューをかけての“エマージェンザ・ジャパン2025”というコンテスト企画でした。しかし日本決勝は7月12日でしたが、世界決勝は8月7日からで、西野さん卒業後という!

西野:それはもう、その順番で決まっちゃったからしょうがないんですよね。スタッフさんから“愛望、協力してくれないか?”って聞かれて、その場では何も言えず。私は残るメンバーもみんなすごいから、十分戦えると思ったんですよね。でもその後に事務所の社長さんから、真剣に頼みたいって言われて、じゃあ私が最後にシチュのためにできるのは、ドイツへの切符をあげることだって、協力することを決めて、“頑張ります”って宣言しました。

その段階でもう自分の卒業の発表はしていて、勝っても私はドイツに行けないから、私のオタクは半分くらいしか協力してくれないって覚悟してたんですよ。それが普通ですよね。それで3月の予選のライブに出たら・・・。いやもう意味がわからない! 私のオタクがほとんど全員くらいがっつり居て!! いや私、自分のオタクを舐めてたわと! その後の特典会で、何で協力してくれるの? って聞いたら、“だって愛望が頑張るって言ったじゃん”って・・・! どんだけ単純なんだよ!! 小学生かよ!! 本当に私はこの人たちに推されて幸せだって!!! 心から思えて!

そこからもう、めちゃくちゃ気合い入って、絶対こいつらドイツ連れて行ってやろうって! 予選も準決勝もぶっちぎりでトップだったんですよ。それはきっと、オタクの人たちも一昨年のTIFの悔しさを覚えているから、めちゃくちゃ頑張ってくれたんだと思います。

――それが国内決勝ではまさかの、観客投票では圧倒的な差でトップだったのに審査員票でひっくり返されるという理不尽な結果で・・・。

西野:決勝のライブはね、本当に自分たちでも最高だったって思えるほどめちゃくちゃ良くて! もちろん結果にもどかしさはあったけど、何も恥じることはない! やり切った!! 結果発表の後に、みんなで泣いてたら杏優が後ろから急に抱きついてきて、「愛望ちゃん、ありがとう」って・・・。そこで私“あ、卒業するんだ”って初めて実感しました。

そして“この子たちはこの後また絶対ドイツ行くからな!”って大使館の人たちの方をずっと睨んでました。もちろん本当に悔しかったんだけど、この“エマージェンザ・ジャパン”への挑戦があったことで、卒業までの期間をただの思い出作りじゃないものにできたし、なかったら自分が8月4日まで持たなかったかもしれないって思います。

ドイツは行けなかったし、私も辞めちゃうし、シチュは今辛い時期だと思うけど、本当に凄い子達だと思うので、8月4日は私の卒業ライブでもあるけど、みんなに上を向いてもらう機会になったらって思いますね。

――西野さんのその“自分より人のため”って姿勢はどこから来てるんでしょうね? 親御さんの教育とか?

西野:いや〜、学生の頃とかもっと野生児で、喧嘩とか多くて荒れてた感じですよ。アイドルになって、メガメガミになって、それからいい人たちに恵まれて、気持ちがどんどん変わって行って、周りの人を笑顔にしたいって気持ちになって行ったので、アイドルって場所のおかげだと思います。アイドル人生、9分の8は辛いことばっかだったけど、9分の1の楽しいで、楽しかったって言い切れますね!!

――謎に分母が9なのが流石ですね。1つ思ったのが、西野ちゃんっていうとニュースの影響でオバカなイメージが強いと思うんですけど、このインタビューを読んだら、めちゃめちゃしっかりしてて、頭がいいって印象に変わるんじゃないかと。

西野:いやいや全然! バカですから!! むしろ人間にとって大切なものは何なのか? 今の世の中頭のいい人たちが動かしてるはずなのに、どんどん悪い世の中になっていくのは何故なのか!?

――何ですか急に? でかい話!?

西野:いっそ! 私が王様になればいい〜っ!!!!!

――じゃあそれで締めますね! いや〜西野愛望過ぎるわ(笑)。

 

プロフィール
西野愛望(にしの・あいみ)
1998年6月18日生まれ。東京都出身。O型。153㎝。2018年3月よりメガメガミとして、2020年12月よりSITUASIONの一員として活躍。TIF出演、単独ドイツツアーも果たした。8月4日のZepp Shinjukuワンマンライブを持ってSITUASIONを卒業。