「変身」という2文字を言える役者
――舞台でのお芝居がきっかけだったんですね。これまで、様々な役に挑戦されて、色々な方々とコミュニケーションを取ってこられたと思いますが、一番印象に残っている言葉はありますか?
日野:色々あるのですが、一番は『仮面ライダーガヴ』の杉原輝昭監督ですね。杉原さんに言われたのは「自分が自分を信じないと、誰もついてこないよ」という言葉で、ハッとしました。それまでの自分は、謙虚でいるのが何よりも正解で、もちろん謙虚でいるのは今でも大事だと思っているんですけど、さっきお話したように、根っこの自己肯定感が高いほうじゃないので、謙虚でいるすぎるがあまり、自分に自信を失っていたんです。そんな中で、“いやいや僕なんて”っていうスタンスでいる自分が楽だったのもあります。
“自分はそのうちもっと売れて、もっとすごい役者になるんだ!”と公言するのって、周りからどう思われるんだろう、という気持ちがあったんですが、杉原さんに「自分がそうなれるって思ってないと、絶対に目標にはたどり着かない。俺は、お前が売れるところが見たい」と言ってくださったんです。自分をこんなにも見つめて、評価してくれる人がいるんだ、という嬉しさも込みで、そこからポジティブな思考に変わりました。
――たしかに、自分でハードルを上げるのは勇気がいりますから、楽な方に逃げがちですが、日野さんはそうしなかったんですね。
日野:本当であれば、頑張ってると言葉に残さず、みんなが見てないところで頑張って、きちんと結果を残すのがスマートだと思うんですけど、ひとつ言葉に残して、頑張っているのがバレるくらい頑張るのも必要なんだなと思いました。これは、人前で頑張るという意味ではなく、頑張るのは当たり前の話で、人より頑張ってやっと普通、周りから“日野は頑張り過ぎだから休みなよ”と言われてやっと頑張ってるという感覚なので、自分には厳しくやっているつもりではあります。
――今、仮面ライダーのお話も出ましたが、日野さんにとって仮面ライダーはどういう存在ですか?
日野:やはりずっと憧れではありました。自分の中では子供の頃見ていたヒーローとして、の憧れだけではなく、役者として携わりたいコンテンツのひとつとして、もです。実際に選ばれて、1年間撮影させていただいて、俳優としても、人としても成長させていただきました。
基本は、お子さんが見るもの、なんですけど、最近は大人の方が見てもキャラクター、ストーリーともに、“子供番組って決めつけてもらったら困るよ”と言いたいくらい重厚な作品なので、幅広い世代の方に評価してもらえるのが本当に嬉しいです。
監督から言われて、印象に残っているのは、「変身」って多分、これからの俳優生活でも、仮面ライダー以外で言わないだろう、というのと、「変身」という2文字を言える役者は、1年間に何人しかいないんだ、ってことで、この「変身」のたった2文字にどれだけの重みが詰まっているか、という言葉です。改めてその重みを感じています。
見どころは爆破です!
――1st写真集『hiSTORY 1』、こちらも日野さんの魅力が存分に詰まった1冊だと思うのですが、どんな作品にしたいと思って撮影に望まれましたか?
日野:やはり俳優、日野友輔としてのいろいろな面を知っていただきたいな、と思った時に、作品テイストにしてお芝居をしている瞬間を写真におさめてもらえたら、ビジュアルを楽しんでもらうだけではなく、ひとつの作品として楽しんでもらえるんじゃないかと考えました。
そこでまず、設定やストーリーを自分で考えて、現場でもカットをこだわって撮らせてもらって、かなり作り込んだ作品ができたんじゃないかと思っています。ここまでセルフプロデュースでやらせてもらう作品ははじめてなので、色々模索しながらではあったんですが、僕自身もこれまで色々舞台だったり、それこそ仮面ライダーをやらせていただいて、お芝居の幅が広がったと思っているので、そこがぎっしり詰まっていると思います。
――『hiSTORY 1』では、様々な役を演じる日野さんが見られますが、設定などはどれくらい考えたんですか?
日野:ひとつの設定につき、B5の紙3、4枚くらいに流れをガーッと書いて、そこにあるいくつかの設定を、スタッフさんとじゃあここはこの流れで行きましょう、これはここを修正しましょう、というのを重ねて作り上げていきました。
実は仮面ライダーをやっている1年間、自分で「辛木田※ノート」というノートをつけていたんです。現場で言われたことや、感じたことをきちんと自分の中で消化できるように、そしてあとから見返せるように書いていたんですけど、ストーリーを考える時に、自分で思っている以上にそのノートに書いてきたこと、考えてきたことの積み重ねが生きているんじゃないかと思いました。
※日野さんが演じた辛木田 絆斗(からきだ はんと) / 仮面ライダーヴァレン
――すごいですね! 制作日誌じゃないですけど、公開して欲しい。
日野:ただ、手書きのものはパソコンに丁寧に打ち込む、とかじゃなくて、本当なぐり書きに近いものなんです(笑)。スタッフさんがパソコンに丁寧に打ち直したものを打ち合わせでは使用しました。
――そこまで想いが詰まっていると、お気に入りのカットは難しいと思うのですが、1枚選ぶとしたら…。
日野:やはり、刑事に扮した僕の爆破ですかね(笑)。
――(笑)これはぜひ、買って見てほしいですね。
日野:この刑事編にかぎらず、カメラマンさん含め、スタッフのみなさんと意思疎通はできていて、ロケーションなどもばっちりだったんですけど、セリフはもちろんなくて、役としてのイメージは僕の頭の中にしかない。さらに自分で芝居の流れの中を撮ってほしいと言った手前、きちんとお芝居をしないといけないわけです。この人物像が浮かび上がってくるように意識してやっていました。自分の中でも挑戦的な部分もありました。
――当たり前の感想になってしまって申し訳ないのですが、シチュエーションごとに別人のように表情が違う日野さんがいて、すごいなと感じました。先程、ストーリーもしっかりご自身で考えているとおっしゃっていたので、まさに役に入り込んでいたんだなと。
日野:演じた人物は、しっかり設定を考えました。刑事だったら、何歳で、普段はどういう性格で、今はこういう事件を追いかけていて、という感じで。自分の中で整合性が取れていないと、いいものにならないだろうな、と思っていたので、こだわったポイントです。
――この写真集に込めたメッセージはありますか?
日野:逆にメッセージしかない作品だなと自分では感じるんですけど、セリフがないからこそ、読者の方々が自由に想像できる余白もふんだんにあるので、例えば“自分はこの刑事はこんな人だと思う”とか、思い思いに想像して考えてくれたら嬉しいなと思います。


Newsクランチ!編集部