ドラマ『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』(ABCテレビ)が、11月21日(月)で最終回を迎える。松岡広大が演じる、こじらせ同人作家の猫屋敷守と、中尾暢樹が演じるキラキラアイドルの風間一星による、ピュアな恋の模様が視聴者を惹きつけている。

この『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』の原作漫画を描いているのが、漫画家ミナモトカズキ。これまで『セクシィ☆フライト』『メルヘン課長とノンケ後輩くん』などの作品を発表、『少女漫画家のミナモトさんがカミングアウトします。』では、自身のセクシャリティについてもカミングアウトしている。

今回、ニュースクランチ編集部では、いよいよ最終回をむかえるドラマ『壁こじ』にあわせて、同作についての話やドラマ化に対しての想い、漫画家を志したきっかけや、今後の野望などを聞いた。

▲ミナモトカズキ先生

大好きな2つを合わせた『壁こじ』

――これまでのミナモト先生の作品の中でも、この『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』は、ご自身にも近い題材の作品だと感じたのですが、この作品を描くことになったきっかけをお聞かせいただけますか?

ミナモト たしかに、猫屋敷くんは漫画を描いていくという夢を追っているので近いですね。きっかけで言うと、前作は恋愛を一番のメインに描いていたので、次の連載では夢をテーマに描きたいな、という気持ちがあったんです。そして、夢をテーマにするのであれば、自分が思い入れのある主人公にしたくて、漫画家か、アイドルのどちらかかなって思ってたんです。

ただ、それぞれ企画を持ち込んだんですけど、そんなに感触が良くなくて(笑)。どうしようかな~って思ってたら、担当編集さんから「そんなに大好きな2つなら、いっそのことくっつけちゃえば?」と言われて……。

――なるほど! 猫屋敷くんは漫画家、一星くんはアイドル…!

ミナモト そうなんです。全く別の世界の2人だけど、確かに夢を目指すということには変わりないな、と気づいて今の形ができました。

――現在、ドラマが放送中で、11月21日でいよいよ最終回を迎えます。ご自身の作品が映像化されるというのは、漫画家の中でも選ばれた方しか味わえない恍惚だと思うんですが……。

ミナモト 恍惚(笑)。確かにそうですね!

――ミナモト先生のTwitterを拝見すると、いちファンのように喜んでいるのが、すごく微笑ましくていいなって思ったんです。普通、もう少し距離を取ったり、内心は喜んでるけど、表に出さないみたいなスタンスも取れるじゃないですか。ミナモト先生はファン代表みたいに盛り上がっているから、とてもいいなと感じました。

ミナモト それを良いと言っていただけると、とても救われます。正直、ドラマ化が決まっていろいろと動きだしたときに、原作者はどういうスタンスでいたらいいのか、すごく悩んでいて。じつは、もっとカッコつける気だったんです(笑)。

――(笑)。

ミナモト やっぱり、出しゃばり過ぎてもよくないかなと思って。だから、最初の頃の自分の告知を今見ると、「はじまります。」ってキリッとした感じなんですよね。

――なるほど、ちょっとかしこまった感じの。

ミナモト そうなんです。ただ、大きく考えを変えようと思ったきっかけがあって、撮影現場にお邪魔させていただいたことがあったんですけど、そのとき本当に、モニター越しに何シーンか見させていただいただけで、絶対にこのドラマ面白いって確信したんです。

そして、こんなにもキャストの方々、制作陣の方々が愛情を持って作ってくださってるのに、原作者がカッコつけてる場合じゃないなと思ったんです。仮に“こいつウザいな”と思われたとしても、とことんはしゃぎ倒そう、それが少しでもドラマに関わっている方へのお礼になったならいいなって。

――素晴らしい心がけですね。実際にミナモト先生、ドラマにも出られてますもんね。

ミナモト アハハハハ! いや、あれはさすがにはしゃぎ過ぎですよねえ。

 

――(笑)。いやいや、すごく良かったですよ!

ミナモト ありがとうございます(笑)。とにかく、いろいろなシーンに愛情を感じる、本当にいいドラマなので、いちファンみたいな気持ちで最終回まで見届けたいなと思ってますね。

猫屋敷くんには一星くんがいてほしい

――ミナモト先生の他の著作、先生ご自身が出てくるコミックエッセイなども拝見させていただいて感じたことなんですが、『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』の猫屋敷くんがミナモト先生で、一星くんは先生が嫉妬混じりに……でも、なりたい人物像なんじゃないかと思ったんです。

ミナモト なるほど、面白い見方ですね。

――嫉妬をいい意味で隠されないというか、本当は嫉妬って恥部でもあるから、隠したがるものだと思うんです。例えばコミックエッセイでも、同じ現場でアシスタントしていた人が先にデビューしたらすごく嫉妬した、と素直に書かれていていいなと思って。

ミナモト (笑)、ありがとうございます。

――だから猫屋敷くんも、一星くんも、ミナモト先生の中にあるものなんじゃないかなって。

ミナモト 確かに、猫屋敷くんは過去作と比べても信じられないくらい自分がだだ漏れているキャラクターなんですけど、おっしゃっていただいたように一星くんは、自分とは離れているキャラクターなんですが、嫉妬するかというと、もうそんなことは超越するくらいの人なんですよ。自分が嫉妬したり比べてしまう人って、自分と境遇や考え方が近い人で、成功されている人なんです。

――なるほど、確かに自分が嫉妬する人ってそうですね。

ミナモト はい。考え方がわりと近くて、自分よりも成功されてしまっていると、何が間違ってるのかなってすごい考えちゃうんですよ。でも、一星くんぐらい自分とかけ離れてると、嫉妬もしないので逆に一番近くにいてほしいなって思うタイプなんですよね。もはや妬む対象でもない、という。だから、自分をすごく投影させている猫屋敷くんに、唯一寄り添ってくれるタイプの人間だったら、この一星くんみたいなタイプになるのかなっていう気持ちで描きました。

――そういう想いが投影されているんですね。

ミナモト そうですね。あと自分の今の現実でのパートナーが、まさにこう自分にあるような嫉妬とか、そういうのが本当にないタイプなんです。こっちがなんかイライラしてても、相手が達観しちゃってると、スッと消えていっちゃうんですよ、怒ってる自分が馬鹿みたいに感じてきて(笑)。だから、きっと猫屋敷くんを導いてくれるのは、こういう子なのかなっていう。やっぱり、自分と真逆ぐらいの考えが飛び込んでくる環境って、すごく大事だなと思うので。